編集部が行く!パラスポーツ観戦記 _vol.5 車いすラグビー
- 共同執筆
- ココカラー編集部
10月16日(火)〜20日(日)に開催された「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」の様子をお届けします。同時期に開催された「ラグビーワールドカップ2019」と同様、会場にはたくさんのファンをはじめ、東京都内の小、中学校の生徒が詰めかけ、力強い歓声が響いていました。パラスポーツ観戦初心者となる執筆者が本大会の模様や本競技の魅力など、情報満載でお届けします!
⬛世界のトップチームが集結
10月16日(火)〜20日(日)、東京体育館で開催された「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」は世界ランキング上位の8カ国(オーストラリア、日本、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ニュージーランド、ブラジル)が集まり、熱戦が繰り広げられました。現在、日本チームは世界ランキング2位!東京2020パラリンピックでは、金メダル候補として期待されています。
開会セレモニーでは、2020年の東京五輪・パラリンピック開閉会式の総合統括を務める狂言師の野村萬斎さんが開幕戦を前に国歌を独唱。会場のボルテージがぐっと上がりました。
車いすラグビーは、1996年、アトランタパラリンピックでデモンストレーション競技として初登場し、2000年のシドニーパラリンピックから公式種目となりました。アメリカやヨーロッパの一部の国では、四肢(両手と両足)に障害を持つ者が行う競技であることからクワドラグビーとも呼ばれています。また、車いす同士がぶつかり合う激しい競技のため「マーダーボール」とも呼ばれた歴史があるそうです。
⬛接触プレイが許される車いすラグビー!
車いすラグビーは、ラグビー、バスケットボール、バレーボール、アイスホッケーなどの要素がミックスされた競技です。コートはバスケットボールと同じ広さで、4対4の男女混合で行われます。バスケットボールと同じようにティップオフから試合が始まり、試合時間は8分のピリオドを4回行い、合計32分間で1試合となります。使用されるボールは、健常者ラグビーの楕円形のボールと違い、バレーボールの5号球を元に作られた丸いボールです。前方へのパスも認められているため、ボールを持った選手がトライライン(トライラインとトライポストの間のライン)を通過したら1点となります。
トライ後はスローインから試合が再開。攻撃側はスローイン後、12秒以内でセンターライン通過、40秒以内でトライをしなければいけません。ボールを持った選手は10秒以内にドリブル又はパスをしなければいけないというルールもあります。車いす競技で唯一、車いすの車いすをぶつけるタックルができます。スピードスポーツでありながら、格闘技の要素が強い競技なのです。
⬛車いすラグビーのここが面白い!
選手それぞれに持ち点が存在するのです! 選手は障害の程度により、0.5〜3.5点の持ち点が設定されています。試合では4人の合計が8.0以下になるようにチーム構成するのがルールです。女性選手は一人、また45歳以上の選手にも合計点に0.5点が追加されます。このポイント制度により、障がいの軽い選手だけでなく、重い選手にも出場の機会が生まれているのです。
車いすは、攻撃型と守備型の2種類に分かれています。攻撃型は、細かいターンや動きができるようにコンパクトに作られています。守備型は、相手の動きを止めるために突き出したバンパーが特徴です。攻め、守り、それぞれの選手の動きの違いにも注目です!
⬛初戦は日本対ブラジル戦!
私たち取材陣は客席の前、コート寄りの場所でスタンバイ。試合がスタートすると、選手たちのスピードに驚かされました。そして、その直後、車いすどうしがぶつかり激しい攻防が繰り広げられ“ドンっ!”とお腹に響くような衝撃音が鳴り響きました。競技用の車いすは軽量設計されているそうですが、金属製の車いすがぶつかり合うのです。その衝撃度は瞬間で最高30Gだそうです。自動車の急ブレーキがおよそ0.5Gなので、その迫力、想像してみてください!
⬛1st halfでハーフタイムショー!
日本が33点、ブラジルが22点と、日本が一歩リードしたところで第2ピリオドが終了。ハーフタイムでは、野村萬斎さんが演出したハーフタイムショーがスタート。幼児向けのテレビ番組で人気を博した「ややこしや」を披露しました。野村さんは、選手が乗る車いすが攻撃型と守備型に分かれていることに触れ、「攻めもござれば、守りもござる、ややこしや〜、ややこしや〜」と振り付けも交えて、会場を盛り上げていました。現役の車いすラグビー選手と子どもが一緒になって楽しめる演出がとても素敵でした。
⬛後半も、手に汗握る戦いに!
後半も両者ともに粘り強い戦いを続け、点の取り合いが続きました。日本代表入りで注目の高校生プレーヤー、橋本勝也選手の縦横無尽に疾走する姿には声援を送らずにいられませんでした。ベテランの島川慎一選手、ポイントゲッターの池崎大輔選手などのスーパープレーを間近で観戦していると、障がい者競技とは思えない迫力を感じます。第4ピリオド終了時は、日本が61点、ブラジルが42点で日本の勝利が決まりました。
20日の決勝では、世界ランキング3位のアメリカが、世界1位のオーストラリアに59対51で勝って優勝。日本代表は、3位決定戦で世界ランキング4位のイギリスに54対49で勝って3位となりました!
⬛取材を通して
強豪チームが集結した大会とあってハイレベルな戦いが繰り広げられていました。健常者ラグビーとは異なるルールに、頭脳戦略を感じさせるプレーヤーの動き、ハードな衝突音と、興奮しながら観戦することができました。
第二試合目のオーストラリア対ニュージーランド戦では、オーストラリアチームの女性ラガーの活躍を見る機会にも恵まれました。筋骨隆々な男性に混じり活躍する姿を目の当たりにして、胸が熱くなります。
試合後のキャプテン・池透暢選手のインタビューでは「会場を盛り上げてくれた子どもたちの応援が、自分たちの力になった。みなさんの思いとともに2020年以降のレガシーにしたい」というメッセージがありました。2020年の東京2020パラリンピック競技大会にもさらに多くの児童、生徒にライブ観戦して欲しいと思いました!来年の日本代表の活躍に、さらに期待したいと思います!頑張れ、JAPAN!!
取材・執筆 木村真悠子
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