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Dec.

2021

column
5 Jan. 2021

社会が変われば、スポーツも変わる

杉浦愛実
ライター
杉浦愛実

歴史を振り返ってみると、スポーツは時代の変化の影響を受けながら多様化してきました。

たとえば、パラリンピックは戦争がきっかけで誕生したと言われています。第二次世界大戦で負傷した兵士たちのリハビリとして、1948年にイギリスのストーク・マンデビル病院で開催された競技大会が、パラリンピックの起源とされています。当初は脊髄に損傷のある選手のみが参加していたのが、徐々に多様な障害を持つ選手が参加する競技会へと発展していき、現在のようなパラリンピックの形になったそうです。

 

他にも、自動車の誕生によってモータースポーツが生まれたり、IT技術の発展に伴ってeスポーツが生まれたりと、時代が変われば新しいスポーツも誕生しています。

突然のパンデミックによってスポーツのあり方そのものを再考させられる契機となった2020年、世界ゆるスポーツ協会は、「ARゆるスポーツ」と「ソーシャルディスタンスゆるスポーツ」という新しいスタイルのゆるスポーツを開発しました。

世界ゆるスポーツ協会とは、「スポーツ弱者を、世界からなくす。」をコンセプトに掲げ、年齢や性別、障害の有無、運動神経等にかかわらず、誰もが楽しめる多様なスポーツを80競技以上開発してきた団体です。
ここでいう「スポーツ弱者」とは、スポーツが苦手な人や嫌いな人だけでなく、障害のある人や、子どもやお年寄り、仲間や場所といった環境の問題でスポーツをすることが困難な人など、スポーツをしたいけどできないという人も含め、スポーツの世界において何らかの疎外感を感じている人のこと。スポーツ庁によると、2019年度の成人のスポーツ実施率(週1日以上スポーツを実施している人の割合)は53.6%ですので、国民の半数はスポーツ弱者!?ということになります。

本記事では、これらの新しいスポーツについて紹介しつつ、多様化し続けるスポーツのあり方について考えてみたいと思います。

家にいながらスポーツができる!「ARゆるスポーツ」


ARゆるスポーツは、その名の通りAR(Augmented Reality / 拡張現実)を使ったスポーツです。PCのWebカメラの映像にフィルターをかけることができる「Snap Camera」というアプリ上に、ARゆるスポーツ用のフィルターを作成。ZOOMなどのビデオ会議ツールとSnap Cameraを連携させることで、家にいながら離れた場所の人と対戦することができます。

筆者も、世界ゆるスポーツ協会が主催するARゆるスポーツのイベントにオンライン上で参加してみました。
この日行われたのは、「おうち借り物競争」「ほぼヨガ」「ドライアイ走」「まゆげリフティング」「フェイスビルディング」「チューチューバルーン」の6種目。ユニークすぎるこれらの種目名を聞いて、「一体どんなスポーツ!?」とドキドキしながら私はパソコンの前に座りました。

「ドライアイ走」は、10秒間目を開き続け、10秒たったと思ったタイミングで思いっきり目をつぶります。ストップウォッチのカウントが見えない中で、10秒ジャストに一番近かった人が勝利です。

ドライアイ走の競技の様子(提供:世界ゆるスポーツ協会)


「まゆげリフティング」は、制限時間内にまゆげを上下した回数を競うというシンプルなルール。普段の生活では高速でまゆげを動かすことがないため、意外と疲れます。

まゆげリフティングの競技の様子(提供:世界ゆるスポーツ協会)


ボディビルディングならぬ「フェイスビルディング」は、制限時間内により多く表情筋を動かした人が勝利となります。

フェイスビルディングの競技の様子(提供:世界ゆるスポーツ協会)


ほとんどの種目がPCの前に座ったままで参加できますが、普段使用しない表情筋を総合的に動かせるよう専門家監修の元で開発されているため、終わった後は顔全体に適度な疲労感がありました。

参加前は「そもそもスポーツとして成立するのだろうか」という疑問も抱いていましたが、プレー後の達成感や楽しかった感覚は、今まで私が親しんでいたスポーツから得ていたものと、まさに同じでした。

ニューノーマルのスタンダードに。「ソーシャルディスタンスゆるスポーツ」


ARゆるスポーツに加えて新たに開発されたのが、対面で行うもののプレーヤー同士の距離を保つことができる「ソーシャルディスタンスゆるスポーツ」です。
10月18日に開催された体験会の様子を、筆者も覗いてきました。


この日は、「ステイホームサッカー」と「ソーシャルディスタンスベビーバスケ」の2種目が行われました。

「ステイホームサッカー」は、フラフープの中にとどまったまま行うサッカーです。両足ともフラフープから出てしまうと、「ステイホーム」という反則が取られ、一定時間フープの中で座っていなければなりません。


一定時間ごとに、審判によって指定された色のフープの人だけ動き回ってプレーをすることが可能ですが、この時もフープの中に入ったまま動かなければなりません。


もう一種目の「ソーシャルディスタンスベビーバスケ」は、プレーヤー同士の距離が取れるように、もともとあったベビーバスケというゆるスポーツのルールを改定したものです。
ベビーバスケは、ボールを赤ちゃんに見立てて行うバスケットボール。激しく扱うと赤ちゃんの鳴き声が聞こえてくる、特殊なボールを使用します。もちろんドリブルもNGで、パスも優しく丁寧にしなければなりません。

「ソーシャルディスタンスベビーバスケ」はフラフープによってプレー位置が決められており、プレーヤーはフープの中を転々としながらパスを繋いでいきます。ボールを取り合うだけでなく、陣取りゲームのような要素も加わり、通常のベビーバスケとはまた違った面白みが感じられました。


慣れてない人がサッカーやバスケットボールをすると、ボールの近くに人が密集してしまうことが多々あります。しかし、プレーヤー同士の距離をとれるルールにすることで、安心して楽しめるだけでなく、試合がこう着状態に陥りづらくなり、意外にもスポーツとしてのゲーム性も増したように感じました。

社会の変化によって生まれた、新たなスポーツ弱者


世界ゆるスポーツ協会の萩原事務局長によると、ARゆるスポーツやソーシャルディスタンスゆるスポーツの開発は、新型コロナウィルス感染症の蔓延によって人々が集まってスポーツをするのが難しくなってしまったという社会課題を解決するための手段だそうです。

新型コロナウィルスの感染拡大防止に対する考え方は人それぞれですし、人と接触することや、外出することへの不安の度合いは、時と場合によって常に変化します。

外出自粛が呼びかけられていた時期は、自宅に籠もっていてスポーツをする機会が失われてしまった人たちも新たなスポーツ弱者となりました。大規模な外出自粛要請がなくなった時期も、人が集まる場所に行くことに不安を抱えていたり、所属しているチームやクラブの活動が制限されてしまったり、気軽に参加できるスポーツイベントが開催されなくなってしまったり…など、様々な理由で思いっきりスポーツを楽しむことが難しい「スポーツ弱者」が生まれていると言えます。


時代の変化に応じて新たに生まれたスポーツ弱者に対して、家から参加できるARゆるスポーツや、人と人の距離を保ちながらできるソーシャルディスタンスゆるスポーツといった新しいスタイルのスポーツを開発し提示することで、世界ゆるスポーツ協会は、新たな時代に受け入れられるスポーツの選択肢を増やしていると言えます。

さいごに


「スポーツができない」という社会課題に対して、「だったらできるスポーツを作ろう」という世界ゆるスポーツ協会の提案は、変化し続ける社会との対話によって生み出された新たな希望とも言えると思います。社会が大きく動いている今、改めてスポーツのあり方が問われ、さらなる進化へと向かっているのかもしれません。

■世界ゆるスポーツ協会
https://yurusports.com/

取材・文: 杉浦愛実
Reporting and Statement: manamisugiura

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