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Dec.

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16 Aug. 2016

【世界初】ハンディキャッパーのためのマリンリゾート 奄美大島ゼログラヴィティで過ごす夏休み

東京から飛行機で2時間半。奄美大島は、九州南端から台湾まで続く南西諸島に属し、鹿児島本土と沖縄のほぼ中間に位置する。沖縄ほど観光地化が進んでいないため、透明度の高い海やマングローブの原生林など、手付かずの自然が残り、東洋のガラパゴスとも言われている。

そんな南の楽園に、世界初のハンディキャッパー専用マリンリゾート「ゼログラヴィティ清水ヴィラ」が2016年6月にオープン。今回、障害のある子どもたちの家族がゼログラヴィティで過ごす2泊3日のツアーに同行した。

いよいよ奄美大島へ

子どもたちが待ちに待った夏休み。しかし、車椅子の子どもにとって、レジャーに行くことは簡単ではなく、夏休みにしかできない体験を我慢しなくてはいけないことも多い。そこで、『障害を気にせず、思いっきり遊んでほしい!』とツアーを企画したのは、NPO法人D-SHiPS32船長の上原大祐さん。上原さんの呼びかけで、筋ジストロフィー等の障害のため車椅子に乗った子どもたちのいる3家族がツアーに参加した。

7月26日、ツアー初日。成田空港に集合した3家族

(7月26日 成田空港に集合した3家族)

奄美大島空港に到着後、1時間半のドライブを経て、ゼログラヴィティが建つ自然豊かな島南部の瀬戸内町へ。湘南をイメージして設計されたヴィラは、緑の芝と黄色い壁のコントラストがとても美しい。客室はツインルームが4部屋のミニマムなつくりで、友人や家族同士で貸切りにすればプライベート感覚で楽しむことができる。

(到着した家族を出迎える上原さん)

(到着した家族を出迎える上原さん)

当事者の声を反映した客室

車椅子ユーザーにとって、気になるのは客室の設備。ヴィラの客室は、当事者のリアルな声を取り入れた徹底したバリアフリー設計になっている。例えば、電気のスイッチやハンガーなどが車椅子から届くよう、低い場所に設置されていたり、浴室では床に座ってシャワーを浴びることもできるよう、専用シャワーフックやマット・椅子が用意されている。もちろん、ニモの壁紙やお洒落な照明など利用者を楽しませる工夫も忘れない。

(ハンガーやスイッチは、低い位置にも設置されている)

(ハンガーやスイッチは、低い位置にも設置されている)

(障害の状態に応じて、シャワーの浴び方が選べる工夫)

(障害の状態に応じて、シャワーの浴び方が選べる工夫)

バリアフリー対応のプール

部屋に荷物を置くとすぐに、子どもたちはプールに入る準備を始めた。ヴィラに併設するプールは、顔を水につける練習から本格的なダイビング講習まで対応する。プールサイドまで車椅子で行くことができ、水中のスロープを使ってバギーカヤックで水に入ることも可能だ。
バギーカヤックとは、水に浮く車椅子といったところ。水面での安定性が高く、体幹に障害を持っていても安心して楽しむことができる。尚、今回のツアーでは、施設スタッフの他にサポートスタッフが参加しており、子どもたちが安全に遊べるようケアしていた。

(プールサイドまで車椅子で行くことができる)

(プールサイドまで車椅子で行くことができる)

(早速バギーカヤックに乗って遊ぶ夢果ちゃん)

(早速バギーカヤックに乗って遊ぶ夢果ちゃん)

(サポートスタッフと水遊びをする真心ちゃん)

(サポートスタッフと水遊びをする真心ちゃん)

夏といえば

プールから上がり夕食の後にあるのは、子どもたちお楽しみのプチ花火大会。手持ち花火等であれば、ヴィラ敷地内でやることができる。みんなと一緒にやる花火は格別に楽しい。

(楓音ちゃんは線香花火に大はしゃぎ)

(楓音ちゃんは線香花火に大はしゃぎ)

自慢の船でマリンスポーツ

朝凪の海に心が躍る。いよいよ奄美の海へ。ヴィラの前に広がる大島海峡は、美しいリアス式海岸と生物種の多さから奄美群島国定公園に指定されており、その複雑な海岸線と加計呂麻島が外洋の流れをやわらげ、シーカヤックやダイビングなどマリンスポーツのメッカとして知られている。

この日は、船をヴィラ前の海岸から約200m沖に停泊して海遊びのベースとして使用した。ゼログラヴィティが所有するカタマラン型クルーザーは、車椅子ユーザーの利便性を考えて設計されたバリアフリー艇。船の乗り降りや船内の移動はもちろん、トイレやシャワー、座った状態で海中へエントリーできるエレベータを搭載している船は世界でも珍しい。

(船に設置されているスロープで、楽々乗船)

(船に設置されているスロープで、楽々乗船)

(広いデッキは、車椅子でも自由自在(写真提供:小笠原 愛))

(広いデッキは、車椅子でも自由自在(提供写真))

(昼食時には、焼きたての本格ピザがヴィラからボートでデリバリー)

(昼食時には、焼きたての本格ピザがヴィラからボートでデリバリー)

船のデッキでご飯を食べた後は、いよいよ海の中へ。ダイビングやシュノーケルには、HSA(Handicapped Scuba Association)の資格を持つインストラクターが対応。障害の状態に合わせたサポートを受けることができる。

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(お母さんと一緒にエレベータでエントリーする真心ちゃん)

(お母さんと一緒にエレベーターでエントリー)

(波が穏やかなので、楓音ちゃんも気持ち良さそう)

(波が穏やかなので、気持ち良さそう)

なお、泳ぎに自信がなくても大丈夫。海に入らなくてもシュノーケリングの感覚を楽しむことができるクリアカヤックは子どもたちから大人気。海の透明度が高いので、海底まではっきり見える。

(クリアカヤックから覗く景観にどきどき)

(クリアカヤックから覗く景観にどきどき)

(魚目線ではこんな風に見える(写真提供:小笠原 愛))

(水中から「はい、チーズ!」(提供写真))

潮風のテラスにて

海でいっぱい遊んだ後は、ヴィラのテラスでBBQ。『本物を体験させてあげたい』オーナーである鳥畑さんの想いを汲んだ料理が並び、2日間の思い出話に花が咲く。2泊3日の短いツアーであったが、この経験は子どもたちそして家族にとって、とても大切な夏の思い出となったようだ。ツアーの終わりを惜しむように、笑い声は遅くまで続いた。

(テラスでテーブルを囲む。潮風が気持ちいい)

(テラスでテーブルを囲む。潮風が気持ちいい)

バリアフリーの必要性が叫ばれて久しい今日、障害を持つ人びとが最低限の日常生活を送る上での改善は徐々に進んでいるものの、『遊び』の選択肢はまだまだ限定されている。
「はじめてできた!」そう言って笑う子どもたちの姿に、楽しみながら色々なことに挑戦する機会の大切さを改めて感じた。

ゼログラヴィティでは、現在車椅子ユーザーから受入れを開始している。視覚障害などの様々な障害にも順次対応予定とのこと。暖かい時期はダイビングやシーカヤック、冬になったらホエールウォッチングなど季節を問わず楽しめる奄美大島に、一度遊びに来てはどうだろう。

 

◆ゼログラヴィティ清水ヴィラ

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2016年6月に鹿児島県奄美大島にオープンした世界初のハンディキャッパー専用のマリンリゾート。バリアフリー対応のマリンスポーツ施設・クルーザーを保有し、ダイビングをはじめ複数のマリンスポーツが楽しめる。(http://zerogravity.jp/

◆上原大祐

1981年、長野県出身。アイススレッジホッケーパラリンピック銀メダリスト。現在は社会起業家、NPO法人D-SHiPS32代表など多方面で活躍する。(http://dships32.com/

写真提供:小笠原 愛(株式会社LA DITTA )

取材・文: TAKUTO / 川越卓斗
Reporting and Statement: takuto

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