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29 Mar. 2017

バリアフリーの一歩先へ -八丈島ユニバーサルキャンプ-

2020年東京オリンピック・パラリンピックを3年後に控え、ダイバーシティ(多様性)理解に向けた本格的な取組みが始まっている今日。しかし、時代を先取りしたイベントが、13年前から実施されていることをご存知だろうか。

昨年で12回目を迎えたユニバーサルキャンプin八丈島は、参加者約120人のうち障害を有する人が40人余りを占め、企業研修での参加者などと班を作り、2泊3日八丈島でのキャンプを通して交流を深めるイベントだ。毎年、リピーターを増やしながら進化している本イベント、今年の参加応募(6月開始予定)を前に、筆者が参加した昨年の様子を紹介したい。

※文中に障害特性に関する記述をしていますが、あらゆる特性は個人によって異なるものです。

はじめまして

同じ班のメンバーとは事前説明会での顔合わせがあるものの、ほぼ初対面の状態でキャンプ当日を迎える。「見えない」「聞こえない」といった人もたくさん参加しており、年齢・性別・職業などその背景もバラバラな事も相まって、キャンプ開始直後は、コミュニケーションがスムーズにできない事もまだ多い。もちろん、実行委員やベテラン参加者がフォローするので、初参加でも心配はいらない。

キャンプを通して得た「気づき」を書き込み、班のフラッグを完成させる

多様なバックグラウンドを持つ人達で班を構成

障害特性への理解

自己紹介が終わったところで、各障害への理解および基本的なサポートの仕方について学ぶプログラムが始まる。ここでは、「聴覚」「視覚」「肢体(車いす)」「こころ(見えない障害)」の障害当事者が講師となり、ゲーム等を通して楽しみながら知識を習得する。筆者が一番驚いたのは、聴覚障害への理解を促す「口パク伝言ゲーム」。口パクで伝言を伝え、速く正確に伝わったチームが勝ちというゲームだが、聴覚障害のチームの強さが半端でない。読唇、つまり唇の動きから言葉を把握する術が身に付いているためだ。相手の顔を見てしっかりと口を動かすことで、簡易な情報伝達ができる。このように、相手の得意・不得意を理解することで、コミュニケーションの幅が広がっていく。

車椅子ユーザーへのサポート方法を学ぶ

車椅子ユーザーへのサポート方法を学ぶ

ゲームを通して聴覚障害への理解を深める

ゲームを通して聴覚障害への理解を深める

協力して夕飯作り

せっかくのキャンプ、夜は自炊のプログラムが組まれている。割り振られた食材を駆使して、班メンバーで協力して夕飯を作る。よくやってしまいがちな『ステレオタイプな役割分担』は、実はとても不適切であることを実感した。例えば、視覚障害だけど包丁の扱いがとても上手い人もいれば、火起こしを主とする力仕事が苦手な男性もいる。メンバーそれぞれ何ができるか・何がしたいかを確認して自炊に取り組んだ班は、早く・美味しく・楽しそうだ。

班メンバーで協力して夕食を作る

班メンバーで協力して夕食を作る

完成した料理を囲む

完成した料理を囲む

相互理解を深める

2日目は、会場を近くの三根小学校に移してキャンプのメインプログラムである『どっぷりコミュニケーション』が行われた。これは、全体を少人数のグループに分けた上で、障害当事者や八丈島の方がスピーカーとなり、日常生活やプライベートな出来事などを当事者視点で話すと共に、聞き手は聞いてみたいことを何でも質問し(聞きにくいことでもOK)、相互理解を深める取組みだ。多様な背景を持つスピーカーによる普段なかなか聞けない深い話を聞き、参加者からはたくさんの質問が飛んでいた。

お菓子を使った聴覚障害児の発音練習を学ぶ

お菓子を使った聴覚障害児の発音練習を学ぶ

八丈島の方から島の暮らしを聞く

八丈島の方から島の暮らしを聞く

八丈島のアクティビティで遊ぶ

お互いのことを良く知ったところで、午後は事前に希望したアクティビティ(温泉・歴史民俗資料館見学・サイクリング・スノーケリング・海水浴・ヨガなどから選択)に出かける。筆者は海水浴に参加し、他の参加者と共に八丈島の綺麗な海を堪能した。

キャンプ場近くの海岸で海水浴を楽しむ(筆者撮影)

キャンプ場近くの海岸で海水浴を楽しむ(筆者撮影)

海辺のヨガで心も身体もリラックス

海辺のヨガで心も身体もリラックス

歴史民俗資料館を見学

歴史民俗資料館を見学

島の人々と一緒に盆踊り

最後の夜は、地元住民にも参加頂き、盆踊り大会が開催される。販売される八丈島の特産品を味わいながら、各々のスタイルで踊りに参加する。ここまで来ると、キャンプ初日にあったコミュニケーションのギクシャク感は完全に無くなり、多様性を受け入れた上での一体感に包まれる。

盆踊りを楽しむ参加者

盆踊りを楽しむ参加者

盆踊り参加者全体

地元住民も一緒になって盛り上る

 

ところで、『バリアフリー』と『ユニバーサルデザイン』の違いを知っていますか?
混在して使われることが多い言葉ですが、根底にある考え方が全く異なることは、あまり知られていません。

キャンプを主催するNPOユニバーサルイベント協会理事長の内山さんは言います。

「『バリアフリー』というのは、例えば、障害があっても利用可能ですよ、といった具合に、障害者や高齢者を特別視している部分がある。しかし、『ユニバーサルデザイン』の考えは、障害の有無・年齢・性別・国籍といった個々人の多様性を前提として、みんなが利用しやすいものを一から考えるということです。」

左:八丈町長 山下さん、右:ユニバーサルイベント協会 内山さん(筆者撮影)

左:八丈町長 山下さん、右:ユニバーサルイベント協会理事長 内山さん(筆者撮影)

 企業研修で参加した人が、翌年には一般参加者としてリピートすることも多いユニバーサルキャンプ。その魅力は、誰もが主体者となり、良いキャンプを作っていこうと思える環境にあるのだろう。今年の夏は、『バリアフリー』から一歩進んだ『ユニバーサルデザイン』の考えを体験に、八丈島へ行ってみませんか。

 

◆NPOユニバーサルイベント協会

誰もが安全・安心・快適に楽しく参加できるユニバーサルイベントの企画、運営や、企業向けの体験型ワークショップ研修を開催。誰もが力を発揮し、いきいきとした生活を送ることができる社会づくりを目指す。(http://u-event.jp

撮影:NPOユニバーサルイベント協会(一部、筆者撮影)

取材・文: TAKUTO / 川越卓斗
Reporting and Statement: takuto

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