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2024

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15 Jul. 2015

デザインの前にイマジネーションを
–都市創造講座・マイノリティ×都市-

人々が集い、経済や教育・文化といったあらゆるものが蠢めきながら、発展を遂げてゆく場所、都市。世界では都市化が進み、現在は世界人口の約半数が、2050年には約66%が都市生活者になると言われています。国連が2014年に発表した「世界大都市ランキング」によると、2030年の東京圏の予測人口は3700万人。日本社会全体としては人口減少が進むものの、2030年までは東京は世界のメガ大都市のトップに座するとも言われているのです。

海外からの移住者の増加や住民の高齢化などが予想される東京都心部では、新しいコミュニティやライフスタイルの在り方が模索されています。これからの都市の未来を、私たちはどう想像し、作り出していけばよいのでしょうか。Shibuya Hikarieのクリエイティブスペース8で、NPO法人シブヤ大学の主催で「マイノリティ×都市」と題する講座が開催され、児童福祉、障がい、LGBT、コミュニティデザインといった多様なジャンルで活動するゲストを招いた対話が行われました。

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<マイノリティ”の眼差しから都市を俯瞰する>

シブヤ大学は、渋谷という街全体をキャンパスに見立て、「まちづくり」をコンセプトにしたさまざまな学びの場を提供し、活動を支援するNPO法人です。2005年に有志によって活動が開始され、2006年にはNPO法人格を取得。以降、渋谷につながりを持つクリエーター、活動家、アーティストなどを講師とした多種多様な参加型の授業を展開してきました。昨今は「同性パートナーシップ条例」が施行されたことでも注目を集めている渋谷区ですが、「マス(大多数)」の集まる場所である「都市」を「マイノリティ(少数派)」いうキーワードから眼差しを向けることで、どのような論点が浮かび上がってくるのでしょう。

cityminority4(シブヤ大学学長 左京さん)

長年、心身障害者福祉や発達障がい者支援に従事し、2014年4月に設立された渋谷区子ども総合支援センターのセンター長を務める池山世津子さんは、虐待を受けたり、発達障がいを抱えた子どもたちなどの支援を通じて「誰もが暮らしやすいまち・渋谷」づくりを目指しています。関わりが難しいとされる子どもたちを支援することは、一見特殊なケースのようにも思えますが、池山さんは、子どもたちの支援することは、突き詰めると、その家族を支援することにもつながると指摘します。それはつまり、家族(大人)の問題=私たちが普段接触している社会に目を向けることから、歩み知ることのできる問題ともいえるのでしょう。

LGBT(性的マイノリティ)の理解促進や、当事者が心をひらき交流できる場づくりに取り組む「NPO法人ハートをつなごう学校」の代表、杉山文野さん。飲食店を経営し、自らも性同一性障害であることを公表しながら活動する杉山さんは、互いの理解を深めるためには、人々が「交わる場」を設けることが必要だと指摘します。そんなアプローチのひとつが、2014年5月に神宮前にオープンしたアジア料理店irodoriです。シンプルに「美味しいものが食べたい」という気持ちから、お客さんに足を運んでもらう。それが、LGBTについて触れるなんらかのきっかけになればいいと、スタッフの半数以上はLGBTの当事者を雇用しながらも、お店ではあえて、LGBTカラーを全面に打ち出すことはしていないとのこと。

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(渋谷区子ども総合支援センター池山さん(左)、「ハートをつなごう学校」杉山さん(右))

障がい者クライミング世界選手権の優勝者であり、視覚障がい者を主な対象としたフリークライミングの普及活動を行うNPO法人モンキーマジックの代表、小林幸一郎さんは、視覚障がい者にとって、度重なる開発によりその風景を変える都市は、訪れにくい場所でもあるといいます。商業施設も多く、時間を潰す場が多くあるように思われていても、障がいがあると、そういった場の活用は容易ではありません。当事者であることをカミングアウトすることや、周りが当事者の置かれた状況を理解するのが難しいと言われるLGBTと比べ、視覚障がいのような「障がい」は、社会的認知は高いです。しかし、だからこそ「関わりたくない」「面倒な存在」と思われている側面もあると、小林さんは感じるそうです。ハード面での対応が進んでいても、人々のメンタリティにあるブロックを解き放つことが必要なのです。

<複合的空間としての都市の可能性>

多くの人たちが行き交う場所だからこそ、対応の迫られる課題も多く内包している複合的な空間・都市。すべての課題を、行政などの公的機関による解決に委ねるだけでは立ち行かない状況の中、「都市」からどのような解決策やオルタナティブが誕生しうるのでしょうか。

近所付き合いが希薄と言われる都市において、支援が生まれる関係を構築し、例えば「虐待」のような世代間連鎖の問題にも切り込んでいくには、「孤立させない」「そこに行けば話を聞いてもらえる」という、誰もが気楽に立ち寄り交流できる場をつくることが有効なのではないかと、参加者たちは指摘します。

citymonorityshibuyadaigaku3(モンキーマジック代表の小林さん(左)と、コミュニティデザイナー山崎さん)

例えば、障がい者でもできるロッククライミングを健常者も共に楽しむことによって、障がい者との接点が生まれ、さらには異なる障がいを持った人たち同士が理解し合うこことができる。食事をしながら、あるいはお酒を飲みながら、気軽な気持ちで、LGBTやマイノリティに触れるきっかけを得る。子どもを持つことができないなら、世代的な「タテ」のつながりではなく、「ヨコ」にファミリーを広げる感覚でつながり支えあっていく。コミュニティデザイナーの山崎亮さんからは「日本の社会ではもともと、親子関係でも上下関係でもない、第三者による『ナナメの関係』が機能してきた。近代が、ある種の潔癖さを求め「分断(分ける)」の方向で発達してきたが、今後は、新たな交わり方を模索いかなくてはならない」との指摘がありました。「制度も必要かもしれないけれど、制度があることで、返って制約を強める方向に竿湯してしまうこともある。だとしたら、人々がより柔軟に交わりあえる『しかけ』を設けることが大切なのではないか」。

まちが、解決力を持った存在であるように。そして、そのまちに人々が足を運びたくなる空間であるように。都市の未来を構想する場もまた、多角的な「交わり」を育む機会として、デザインされることが必要と言えそうです。

 <「都市」を想像し続ける力を>

未来を創造的につくっていくために、私たちは何をしていけばいいのか。授業をコーディネートした紫牟田伸子さん(編集家/プロジェクトエディター/デザインプロデューサー)は「これまでのマーケットリサーチの手法では導き出せない解答を探求していくためには、都市を『デザインする』という発想を持つ前に、先ず、前提としての『想像力』を鍛えることが必要だ」だと、今回の講座の企画意図を語ります。同じものを見て過ごしていても、みんなが違うのだということを想像する『リテラシー』を高めていくこと。そのためには、普段見過ごされてきたものの中に、きっと、そのヒントが隠されている。

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(紫牟田さん)

紫牟田さんのプロデュースする「都市想像会議」は「祭り×都市」「才能×都市」とテーマを変えて、秋・冬に開催される予定です。渋谷という「都市」をフィールドに、ダイバーシティ社会の可能性を探りに出かけてみませんか。

<関連情報>
シブヤ大学 

取材・文: co-maki/今井麻希子
Reporting and Statement: co-maki-imaimakiko

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