「障害者」との共生を地方創生のヒントに –神山スローフォーラム-
- 共同執筆
- ココカラー編集部
アートやサテライトオフィスの誘致によるまちづくりで注目を集めている、徳島・神山町。ここで「多様性が育む地方創生のカタチ」をテーマとしたフォーラムが今年5月に開催されました。アベノミクスの大きな柱のひとつとして注目される「地方創生」。ここに「障害者」と呼ばれる多様な人たちへの視点を持ち込むことで、どのような新しい価値を創造していけるのでしょうか。フォーラムの企画者、スローレーベルの栗栖良依さんにお話を伺いました。
スローレーベルはアーティストと障害者施設や企業などをつなぐことで、これまでの「マス(大衆)」を対象とした「大量・均等品質型」のプロダクションとは違う、「自由なものづくり」のあり方を提案しています。昨年、横浜のトリエンナーレに合わせて開催された「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2014」では、クリエイティブシティ横浜で、障害のある人たちと人々が交わりあう場を創造することで、新しい社会の姿を提示しました(参考:『2020年日本の姿が見えてくる〜ヨコハマ・パラトリエンナーレ2014』 )。(ヨコハマ・パラトリエンナーレ2014より。Photo:427FOTO)
スローレーベルと徳島県のつながりは、2013年。県内で藍染を取り入れた作品づくりを行っている障害者施設と、awanowa/NPO法人とくしま障害者授産支援協議会、そして4組のアーティストとの出会いから「BLUE BIRD COLLECTION」と呼ばれる、一点ものの作品群が誕生し、スローレーベル徳島が立ち上がりました。
どの地域にも「障害者施設」はあります。これについて、福祉的観点から「何かをしなくては」と思う人たちはいても、「何が生まれるか」という創造的視点からその個性に着目し、「地方創生」と結びつける視点を持った人は、まだ、多くありません。そこで、積極的に視点を切り替えを働きかけるアプローチを提唱することから、新たな可能性を広げようというのです。
「地方創生を語る上で、障がい者をプレーヤーとして耳にする機会はあまりありませんが、新しい社会をつくる上で、彼らの突出した能力は貴重な地域資源だと私たちは考えています。『障がい者施設イコール下請け』という発想はもう古い!彼らの能力を社会に還元する方法をみんなで考え、彼らが暮らしすいまちをつくることを考えることは、みんなが暮らしやすいまちをつくることにつながるはずなんです。」だからこそ、普段出会うことの少ない、地域の多様な立場の人たちが「交わり」、そこからどんなことが生まれうるのかを、実際に感じとる場が必要なのだと、栗栖さんは語ります。
このような観点から、フォーラムでは、インクルーシブ・デザインを研究されている京都大学准教授の塩瀬隆之さん、障害者支援などを行うNPO法人とくしま障害者授産支援協議会の梶原ひろみさん、四国で地域活性化事業等に取り組むNPO法人グリーンバレー/株式会社リレイションの祁答院弘智さんらをゲストに、各現場で起きていることを共有しあい、「神山」において多様なプレーヤーがコラボレーションしながら、「多様性」をいかした地方創生の可能性を話し合いました。
15年以上前から「アーティスト・イン・レジデンス」が存在し、国内外から新しい仕事や働き方を求める人たちが移住していることでも注目を集めている、神山町。このまちが「多様性の宝庫」とも言われるのは、それら多様なひとたちが出会い、交わりあい、コラボレーションがうまれる環境が、半径100メートルの間で実現できる環境があるから。「この新たな動きの中に、突出した能力をもつ障がい者の方々がプレーヤーとして加わったら、世間をあっと驚かすような、一般常識を完全に覆してしまう奇跡のようなイノベーションが起こる可能性が十二分にあると思っています(栗栖さん)」。
(スローフォーラムの風景)
フォーラムでは、インクルーシブ・デザインの塩瀬さんが「ために」から「ともに」そして、地域ビジネスの祁答院さんが「競争」から「共創」へという視座を提示するなど、参加者を勇気づけるトークが展開されました。
政府の発表した「まち・ひと・しごと創生関連事業」では、障害者という言葉は「障害者の社会参画支援の充実」「就労支援」の名目で、厚生労働省管轄事業として記されています。福祉型視点から、創造型視点へ。そのためには、人々が柔軟な視点を持ち、クリエイティブになれる場が必要なのかもしれません。
今年11月には、徳島市で、年齢、性別、国籍、障害の有無を問わない5人組×20組=100名がスローレーベルのユニフォームを着て街中を走り抜ける「スローラン」というイベントが開催される予定だそうです。「互いの身体的な特徴を知ること、そして街中に溢れるバリアを取り除き、誰もが暮らしやすい街の実現に向けたアクションを通じて、自分自身が健康になり、街や環境も健康になる。そんなムーブメントをつくっていきたいと思っています」。
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