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interview
22 Jul. 2015

「ノーライン・キャリア」の時代 ①~「二枚目の名刺」(前)~

<ダイバーシティな働き方  「ノーライン・キャリア」>

グローバル経済の進展、少子高齢化、労働市場の流動化などの環境変化によって、日本人の働き方が変わりつつある、と言われ始めて久しい。終身雇用、年功序列といった慣行が崩れるなど、やや恐怖訴求的な論調のニュースが目立つ。一方、この変化をチャンスととらえ、これまで当たり前とされて来た枠組み(ライン)に縛られず、逆に自分で自分の限界(ライン)を決めない多様で新しい働き方、つまり「ノーライン・キャリア」を創りだしている取り組みが、現れはじめた。そうした開拓者たちの“いま”をレポートして行きたい。

 <第1回 「二枚目の名刺」(前)>

     “見たいと思う世界の変化に、あなた自身がなりなさい”

「2枚目の名刺」という言葉が、急速な広がりを見せている。その“火付け役”ともなったのが、NPO支援団体【二枚目の名刺】だ。設立は、2009年9月。本業で持つ1枚目の名刺にとどまらず、組織の内外を問わず新しい社会を創ろうとする「二枚目な(カッコいい)社会人」を、どんどん輩出しよう!という志を持った数人の若い企業人の思いから始まった。

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 これまでの活動の柱は2つ。一つは【Common Room(通称CR)】というオープンなネットワークの場。あるテーマを設定し、該当するNPO団体が活動内容のプレゼンテーションを行うと共に、その団体に興味を持つ参加者とディスカッションあるいはプロボノを募集する。これまで、計32回開催されて来た。もう一つの柱は「サポートプロジェクト」。二枚目の名刺メンバーがコーディネートを行い、社会人チームとNPOが一体となって経営課題に即したプロジェクトに短期集中で取り組む、というもの。これまで、助産院のサービス拡大、防災情報発信強化、モンゴル孤児院支援強化など、約30のプロジェクトを実施して来た。ちなみに、二枚目の名刺ではNPOとは呼ばず、SPO(Social Purpose Organization)という呼称を使う。社会課題の解決を最上位のミッションに掲げるのであれば、組織形態は問わない、というのがその理由だ。

 さて、設立から6年。二枚目の名刺、というコンセプトの世の中への浸透と軌を一にするように、同団体の活動も新たな進化を遂げようとしている。Common Roomとサポートプロジェクトの仕組みを、自社の人材育成に取り入れようという企業が生まれ始めたのだ。ここでは、NTTデータシステム技術(以下NST)の事例をご紹介する。

 プロジェクトは、昨年8月に行われた二枚目の名刺からの説明会でキックオフ。続いて9月にNPO諸団体とのマッチングセッションが実施され、同月末にNST社員によるプロジェクトへの参加がスタート。今年1月に最終報告会が行われた。

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 サポート先は、中高生のキャリア育成を行うNPO法人・キーパーソン21のプロジェクト立ち上げ、中高生の「お金」に対する向き合い方(ファイナンシャル・リテラシー)の向上をミッションとしたNPO法人・金融知力普及協会のイベント「エコノミクス甲子園全国大会」プロモーション活動。そしてガンや病気を持った人や家族を支援する活動を行っている一般社団法人・CAN netの新規事業「カタログサービス」立ち上げプロジェクト。3か月半という短期集中プログラムながら、送り出し側(NST)受け入れ側共に満足度の高い結果となった。

 では、なぜ企業が、この仕組みを人材育成に取り入れたのだろうか?「変化の激しい時代にあって、これまでのやり方では通用しない、という危機感があったのだと思います」と語るのは、二枚目の名刺側で本プロジェクトをコーディネートした松井孝憲さん。

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(松井孝憲さん)

納期が厳しく求められるIT業界の特質として、これまでは「言われたことを、きちんと実行する」スキルが評価されて来たが、今後は社会的ニーズをいち早く察知しながらメンバーを引っ張るリーダーシップが求められる。その「生きた道場」としての価値が、この取り組みにある、と期待されたわけである。では、参加者にとってはどのような価値があったのか。「受け入れ団体側の、社会課題解決に対する本気度に大いに刺激を受けた方が多かったと思います。」(松井さん)。特に、北海道に拠点を置くCAN net杉山代表の、打ち合わせのたび北海道からプロジェクトのために足を運び、熱く思いを語る姿に社員全員が感銘を受けた、という。何よりも、時代の変化に追いつけるのか・・・と自信を失いかけていた社員の誰もが、自分が「当たり前」と思っていたスキルの価値に改めて気づき自信を取り戻した意味は大きい、と送り出したNST担当者も、今後の社内での効果に大きな期待を寄せている。

<「越境学習」の可能性>

「越境学習」というコンセプトが注目され始めている。企業人が所属する組織の枠を自発的に“越境”し、自らの職場以外に学びの場を求めること、という意味だ。企業の社員は、これまで所属する組織の方向性に沿った思考と行動を求められて来た。だが、これにはリスクが伴う。時代の変化に直面した時、同じ組織では視野の広さに限界が出ることだ。多様なスキルや価値観を持つ人たちと接する、あるいは接するだけでなく共通の目標に向かって行動を起こすことによって、新しいモノやコトが生まれる。まさに、ダイバーシティーの本質を突いた考え方であり、二枚目の名刺がNTTデータシステム技術から始めた企業連携プロジェクトは、このコンセプトを体現する『実践知』を身につける取り組みと言える。

「見たいと思う世界の変化に、あなた自身がなりなさい」は、二枚目の名刺代表が様々な場で引用するマハトマ・ガンジーの有名な言葉。自分を縛る枠を超え、見たいと思う新しい社会を本気で創る社会人が一人一人現れる革命が、静かに生まれつつある。


参考:NPO法人 二枚目の名刺   

関連記事:
「ノーライン・キャリア」の時代 ②~「二枚目の名刺」(後)~

 

 

取材・文: メビウス4U
Reporting and Statement: moebius4u

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