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27 Jul. 2015

究極の普遍的スポーツ?!「鬼ごっこ」のポテンシャルを追え

「鬼ごっこ」。日本人のほとんどが、幼少期にこの外遊びを体験したことがあるのではないでしょうか。多くの人が、子ども時代の終わりとともに卒業してしまうこの遊びの「奥深さ」に着目し、スポーツ競技にまで昇華させたのが、一般社団法人鬼ごっこ協会です。なんとこの「スポーツ鬼ごっこ」、地域活性化イベントや婚活といったレクリエーションの他、学校の授業にも取り入れられつつあるのだとか。さまざまなボーダー(境界線)を乗り越えるポテンシャルに満ちたこのスポーツの魅力を探りに、誰もが気軽に参加できるイベント「鬼ゴッター大会」を取材してきました。

_DSC_6400(この日の会場は代々木公園の一角)

集合場所の代々木公園に集まったのは、社会人、学生、子連れの夫婦、外国人など総勢約30人。リピーターも多いですが、毎回、テレビやネットで見て、あるいは口コミで知りやってくる初心者が三分の一ほどいるそうで、間口の広さを感じさせます。

鬼ごっこといえば、「鬼」から最後まで逃げ切った人が勝ちという1対多数のゲームですが、「スポーツ鬼ごっこ」はチーム戦。シンプルながら、誰もが楽しめる趣向の凝らされたルールが存在します。

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(スポーツ鬼ごっこのイメージ図:一般社団法人鬼ごっこ協会より)

先ず、5−6人ごとのチームに分かれ、陣地を決めます。勝負は前半・後半の二回戦。試合時間5分の間に、敵陣にある宝(トレジャー)をどれだけ多く奪えたかで点数を競うのです。「鬼ごっこ」のように「鬼にタッチされたら終わり」ではなく、鬼に触られないSエリア(安全地帯)が設置されていたり、触られても何度でも復活してプレーに戻ることから、安心してチャレンジが可能。鬼に触られて「あがり」となることを恐れることなく、めまぐるしいスピードでゲームが展開されるのです。

_DSC_6422(地面に陣を描き、宝(トレジャー)を用意すれば、どこででもできる)

 勝つための秘訣。それは、チーム内のコミュニケーションにあります。相手の守りを緩めつつ、隙を狙って攻める。そのための効果的な攻防体制をデザインするか。はじめは互いの動きの特徴を手探りで探り当てていたメンバーも、時間が経つに連れて「こっちこっち!」「攻めて!」と必死になって相互に声を掛け合います。気付いたらそこには、自然に「リーダー的存在」や「チームとしての戦略」が生まれているのです。

DSC_6432(コートの中では常にダイナミックな動きが展開されている)

子どもから大人まで入り混じったチームですが、一度ゲームが始まれば、気遣いをしている暇はありません。小さく、すばしこく動き回る子どもに、大きな大人が振り回され「してやられたり!」という顔をする姿を見ていると、ある種の爽快感すら感じられます。「子どもは最初から遠慮なしで全力でぶつかってくるから、子どもが多い方が、ゲーム転換が速くて、盛り上がるんです」「鬼ごっこと違って、運動神経のいい子も悪い子も互いに支え合い、戦略次第で勝つことができることがこのスポーツの醍醐味なんです」熟練の参加者からは、そんな声が聞こえてきました。

_DSC_6465s(アンダーソンさん一家。試合後、お子さんはMVPを受賞しました)

 来日中に、旧知のメンバーから誘われて参加したという、アメリカ人のアンダーソンさん一家。日本で英語教師をしていた旦那さん以外は日本語が話せませんが、スポーツは国境をなんなく超えてゆきます。「男女が一緒にプレーするゲームは他にもあるけれど、こんな風にいろいろな年齢層の人が混じり合って対戦するスポーツは珍しいと思うの。家族みんなで参加できるのは素晴らしいし、鬼ごっこ合コン(Spouse Hunting)という企画もあるなんて、とてもおもしろいと思ったわ」。奥さんのブリジットさんによると、スポーツ鬼ごっこはアメリカの「キャプチャー・ザ・フラッグ(Capture the Flag:旗取り合戦)」というスポーツにも似ているのだとか。

_DSC_6439(攻めと守りが同時進行なので審判は大変)

誰でも、簡単に気軽に楽しめるスポーツ鬼ごっこ。しかし、二つのゴールを同時に見張り判定を下す必要があるため、審判にはそれなりのスキルと経験が必要です。そこで、いつでも・みんなが楽しくスポーツ鬼ごっこを楽しめるように、鬼ごっこ協会は、指導員制度を設定し、審判となり指導できるレベルのスタッフの拡充に力を入れています。

_DSC_6484(ゴールを決めて、思わずハイタッチ)

鬼ごっこの起源は、平安時代にも遡ると言われています。地域で、誰もがごく自然に行ってきたこの伝統的な遊びは、時代と共に「遊び」が変化し、地域コミュニティのつながりが希薄になる中、次第にその存在感が薄れつつあります。そんな時代だからこそ、改めて「鬼ごっこ」に光をあて、その眠れる価値を、新しい価値創造に役だてたい。鬼ごっこ協会はそんな想いを胸に「鬼ごっこのある町づくり」を通じたスポーツ振興・地域振興・文化振興を目指しているのです。

鬼ごっこの持つ「つなぐ力」は社会的にも再評価されています。例えばネスレ日本のCSR(CSV)活動「ネスレヘルシーキッズプログラム」に導入されたり、JTBコーポレートセールス社との共同で「職場旅行プログラム」が開発されるなど、企業セクターでの展開が進んでいる他、東京都品川区では小学校の授業プログラムにも採用されるなど、その効能に、公的機関も注目しているのです。「鬼ごっこ」という懐かしい遊びで「みんな」をつなぐ、シンプルで奥深い、この粋な取り組み。あなたも是非一度、体験してみませんか。

_DSC_6529(「鬼ゴッターポーズ」で集合写真)

参考: 一般社団法人鬼ごっこ協会 

取材・文: cococolor編集部
Reporting and Statement: cococolor

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