DEIな企業風土の耕し方 vol.2パナソニック コネクトの場合(後編)
- 副編集長 / Business Designer
- 硲祥子
DEIの取り組みを精力的に行い、インクルーシブな企業風土を育てている企業の皆様にお話を伺うことで、「DEIな企業風土の耕し方」のヒントを探る本連載。
第2弾は、経営戦略の柱のひとつにDEIを位置付ける、パナソニック コネクトさんです。
※前編はこちらから。
お話を伺った人:パナソニック コネクト株式会社 人事総務本部 DEI推進室 油田 さなえさん、古山 雄也さん、池松 奈穂さん
聞き手:中川 紗佑里、硲 祥子、菅 巳友(いずれもココカラー編集部)
——前編では、現場の声をアクションに繋げていくことの大事さについて話していただきました。マネージャー業務負荷低減プロジェクトの他にも、現場の声を反映した取り組みがあれば教えてください。
油田さん:2023年4月に生理休暇の名称と内容を変更したのですが、その際も現場の声を重視して進めました。当社は管理職に占める女性の割合が6.9パーセント(2023年度)で、多くの女性にとって生理休暇を申請する相手である課長は男性です。「生理休暇という名称が直接的なため、申請を上げるハードルがある」という声があり、名称変更をDEI推進室から労政部門に提案しました。
その際、せっかくなら休暇の名前を公募してみようということになり、たくさんの応募の中から「たんぽぽ休」という名前に決定しました。365日かたちを変えて咲くたんぽぽを、日々異なるホルモンバランスや生理と戦う女性になぞらえています。たんぽぽの「T」を取って、通称T休と呼ばれています。また、今まで 1日単位だった生理休暇を半日でも取得できるようにし、PMS(月経前症候群)でも取得可能にしました。
——素晴らしいアクションですね。ちなみに、どのような形で現場の声をヒアリングされているのですか?
油田さん:年に1回行なっているDEIキャラバン(前編参照)や、メーリングリスト、労働組合、社内アンケートなど、さまざまな入り口を設けています。それに加え、今年の1月から役員と公募で集まった社員が議論する、「Gemba Roundtable」という取り組みを行っています。目の前の困りごとについて話すのではなく、少し未来の働き方を見据えて議論します。
設定したテーマは、『2040年、私たちは「多様な家族」を前提とした働き方ができているか?』2040年には、高齢で単身の人、共働き育児をしている人、同性パートナーのカップルがもっと増えているかもしれない。多様な家族をもつ人がパナソニック コネクトで働いていると考えて、現行制度を見つめ直してみると、色々な意見が出てきました。これまでは基本的に制度を管轄する部門だけで制度を考えるのが通例で、社員自らが考えるような機会がなかったので、このような機会が作れたのはよかったと思います。
——様々な取り組みを進める中で、一筋縄ではいかないなと思うこともありますか?
池松さん:LGBTQ+に関する活動でいうと、取り組みに参加・協力してくれる人の輪を広げていくのに難しさを感じています。
私たちDEI推進室からの情報発信だけでは限界があります。取り組みに参加・協力している一人ひとりが周りの人を巻き込んでいくような工夫ができれば輪が広がっていくのではないかと考えています。
また、可能性を感じているのは、東京レインボープライドなどリアルな体験が伴う場所に来てもらうこと。参加してみると大事なことだと気づいてくれる人が多いので、どうやってリアル参加を促すか、問題意識を維持していくか、というところは課題だと思っています。
古山さん:2024年度は「障がい」をDEIの重点テーマとしています。マイノリティカテゴリの中でも、まだまだ理解が進んでいないテーマの一つです。まずは、意識の面から、各拠点で障害者の疑似体験ができるワークショップなどを開催することで、よりよい理解促進ができればと思っています。役員に対しても同様のワークショップを実施し、トップとボトムの両方から推進していくことが、今まさに行なっているチャレンジです。
——DEI関連のイベントに参加・協力してくださる方の輪を広げていく難しさは我々も感じていることであり、とても共感します。通常業務もある中で、こうした取り組みへの参加を促すための工夫は何かされていますか?
油田さん:基本的に、DEIの活動は業務であるというメッセージを出すようにしています。とはいっても、業務との兼ね合いで参加できない人も多々出てくるので、残せるものはしっかりアーカイブに残して、字幕もつけることを徹底しながら、だれもが見たいタイミングで見られるようにする工夫をしています。
また、介護に関するDEIフォーラムを開いた際(前編参照)、自分ごと化して聞いてくださった方が多くいたことからも、業務が忙しくてもとっかかりさえあれば、自分に直結する問題として、DEIという世界に足を踏み入れてみよう、と思ってもらえると実感しました。そこを入り口に、さらに他の問題に興味を持つこともあるでしょうし、 自分や周りのメンバーがDEI活動に参加することにも寛容になれると思います。そういう人が1人でも増えていくといいなという願いも込めて、まだまだチャレンジし続けていきたいです。
——最後に、 今後のパナソニック コネクトのDEI推進について、ご担当者としてどのような想いや考えがあるか、教えてください。
油田さん:DEIは取り組む領域が幅広いので、色々なことにチャレンジし、領域を広げていきたいです。「パナソニック コネクトって、DEIが進んでいるよね」と言ってもらえることがここ数年で非常に増えてきたので、今後は他の企業と一緒に、さらに色々なチャレンジをし続ける存在であり続けたい。そうすることで、社会を変えていく一助となりたいと思っています。
古山さん:障がいのある方が 働きやすい環境づくりは、結果的に、誰もが働きやすい環境づくりに繋がると思うので、そこを突き詰めていきたいと思っています。ただ、障がいのある方の就労は日本社会全体の課題なので、 1社の企業では解決しきれない課題が山積しています。だからこそ、他の企業、大学などの組織と連携して、社会課題の解決につなげていきたいと思います。
池松さん:LGBTQ+の取り組みや卵子凍結の制度を担当していると、社外の方と関わる機会がすごく多く、やはり協力すべきだと強く感じます。情報交換やイベントで会うだけでなく、Pride Action30*1のような取り組みを通じて、もっと一緒にアクションをとれる機会を作れたらと思っています。
まとめ:パナソニック コネクトの事例から学ぶ、DEIな企業風土の耕し方
今回はパナソニック コネクトの皆さんに話を伺い、DEIな企業風土の耕し方のヒントをいただきました。この記事を読んでいただいているみなさんの組織でも、なにか取り入れられる糸口が見つかれば幸いです。
*1 Pride Action30について
https://connect.panasonic.com/jp-ja/brand/prideaction
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