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Nov.

2024

interview
18 May. 2021

発達障害という特性と、ポジティブに向き合う!<前篇>  そもそも発達障害について、正しく理解してみる。

竹下雄一郎
コピーライター
竹下雄一郎

(C)LITALICOメディア&ソリューションズ

 筆者自身は子育ての経験がありません。しかし普段子どもの存在や話題と縁遠い自分でも、例えば身の回りには発達障害のお子さんを持つ方が複数居たりして、その話を聞いたりすることがあります。そして、最近街中で「放課後等デイサービス」と看板を掲げた施設を目にする機会が増え、何だろう?と思って調べてみると、それが発達障害児のための施設だと知って、「いまって、そんなふうになってるんだ」とちょっと驚いたりもしました。――個人的な感覚で恐縮ですが、かつてに比べて発達障害という存在に、自分の身近で接する機会が増えたように思います。

 そこで今回、発達障害についてのウェブメディア/ポータルサイトとして国内最大級の規模を誇る、「LITALICO発達ナビ」編集部の牟田暁子さんに、発達障害の現状と実際について、お話を伺ってみました。

 

「発達障害」という言葉が、誤解を産んでいる。

今回インタビューさせていただいたLITALICO発達ナビ・牟田さん

――まず、そもそも発達障害とは、どのような障害を指すのでしょうか。例えば、過度に落ち着きがなくじっとしてられない子どもがいる…など、メディアなどを通したおぼろげな認識はあるのですが、私たちが正確に知っているかと言えば、決してそうではないように思います。

 

牟田さん:

 発達障害とは、大きくは「自閉症スペクトラム障害(ASD)」、「学習障害(LD)」、「注意欠如・多動性障害(ADHD)」の3つに分類される、脳機能の先天的な障害とされています(※筆者注…詳しくは、こちらのリンク先をご覧ください。→LITALICO発達ナビ「発達障害とは?」https://h-navi.jp/column/article/134)。

 しかし、私たちはそれらを「病気」や「症状」と限定してではなく、子どもひとりひとりの「特性」として捉えるべきと考えています。また、私たちは、障害は社会の側にあるととらえています。例えば、視力が悪い方は、眼鏡をかけることでカバーできますよね。眼鏡というツールがあれば、視力が悪いことは障害になりません。発達障害についても、まわりの環境と特性が合わないときに生きづらさを感じ、それが障害となる。ですから、早期のうちからひとりひとりに応じた学びやすさや生きやすさを大切に支援し、また、子どもたちの育ちのために必要な手段があることが大切なのです。

 私たちがウエブサイトの名称を、「発達障害ナビ」ではなく、あえて「発達ナビ」としているのもそのためです。発達障害がある子どもの特性に配慮を欠いた対応や無理解が「二次障害」を招き、より状況を難しくすることもあるといわれています。そうした環境の中で失敗体験を重ねてしまうことで、子ども本人の自信や自尊心を失わさせたり、挫折や無力感を抱かせてしまい、心理的な負のスパイラルに貶めていってしまいます。

 あれをしなさい、これをしなさい、と強くあたったり、できないことを責めることが、当事者には一番つらいことです。できること、頑張っていることにスポットライトを当て、適切な行動を認めたり、感謝するといった周囲の行動が、スモールステップかもしれませんが、子どもの育ちに繋がっていくのです。

 

発達障害の子どもの増加と、その裏にあるもの。

LITALICOの資料より。文部科学省調べのデータが示されている。

――なるほど、「障害」という言葉からつい誤解してしまいがちですが、病気ではなく、あくまでも子どもそれぞれの「特性」として捉えることが大切なんですね。

 ところで、かつてに比べて、発達障害についての話題に接する機会が増えた気がします。実際に、特別支援学級、及び「通級」と呼ばれる一般の学級に通いながら支援を受ける児童が、2011年から2018年にかけて約1.9倍に増えたという文部科学省の資料を見て、そういう数の影響もあるのかな、と思いました。

 

牟田さん:

 児童数が増えている要因としては、まずは、それだけ行政や教育の現場で、発達障害のある子どもへの支援の仕組みの整備が整ってきたことが大きいかと思います。そして何より、社会全体、特に保護者の方々の理解も進み、発達障害という特性を認め、積極的に支援を活用しようとする意欲が高まっていることも影響しているのではないでしょうか。

 LITALICO発達ナビを立ち上げたのは約5年前になりますが、当時と比較しても、一人ひとりに適した対応をしてくれるということで、特別支援学級を希望される方が増えているのではないかと感じています。発達障害について理解が深まることで、特性を認め、子どもに合った支援を受けながら、確かな成長に繋げるための選択をしたいという行動に結びついているのだと考えます。

 

ネットが、人と人との繋がりが、変化を加速させている。

――保護者の方が、我が子が発達障害かもしれないと感じた際、どのように、発達障害についての知識や対処方法などを情報収集されているのかが気になりました。

 というのも、今回の取材にあたって、大きな本屋さんで発達障害についての資料などを探してみたのですが、勢い、医療・福祉領域の専門書になるか、それとも個人の体験記のようなパーソナルなものになるか、二極化されているように感じたからです。いわゆる一般的な育児であれば、保護者目線のノウハウ本は沢山あるのに。その中で、発達障害について様々な情報が網羅されているLITALICO発達ナビは、貴重な存在に思えました。

 

牟田さん:

 保護者の皆さんは、1歳半健診などのタイミングで医師や保健師から指摘されたり、保育園や幼稚園の先生から指摘され気づくというパターンが多いようです。しかし、1歳半健診等では、特性が強くでていない限りは「ひとまずは様子を見ましょう」という判断になるのが大半で、すぐ医療や福祉に繋がるというケースは少ないのです。ですが、そう言われた保護者の方は当然、モヤモヤとした不安を抱え続けることになります。それなら、ではまずは身近なネットで情報収集と考えられる方が多いようで、LITALICO発達ナビへたどり着く新しいユーザーさんも、ウエブ検索からの流入が多くの割合を占めています。

専門家監修のコラムやユーザー発のブログなど、様々なコンテンツを日々発信。

 LITALICO発達ナビでは、発達障害にまつわる記事をコラムという形でほぼ毎日更新しているほか、専門家の監修による親子関係構築のヒント、ユーザーさん同士で教え合うQ&A、ブログ機能であるダイアリーなど、多彩なコンテンツを取り揃えており、他にはない充実度を目指しています。結果として、月間アクセス数が約150万人、無料会員数は約20万人と、発達障害を扱うサイトとしては大きな規模になりました。

 そしてボリュームだけでなく、保護者の方の不安を煽ったり、悲しい気持ちにさせないことにも配慮して編集しています。我が子の子育てに、希望と見通しを持っていただきたいと考えているからです。

 そのような想いを感じていただけているのでしょうか、ユーザーさん同士の交流も活発へのに行われています。子育てでの困りごと解決策や悩みなどを共有し分かちあう、あたたかなコミュニティが形成されていると感じています。ユーザーの皆さんのポジティブな姿勢が好循環し、私たちも敬服させられるばかりです。


 発達障害とポジティブという、一見意外なワードの組み合わせ。次回は、その真相に迫っていきます。明日の掲載を、どうぞお楽しみに。

 

取材協力:「LITALICO発達ナビ」https://h-navi.jp/

(運営元:株式会社LITALICOメディア&ソリューションズ)

 

取材・文: 竹下雄一郎
Reporting and Statement: yuichirotakeshita

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