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Sep.

2019

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15 Aug. 2019

Always Be yourself~イケアを通じた文化の拡がり

飯沼 瑶子
プランナー
飯沼 瑶子

人の力を信じる会社

イケアでは、“We believe in people”「人の力を信じる」という理念に基づき、ダイバーシティ&インクルージョンを含む以下3つの柱を掲げ、それを具現化する様々な施策を進めている。
① Diversity & Inclusion(多様な人材の受容と活用)
② Security(長期的な関係構築の保障)
③ Equality(平等な機会創出)

2014年よりパートタイムのスタッフを含めたほぼ全ての従業員を正社員(コワーカー)とし、同一労働・同一賃金を実現。同年、経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」へも選出された。

また、管理職の男女比率も5:5を達成しているが、コワーカーからはダイバーシティを謳う会社で殊更に「男女比」と分ける必要があるのかという声が上がるほどだという。

イケアの理念や取組について、Co-worker Experience Managerの朝山玉枝さんにお話を伺った。

お話を伺った朝山さん

大切にしていること

「より快適な毎日を、より多くの方々に」

上の写真の背景にも書かれているこの言葉は、イケアの理念。これは、お客様はもちろん、コワーカーに対しても同じように考えられており、すべてのコワーカーが、それぞれ自分らしくのびのびと活躍し、成長できる環境づくりを目指している。

そのための指針が以下の8つのイケアバリュー

中でも一番のコアは「連帯感/Togetherness」。一緒に働く仲間への信頼のもと、“Be Yourself”をテーマに職場にいるときも友達や家族といるときと変わらない自分らしさを発揮できるよう、まずは自分が手本となる行動でリードする。

これらのバリューが当たり前のように浸透しているからこそ、日本に限らずグローバルも含めたイケアのどこでも同じように働くことができるのだと朝山さんは言う。

例えばジャングルジムと言われる成長の仕方。

コワーカーからマネージャーのポジションになり、その後またコワーカーに戻る人もいる。また、オープンイケアと言われる仕組みを通じて、グローバルも含めた別の部署への異動においても、自らの意思による選択で動くことができる。そして、こういった縦横無尽な動き方がお互いに尊重され、自分の成長に自分で責任を持つという姿勢のもと、他人と比べることなく自分らしい働き方を目指し続けられる環境が整っている。

毎週金曜15時に設けられているFIKA(スウェーデン語で“お茶をする”)と言われる全員揃ってのおやつタイムも、連帯感の醸成に一役買っているのかもしれない。

社長も含めた全員がフラットに会話を楽しめる時間が、みんなの距離を縮めている。

オフィス内に設置されたキッチンスペース

キッチン奥の窓の向こうにはコワーカー向けの託児所があり、愛知県のIKEA長久手においては地域にも開かれた施設となっている。スウェーデンの教育をベースに、「みんな違って当たり前」という思想が徹底されているほか、自然と溶け合って様々な体験をすることも重視され、雨の日でもカッパを着て外で遊ぶ子どもたちの様子が見られることもあるという。

商品・サービス・コワーカーに拡がる、ストアを通じたインクルージョン

イケアが大切にする様々な思想は、ストアやカタログ、そして商品を通じてお客様にも届けられていく。

2018年からは、オムテンクサム(スウェーデン語で“思いやりがある”)という商品シリーズも、世界に先駆けて日本で販売中だ。
このシリーズは普段の暮らしに少しのサポート機能を必要とする方のためにデザインされており、ケアをする側とされる側の両方の視点を重視している。
一時的にしろ、永久的にしろ、私たちの誰もがいずれどこかの段階で、日常のちょっとしたサポート機能を必要とするということを前提に、人間工学専門のデザイナーが介護者や認知症患者の声を参考に開発した。多様な視点が商品に反映された事例の一つだ。

オムテンクサム:滑り止め付きのマットと、底面に滑り止めが付いたお皿、持ちやすいグラス

オムテンクサム:座ったり立ったりしやすく設計されたソファ

また、IKEA長久手では、3月の国際女性デーに合わせて女性のお客様へお花を配布し、キャンペーン商品を販売する施策も行われるなど、ストアからは商品だけでなく様々な文化も発信される。

またそうした、商品やサービスを提供するバックボーンとして、ストアでは各地域ごとに来店するお客様のニーズに合った採用をするよう心掛けられ、例えば子ども連れの多い地域では子どもを持つコワーカーの比率を上げるなど、地域の特性を雇用比率にも反映した店舗づくりが行われているという。“インクルージョン・ライダー”ともつながる考え方だと感じた。

年齢・性別・ライフステージ・家族構成、多様な視点を持つコワーカーたちが実際に商品を使用して感じた意見や使い方のアイディアは、彼らの働く場であるストア内の陳列にも反映され、お客様へ届けられていく。それが店舗ごとに多様な地域性を伴い、各地での生活提案につながっているのではないだろうか。

例えば密閉袋の活用方法も様々

多様性ベースで循環するビジネス

地域ごとの多様性に即したコワーカーがストアで働き、実際にイケアの商品を使うことで、その多様性が反映されたユースケースが生まれ、店頭でも紹介されるというサイクルには、地域の多様性×自社ビジネスでの新しい価値を感じた。

イケアがグローバル企業としてもたらすのは、ルーツであるスウェーデンの文化や商品だけではない。お客様や働く人を通してローカルの文化とまじりあい、新しい文化として発展させ、地域に還元される「暮らしのつくり方」全体のシステムではないだろうか。

今後も、ストアで働く社員の就業時間におけるフレキシビリティのさらなる向上や、女性がより働きやすくなるような施策、パタニティー休暇(父親のための育児有給休暇制度)の取得促進など、“より快適な毎日を、より多くの方々に“届ける取組がどんどん進められていくという。
イケアが特別先進的な取組をしている企業としてあり続けるのではなく、各地で良いと思われる文化がそれぞれ取り入れられ、「当たり前」の幅が拡がっていくことを願う。

取材・文: 飯沼瑶子
Reporting and Statement: nummy

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