I HAVE PRIDE -東京レインボープライド2019- レポート②
- メディアプランナー
- 八木まどか
前回の記事に続き、TRP2019に出展した企業ブースをレポートします。
今年のTRPでは、商品を活用してブランドのファンも巻き込むブースがいくつも見られました。そこでは多くの人が楽しみながらアライを表明したりしていたので、注目してレポートします。
ブランドの力をフル活用!
日本コカ・コーラ株式会社のEmilyさん(左)と立田さん(右)
初出展だった日本コカ・コーラ株式会社は、ミレニアル世代の社員で結成された若手有志グループが発起人となり、社がそれを応援する形で実現しました。メンバーの一人、立田章悟さん(マーケティング本部)に出展理由を尋ねると、「社としてこれまで女性や障害者への取り組みはあったが、LGBTへの取り組みもしっかりと声をあげる必要があるのではないかと感じたため」と語りました。
ブーステーマは「#Drink With Pride」。広く知られているコカ・コーラ社製品を活用した展開となっていました。主なコンテンツとして、コカ・コーラボトルを使った【フォトパネル】、来場者みんなで作る【ボトルキャップアート】を実施。またさらに、来場者に対して公式スマホアプリ「Coke ON」の対応自動販売機で好きな商品を1本プレゼントするドリンクチケットの配布もしていました。ブースの中でも外でも楽しめるため、多くの来場者が惹きつけられていました。
ボトルキャップアートでは、社内で集めたボトルキャップを活用
ちなみにブース運営には社員のみならず、家族やその友だちもボランティアとして一緒に参加しており、様々な人を巻き込む工夫が見られました。
初出展の感想を聞くと「思ったよりも多くのお客様が来場され、自分たちも楽しい」と宍倉麻矢さん(広報部パブリックアフェアーズ本部)は答えました。実際にインパクトのあるコカ・コーラの商品やロゴに親しみながら、同社のメッセージを読み込む人が多くいらっしゃいました。
「乗る」という共通体験を生み出してファンを巻き込む
日産自動車株式会社のスタッフの皆さん
日産自動車株式会社は初めて単独ブースを展開。これまでは駐日英国大使館への協賛という形でした。ブースでは、世界に1台にしかないオープンタイプの日産リーフを展示。「想いを乗せよう虹色リーフ」と題して来場者にリーフで行きたい場所を付箋に書いて彩ってもらいました。「TRPが終わったときに、虹色になったリーフでみんなの想いを日産が届けたい」と、スタッフの方は力強く語りました。実際に、子どもを含め様々な人が虹色リーフに乗って写真撮影を楽しみ、車体には「差別のない社会に行きたい」など思いがこめられた付箋によってカラフルに飾られました。
今回のブースのコンセプトは「多様性によってイノベーションを生んできた日産の“ダイバーシティ”の歩みを、来場者に感じてもらいたい」とのこと。日産では多様な人たちの考えをどのように生かしていくか、ということを長きにわたり大切にしてきたからです。ブースで日産リーフを展示した理由としても、100%電気自動車など最新技術を開発する裏には多様な人の考えが生かされており、それが社の強みにつながっていることを表現するためでした。
虹色リーフのコンセプトを説明するパネル
「今回の単独ブースの出展は、日産のダイバーシティの歴史に残るものになった」と語るのは石井綾子さん(ダイバーシティディベロップメントオフィス)。社内では2017年頃から、ダイバーシティオフィスと社内の自主的なネットワーク「LGBTQI Ally Network」が対話を続け、出展に繋がりました。
今回は27名もの社内ボランティアが様々な部署から参加し、社内へのよいアピールにもなったと言います。それぞれがこの経験を所属する部署に持ち帰り、それぞれの場所で多様性を推進し、下からのアプローチにも繋がることを期待しているそうです。
今年も大盛況!限定デザインでファンの心をつかむ
スターバックス コーヒー ジャパン株式会社のスタッフの皆さん
今年で2回目の出展となるスターバックスコーヒージャパン株式会社は、ダイバーシティ&インクルージョンのテーマ「#NO FILTER」を掲げキッチンカーを出展。これは「フィルターのない世界、つまりそれぞれが自分を表現できる世界を」という思いを込めています。
前回同様、来場者にドリンクを提供するとともに、昨年は一瞬で無くなったTRP限定タンブラーを今年はデザインを新たにし、数量を増やして販売しました。販売数を増やした理由は「みんなで一緒に同じものを持つことで、アライという価値観を共有してほしいという思いを込めました」と山田朱香さん(マーケティング本部広報部広報チーム)は語りました。また、スターバックスの思いに賛同し、アライとしてサポートする意思を表明した来場者にはレインボーリボンをつけるコミュニケーションも併せて実施しました。
昨年TRPに初出展したところ、次回の参加を望むお客様の声があったり、同性パートナーシップ登録制度など社内に既にあったLGBTに関する制度を再認識した社員もいたりと、とても反響があったそうです。今年はパレードにも他団体と一緒に参加しました。
「今回TRPに参加したスタッフが、感じたことをそれぞれのお店に戻ってシェアしたり、社内SNSでつぶやいたりすることで、ジワジワとアライの輪が広まったり、新しい取り組みに繋がったりしていければ」と山田さんは語りました。
TRP2019限定デザインのタンブラーは今年も話題に
ちなみに限定タンブラーは、昨年の2倍以上の数を用意したものの、2日目の昼過ぎには完売したとのことです。同社のTRP出展の影響力は今後も注目です。
ブランドの力を生かし継続的な施策に
商品をTRP限定デザインにしたり、レインボーテイストに彩ったりして活用したブースでは、ブランドファンも巻き込んで多くの人が楽しんでいました。また商品を利用すると、TRPが終わった後もアライを表明できたりします。ブランドの力を生かすと、そうした継続的なダイバーシティ&インクルージョンの施策にもなるのが良い点だと感じました。
共同執筆 八木まどか・伊東孝哲
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