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7

Nov.

2024

interview
12 Jul. 2022

カミングアウトされた親の本音〜“息子”と呼ばれたくない子ども〜

仲尾 郁子
メディアプランナー
仲尾 郁子

ダイバーシティ&インクルージョンの分野に限らず、何かしら課題を扱う時は、当事者や解決者に焦点をあてがちです。しかし周囲の人は何を想い、どのように課題や当事者と向き合っているのでしょうか。今回cococolorはLGBTQ+当事者の子を持つ親御さんにフォーカスすべく、お子さんからカミングアウトを受けた方にインタビューをしました。

 

お話を聞いたのは、“息子”に「バイセクシュアル」と「ノンバイナリー」を告げられたお母さんです。突然のことに驚きながらも、わが子のありのままを受け入れたいと思う親としての素直な気持ちを、包み隠さず話して頂きました。

 

プロフィール

アミア・ミラーさん。日本生まれ、日本育ちのアメリカ人。2011年〜2020年は陸前高田市の海外広報ディレクター、特別顧問、コンサルタントとして東北に在住。現在はアメリカに住みながら、年に数回日本を訪れている。子のカミングアウトをきっかけとして、ノンバイナリーについての書籍(日本語)を執筆中

参考:お子さんがカミングアウトされたときのお話

https://note.com/amya_m/n/ncdc315a30523

 

 

―まずは、アミアさんご自身について教えてください。

父親の仕事の都合で、日本で生まれ育ちました。大学でアメリカに渡り、結婚と出産を経て、30年以上日米、日欧に関わる仕事をしてきました。

2011年の東日本大震災後は、岩手県陸前高田市で9年以上震災のボランティアをしていました。多忙な日々を送る中で、子どもからカミングアウトを受けたのは大きな出来事でした。

 

突然の息子のカミングアウト

―カミングアウトを受けた時について伺いたいのですが、まず、「息子さん」、、お子さんとお呼びするのが良いのでしょうか?

大丈夫です。

 

―カミングアウトはどのように受けたのですか?

今から約10年前のクリスマスイブ、子どもが20歳の頃ですかね。付き合っている女性の実家に行きたいというので、空港まで夫と車で送りに行きました。その道中で、自分はバイセクシュアルだと言われました。あなたを愛していることに変わりはない、と思いましたし、その場で子どもにもそう伝えました。

でも、その後家に戻る間に、夫と二人で、「絶対そうじゃないよね」と直前に子どもから聞いた話を否定したのです。「そんな訳ない」と。子どもには言わなかったものの、私も夫も、子どもがバイセクシュアルだとは信じていませんでした。

 

―驚きはありましたか?

子どもは、いわゆるノーマル、、、男性として、女性が好きなのだろうと思っていました。成長過程の中で、親としてそこに疑問を持ったこともなかったので、ある日急に言われてびっくりしました。正直なところ、「何かあったんじゃないの?」そして、当時付き合っていた女性がバイセクシュアルだったので「恋人に合わせてるんじゃないの?」と思ったりもしました。

驚いたもののその後10年間、一度もその話はしませんでした。

 

―それは何故ですか?

話したければ向こうから話しかけてくるだろう、そうでなければもう会話したくないんだろうと思っていたからです。とはいえ、10年経つと考えも変わりました。ちょうど結婚を考えている人がいると言われたタイミングで、なぜあれ以来話をしないのか、と本人に直接聞いてみました。すると、それをきっかけに、自分はバイセクシュアルであると同時に、「ノンバイナリー」でもあると言われました。

 

“頭”で理解することの難しさ

―カミングアウトを受けて、何を感じましたか?変化はありましたか?

バイセクシュアルは比較的分かりやすいと思いましたが、ノンバイナリーに関しては、説明されても難しかったのが正直なところです。子どもに聞いたら、ノンバイナリーの定義は人によって違うというので、ますます混乱しました。「バイセクシュアルは表に出すものではない。だけど、ノンバイナリーは自分を表現することに関わるから、自分自身に強く影響するんだ。」とも言われました。

 

―バイセクシュアルは性的指向、ノンバイナリーは性自認や性表現を指すと言われていますね。

今でも、ノンバイナリーを説明するのにぴったりな文章が自分の中で見つかりません。子どもに尋ねても、「これ以上説明できない。仕方ない(That’s just the way it is.)」と言われてしまうので、なかなか解決しない。自分で色々調べて考えて、子どもに話してみて…と、未だに模索を続けています。

 

それから、「Son(息子)」と呼んで欲しくないと言われたので、呼び方に関しても話し合いました。

アメリカでは、「they」というノンバイナリーの人の代名詞が浸透しています。一般的には、「彼ら」という複数形代名詞として使われることが多い単語ですが、代表的な辞典にも「男や女など特定の性別では括れないノンバイナリージェンダーを指す単数形代名詞」という意味が追加されています。日本には一般的に使われるジェンダーニュートラルな言葉、ノンバイナリーを指す単語がないように思います。日本の友人に、子どものことを伝える最適な日本語がないのでずっと困っています。

 

母親として子どもの理解も、LGBTQ+やジェンダーに対する理解もすぐにできたわけではありません。むしろ、日々悩みながら過ごしているのが実情で、親子でコミュニケーションをとったり、自分でも情報を得たり知識をつけるように心がけています。

 

インタビューを終えて

アミアさんが話してくださったエピソードや気持ちは、まさに母親としての本音でした。心ではすぐに受け入れられても頭で理解するのは難しかったことなど、率直な想いだと感じました。

 

インタビューの最中も、「息子が…違う。ほらね、また息子って言っちゃった。子どもが…」と、何度も呼び方をご自身で訂正される姿が印象的でした。

親が子どもを理解しようと、会話をしたり学んだり、試行錯誤する姿勢は、子どもにはきちんと伝わるはずです。家族や周囲の身近な人が、自分を想って行動してくれる気持ちは、それだけで何より嬉しいものです。

ダイバーシティが重要視される現代、親世代の切り口でエピソードが語られることは、まだ少ないように感じます。ですが、自分たちが生きてきた価値観や考えとの違いに悩みながらも、アライになるために歩む道のりは、今の時代に必要なストーリーではないでしょうか。

 

カミングアウト後の現在のエピソードや、アミアさんが感じている日本の課題については次回の記事で触れています。

 

取材・文: 仲尾郁子
Reporting and Statement: ayakonakao

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