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25

Apr.

2024

interview
14 Jul. 2022

カミングアウトされた親の本音〜親のコミュニティーの必要性〜

仲尾 郁子
メディアプランナー
仲尾 郁子

ある日いきなり、“息子”に「バイセクシュアル」と「ノンバイナリー」をカミングアウトされたアミアさん。

こちらの記事では、お子さんからカミングアウトされた時の話や当時の率直な気持ちについて伺いました。今回は、カミングアウト後のエピソードや、現在の悩み事、日本で生まれ育ったアミアさんだからこそ感じる日米の違いについて話して頂きました。

 

プロフィール

アミア・ミラーさん。日本生まれ、日本育ちのアメリカ人。2011年〜2020年は陸前高田市の海外広報ディレクター、特別顧問、コンサルタントとして東北に在住。現在はアメリカに住みながら、年に数回日本を訪れている。子のカミングアウトをきっかけとして、ノンバイナリーについての書籍(日本語)を執筆中

参考:お子さんがカミングアウトされたときのお話

https://note.com/amya_m/n/ncdc315a30523

 

 

子どものアライになるために

―カミングアウトを受けたのは、今から約10年前ですよね。

はい。10年前にいきなり「バイセクシュアル」だと、そして最近になって、「ノンバイナリー」でもあると言われました。驚きましたが、愛する気持ちはもちろん変わりません。子どもの一番の理解者でありたいので、家族で話し合ったり、自分でも色々調べて勉強しています。

 

―具体的にはどのように学んでいらっしゃいますか?

まずは様々な本を読み漁りました。自分で調べたものもあれば、子どもに「これ読んでみてよ」と手渡されたものもあります。アメリカにはカミングアウトをされた親の反応に関する本があり、それも読みました。自分の対応の良かった部分、良くなかったのかもしれない部分を客観的に振り返ることができました。

 

他には、アメリカのLGBTQ+やノンバイナリーの子を持つ家族のコミュニティーにも参加しました。SNS上のクローズドのグループで、親たちが日常の困り事や悩みを打ち明けられる場所になっています。カミングアウトを実の親に受け入れてもらえない子どもがいたら、自分たちが親代わりになって守ってあげよう、という意志を持った人たちの集まりでもあります。

 

周りに同じ境遇の人がいなかったり、リアルの友人には話しづらい場合、オンラインですぐに繋がれるこういったコミュニティーの存在は大きいですね。日本でもネットワークや情報収集の手段がもっと増えるべきだと感じます。

 

 

親のサポートコミュニティーが必要

―日本とアメリカでかなり違いがあるんでしょうか。

日本も、ここ最近でLGBTQ+への理解が広がり、サポート環境もできつつあると感じます。でも、アメリカと比べるとまだ少ないですね。特に、ノンバイナリーに関しては情報自体足りないのではないでしょうか。

 

また、当事者のコミュニティーやサポートネットワークはありますが、親同士が繋がれる場所がもっとあっていいと思います。当事者でなくても、課題に対して声を上げたり、悩みを打ち明けられる環境は必要ですよね。

私自身、気持ちが分かる人が周りにいるのといないのとでは、大きく違いました。話が分かる人がいると、やっぱり心強い。そういう人が見つかるまでは寂しかったし、辛かったです。夫婦でも話し合って「これ以上自分達では解決できない」と言うところまで来ると、どうしても周りに理解者が必要になってきます。子どものプライベートのこと、特にLGBTQ+やジェンダーの話題は、なかなか人に言えないという印象がありますよね。だからこそ、「あなたの気持ちよ〜く分かる」と言ってくれる人の存在って、大きいです。日本にもそのような親の会、親のネットワークが必要ですし、私も親たちのアライになりたいという気持ちが強くあります。

 

親子のコミュニケーションは試行錯誤の繰り返し

―カミングアウトされてから少し経ちますが、現在困っていることはありますか?

今も頭を抱えることだらけですよ!最近は、スカートを履いて、綺麗にマニキュアを塗った子どもが目の前に現れたんです。その状態で、髭はいつも通り生やしているので最初は驚きました。普段は子どものファッションに特別コメントはしませんが、今日はあえて突っ込むべきなのか?いつも通りに振舞うべきなのか?と心の中で必死に考えていました。(笑)

こういった出来事一つとっても、瞬時に飲み込んで対応するのは難しい。けれど、子どもを大切に想う気持ちはずっと変わらないので、分かろうと努力しています。母の葛藤を、子どもも理解してくれているようです。

 

―最後に、当事者の親や家族という立場の人に対して、何か伝えたいことはありますか?

こうして話していると、カミングアウトを経験しても上手くいっている親子のように見えるでしょう?でも、違うんです。“素直に親にカミングアウトできた子どもと理解のある母親”ではありません。私は理解しようと頑張るけど、子どもにはそういうことじゃないんだよ!と言われる。説明されても、分からないの繰り返し。でも、それはどの家族も同じだと気づきました。親が子どものことを完璧に理解するのは不可能だし、時間がかかるのも当たり前ですよね。

私のエピソードは、こういう家族もいるんだなあ、との一つのケースとして捉えてくれれば。そして同じような立場の人がいたら、何かが変わるきっかけになったり、支えになれれば嬉しいです。

 

インタビューを終えて

アミアさんは今後、自身の経験を活かして、日本でジェンダーニュートラルな代名詞を広めたい、そしてLGBTQ+やノンバイナリーの親同士が繋がれるコミュニティーをつくりたいと語ってくださいました。

「親のアライになりたい」という言葉からは、当事者だけでなく、周辺の人々も葛藤しながら課題と向き合っている事実を感じさせられました。

 

誰かが声をあげなければ、課題は気づかれずスポットライトを浴びないことが多いのが現実です。ダイバーシティ&インクルージョンという多様性課題において、当事者の声が聞こえてくることは増えましたが、周りの人々の声を聞ける機会は少ないように感じています。当事者の子を持つ親の立場として、自分の体験談が、誰かの役に立てれば、とアミアさんは話してくださいました。

多様性を重んじる現代で、今まで生きてきた考え方や環境との違いに直面し、困惑している人も少なくないかもしれません。事実、価値観を一夜にして変えられない人もいると思います。しかし、大切なのは変化に対応しようと努める姿勢ではないでしょうか。みんなが生きやすい社会にしていこうと努力することが、個人も社会も、当たり前に求められていると感じます。違いや個性を受け入れ、支え合える社会をつくっていきたいです。

取材・文: 仲尾郁子
Reporting and Statement: ayakonakao

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