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Nov.

2024

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28 Jul. 2020

旅に出られない今だからこそ、おうちでディープな異文化体験を

岸本かほり
副編集長 / ストラテジックプランナー
岸本かほり

ステイホーム期間が4か月目に差し掛かったある日に会社の同期から1通のLINEが届いた。

『ドラァグクイーンとサングリア作らない?』

最初は、この子一体何を言ってるんだろう?と思ったが、送られてきたリンクを見て、なるほど、そういうことか!と納得した。

 

■おうち時間に、ひとつまみのスパイスを

世界220か国以上で展開される空き部屋のマッチングサービスであるAirbnbが、2020年4月からオンラインで各国の様々な体験が楽しめる“Online Experiences(オンライン・エクスペリエンス)”を新サービスとして開始している。「暮らすように旅する」というコンセプトを持つAirbnbだが、新型コロナウイルスの影響を受け自由に旅をすることが制限されてしまった今、暮らしの中に如何に異文化・非日常を取り入れていくか?という部分に価値を転換しているようだ。

上記リンク先へはこちらから

旅・アドベンチャー好きな私は、予定調和の中で過ごすステイホーム期間に飽きていたこともあり、同期と早速申し込みをすることにした。オンライン体験の内容は、ポルトガルはリスボンのドラァグクイーンたちと、伝統のサングリアを作る、というもの。

参加方法は、①ポップコーンゲスト、②エプロンゲストの2択が用意されている。①は、いわゆる見るだけのゲストで、サングリアは作らず、一部始終をベッドやソファから見ながら雰囲気だけ楽しむ。②は実際に材料を用意してドラァグクイーンとサングリア作りを楽しむ。申し込みをすると、用意すべき材料のリストが送られてくる。

シャンパンまたはワイン、オレンジ、レモン、りんご、しょうが、ミントetc…中には、ポルトガル伝統のリキュールや、シナモンスティック等、なかなか家にはない・スーパーでも手に入らないものもあるが、そこは他のリキュールや材料でも代用可、フルーツも好きなものを選んで自分だけのおいしいオリジナルサングリアを、と案内がある。見逃せないのは、最低3リットル入るボウルかジャーを用意して、という言葉。そんな大きな入れ物は家にはなかなかないので、ボウルを複数出して準備完了。

 

■いざ、ドラァグクイーンの世界へ

『お化粧や準備には4時間かかるので、ドタキャンしないでね』という注意書きにクスリとしながら、7人のドラァグクイーンが住む家とZOOMが繋がる。

映画のワンシーンのような登場

1回の体験につき、参加者は30人まで。この体験は非常に人気のようで、現在は1日に7~8回の体験会を7人のドラァグクイーンがそれぞれ数人ずつで手分けをして担当している。我々の回(日本時間20時~)には、日本から4人、フランスから1人、シンガポールから13人の計18名が参加。時差があるので、参加の時間帯次第でどの国からの参加者が多いかは変わりそうだ。

今回の参加者で記念写真

ドラァグクイーンと参加者による自己紹介が終わった後、1分以内に部屋の中にあるファンシーなもので自分を着飾って!というお題が出される。思い思いに部屋のグッズで着飾った参加者の姿を見て、全身全霊で褒めてくれるドラァグクイーンに、自己肯定感が上がっていく。

ここまででわかるように、この体験は画面の前でただ傍観というのは許されない。ちなみに、この体験中の返事は、YESではなく、YAAAAS。人差し指を立てて、左右に振りながら唱えるだけでちょっとだけポジティブになれる魔法の言葉だ。陽気なドラァグクイーンたちが、偶然この時間に集まった世界中の仲間たちを一つにして、スペシャルな空間に惹き込み、笑顔を溢れさせていく。今までにないこの感覚、まさに異文化体験だ。

 

■いよいよメインのサングリア作り

みんなで準備した素材を見せ合い確認しながら、サングリア作りへ。案の定、『3リットル入るボウルを見せて』『そんなんじゃアルコールが足りない!酔えない!』等と若干(かなり)煽られつつ、調理へと進んでいく。

多くの方がご存知の通り、サングリアは、スペイン・ポルトガル地方で飲まれるワインカクテルで、赤白好みのワインやシャンパンにフルーツやスパイスを漬け込んでいくものだ。まずは、フルーツを柔らかく、絞りやすくジューシーにしていく。

まな板の上でフルーツを転がしたり、家族や友達、パートナーと一緒の場合は、このように相手の身体や自分の身体を使ったりして柔らかくしていく。

柔らかくなったフルーツは半分に切って、ジューサーで搾り、搾った皮も一緒にジャーに入れてしまう。オレンジやりんご、レモンなど好きなフルーツをワインとソーダを一緒に投入し終わったら、次はサングリアシロップ作りだ。サングリアにおいて、このシロップが非常に重要な役割を果たすらしい。ブラウンシュガー・シナモンスティック・ミントの葉・ショウガ・レモンの皮のすりおろし、そして水を合わせて鍋に入れて加熱。具材を混ぜる時は、腕だけではなく、お尻も回すのがコツだと教わり、言われるがままお尻を回す参加者たち。このような普通の作業も楽しく変えてしまうのは、ドラァグクイーンのパワーだ。

煮立ったシロップが冷めたら、ジャーへ。最後に、ポルトガルのリキュール(サクランボのリキュールやポートワイン等だが他のリキュールでも代用可)、ウォッカやテキーラなどのアルコール度数が強めのお酒と氷を加えて、完成。サングリアが完成すると、ドラァグクイーンのショータイムが始まる。

いつの間にか、お色直しを済ませているドラァグクイーンたち

人生で初めて見るドラァグクイーンのショー

ショーが終わったら、サングリアをグラスに注いで、乾杯!

最後の5~10分程度で、サングリアを飲みながら、ドラァグクイーンとのおしゃべりを楽しんだり、自由に質問をしたりすることができる。『そのメイクにはどれくらい時間がかかるの?』『あなたのこと好みなんだけど、結婚してるの?』『リスボンに来た時は絶対私たちのお家に来てね!』等、様々な会話が飛び交い、あっという間に終了時刻となった。

 

■おうちでディープに異文化体験

Airbnbのオンライン体験サービスがなければ、この先の人生でリスボンのドラァグクイーンとサングリアを作ることはなかったし、彼女たちのポジティブな力を肌身で体感することはなかっただろう。

新型コロナウイルスの影響で気軽に旅に出ることは難しくなったが、今のオンラインサービス環境は世界をより身近な存在にしている。飛行機に乗り、現地に行ってしか出会えなかった人々に、家のリビングからでも、電車や職場からでも出会うことが可能だ。できないことを悔いるのではなく、新しくできるようなったことに目を向け、試してみることで、世界が広がることを実感した大変貴重な体験だった。

その他にも、各国のホストたちが開くオンラインツアーには、プエルトリコのサルサダンスパーティや、南アフリカのケープ・マレー・カレーの教室、オリンピアンが教える運動教室など、いろいろなものがある。みなさんも、おうちでディープな異文化を体験してみるのはいかがだろう?

取材・文: 岸本かほり
Reporting and Statement: kahorikishimoto

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