3月31日は「国際トランスジェンダー認知の日」 ~一人ひとり違う性のあり方~
- ビジネスプロデューサー
- 秋田ゆかり
3月31日は「国際トランスジェンダー認知の日」
3月31日と聞いてみなさんは何をイメージされるでしょうか?年度最終日、春や桜、新年度への期待などを思い浮かべる人も多いかもしれません。そんな3月31日は国際トランスジェンダー認知の日としても、世界中で祝われています。今回の記事では、➀トランスジェンダーについてもっと知ってもらう、②多様な性のあり方について読者と共に考えることを目的に執筆しました。一緒にトランスジェンダーや多様な性について考えていきましょう。
「4つの性の組み合わせ」を押さえよう
まずは、目的➀「トランスジェンダーについてもっと知ってもらう」ために、電通ダイバーシティ・ラボから刊行されたLGBTQ+に関する実践書『図解ポケット ビジネスパーソンが知っておきたいLGBTQ+の基礎知識』(秀和システム)を参考に考えていきたいと思います。
ここで1つポイントになるのが、「4つの性の組み合わせ」です。セクシュアリティには多様な考え方や説明があるのですが、本記事では「4つの性の組み合わせ」の考え方をご紹介したいと思います。4つの性とは、「自認する性(性自認)」「出生時に割り当てられた性(出生性)」「好きになる相手の性(性的指向)」「表現する性(性表現)」を指しています。
4つの性(『図解ポケット ビジネスパーソンが知っておきたいLGBTQ+の基礎知識』2022年より)
多様な性のあり方について考えるパートで、さらにこの4つの性について考えていきたいと思いますが、トランスジェンダーはこの「4つの性の組み合わせ」の考え方に沿うと、出生時に割り当てられた性別とは異なる性を自認する人(『LGBT報道ガイドラインー性的指向・性自認の視点からー』LGBT法連合会長著、2019年)と説明することができます。出生性と性自認にギャップが存在する人と言い換えることもできるかもしれません。
トランスジェンダーが直面する様々な問題や課題
また、トランスジェンダーが直面する問題・課題には様々なものがあります。中々広まらない多目的トイレ・高い手術費用・条件が厳しすぎる戸籍変更など数多くの問題や課題が存在しているのが現状です。(高い手術費用について、トランスジェンダーが必ずしも手術を希望する、手術を行うわけではありません。)
例えば、戸籍については下記の要件を満たす必要があります。どの要件も大きな問題が内包されており批判されているものです。
<戸籍の性別を変更する際の条件>
➀年齢要件(20歳以上であること):成年年齢の引き下げに伴い、2022年4月1日から18歳以上に引き下げられる予定。
②非婚要件(現に結婚していないこと):夫婦の一方が戸籍上の性別を変更することで「同性婚」状態になるのを防ぐため。
③子なし要件(現に未成年の子どもがいないこと):「親が性別を変更するのは子どもの福祉に悪影響だ」という考えから作られたもの。日本にしかない要件。
④手術要件(生殖腺がないこと、または生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること):性別適合手術のこと。生殖の可能性を諦めなければならず、世界上で人権侵害だと批判されている要件。
⑤外観要件(ほかの性別の性器の部分に近似する外観を備えていること、トランスジェンダー女性限定でペニスを取ること):「見た目と性自認は一致しているべきである」という考えの基に設定されている要件。戸籍変更のために、身体に負担が大きい手術を強制しており、大きな問題がある。
(『マンガでわかるLGBTQ+』2021年より)
こういった問題や課題に対して、私たちが知ること・考えること・行動することが、解決のための大切な一歩となります。
自分の性のあり方を見つめ直してみよう
ここまではトランスジェンダーについて説明をしてきましたが、ここからは目的②「多様な性のあり方について読者と共に考える」ことをしていきたいと思います。
まず冒頭でご紹介した4つの性の組み合わせについて、深堀していきます。そもそも、セクシュアリティは一人ひとり異なり、多様なものです。その多様さを示すために、4つの性ではグラデーションで表現をしています。下記の図はその一例ですが、自分のセクシュアリティを見つめ直す上でも、ぜひ実践してみてください。
(『図解ポケット ビジネスパーソンが知っておきたいLGBTQ+の基礎知識』2022年より)
私自身もこのグラデーションを基に、自分のセクシュアリティについて見つめ直してみました。新たな発見があったのは、④の表現する性(性表現)です。私の出生性は女性ですが、表現する性はジェンダーレスなものが多いことが見えてきました。思い返してみると、小学生の時にはランドセルといえば女の子=赤という発想が何か嫌で少しでも違う色を選択してみたり、中学・高校時代には制服のスカートが心もとなくてモヤモヤしていたり・・。男性はこうだから、女性はこうあるべきという社会環境が嫌だったこともあり、表現する性(性表現)はジェンダーレスの方に向かっていったことが、改めて分かってきました。このグラデーションを基に考えていくことで、自分の性のあり方を見つめ直すことができたと感じています。
LGBT以外の多様な性
このように性のあり方を見ていくと、LGBT以外にも多様な性があることが浮かび上がってきます。今回メインで取り上げているトランスジェンダーも、広義の意味ではエックスジェンダーという性のあり方も含まれます。このエックスジェンダーとは、自認する性が男女どちらでもない、どちらとも言い切れない、いずれにも分類されたくない人を指す言葉です。出生性と性自認にギャップが存在するという意味では、トランスジェンダーに含まれる概念になります。
その他にも、性自認がジェンダーバイナリー(男性・女性の二択)に当てはまらない・とらわれないノンバイナリーや、自らの性のあり方などについて枠に属さない・わからない人を指すクエスチョニングなど、多種多様な性のあり方や言葉があります。
こういった言葉や考え方に無理やり当てはめる必要はもちろんありませんが、知ることで自身のセクシュアルアイデンティティに自信を持ったり、固定的な性のあり方から解放されたりするのではないかと思います。
また、下記のグラフにもある通り、LGBT以外の言葉や存在はまだ浸透しきっていないのが現状です。ぜひこの記事を読んでくださった機会に、読者のみなさんにも様々な性のあり方について調べたり考えたりして頂きたいと思います。
(『図解ポケット ビジネスパーソンが知っておきたいLGBTQ+の基礎知識』2022年より)
性のあり方は一人ひとり違う
国際トランスジェンダー認知の日に伴い、トランスジェンダーや多様な性のあり方について考えてきましたが、いかがだったでしょうか?トランスジェンダーについて考えていく際に、性のあり方は一人ひとり違うというコンセプトを伝えたく、➀トランスジェンダーについてもっと知ってもらう、②多様な性のあり方について読者と共に考えることを目的に執筆しました。
3月31日は毎年訪れます。春や期待のイメージに加えて、トランスジェンダーや性のあり方についてもイメージしたり、考えたりするきっかけにして頂ければ幸いです。