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18 Feb. 2022

電通ダイバーシティ・ラボが、ダイバーシティ時代に、誰もが働きやすい職場環境をつくるための必読書を刊行

「職場でバレたら恐らく続けてはいけないと思う。」
「出世に響く。仕事上、悪い影響しかない」
「職場の上司にカミングアウトしている当事者―わずか3.5%」

電通ダイバーシティ・ラボが実施した「LGBTQ+調査2020」では、職場での性の多様性についての理解が進んでおらず、職場でのカミングアウトの難しさや、それにより当事者が抱える生きづらさが明らかになりました。

LGBTという言葉の認知はここ数年で急激に進んだものの、本質的な理解が進んでいるかどうかは個人差があります。LGBTQ+の人々も含めた「誰にとっても働きやすい職場づくり」は、人権問題として企業によるポジティブアクションが求められおり、その具体的な推進方法に悩んでいる企業は少なくありません。また、多様性を活かし価値創造につなげていくというダイバーシティ経営という視点も重要視されてきました。

電通ダイバーシティ・ラボでは、この度2月16日にビジネスパーソンをターゲットとしたLGBTQ+に関する実践書『図解ポケット ビジネスパーソンが知っておきたいLGBTQ+の基礎知識』(秀和システム)を刊行しました。セクシュアリティの考え方や、ダイバーシティ用語の説明といった基礎的な内容から、電通ダイバーシティ・ラボが2012年から継続して実施しているLGBTQ+に関する大規模調査を元にした世論分析、さらにはビジネスの場で活用できる実践的な取り組みや事例についてご紹介しています。

本記事では、同書から誰もが働きやすい職場づくりに向けてのヒントを一部抜粋してご紹介します。

 

●社内制度を見直そう:パワハラ防止法施行で、SOGI ハラやアウティングの防止策がすべての企業に義務づけ

2020年6月に施行され、中小企業でも2022年4月から適応される、パワハラ防止法。すべての企業に対し、性的指向・性自認に関するハラスメント「SOGI ハラ」や、本人の性的指向・性自認を本人の同意なく第三者に暴露するアウティングの防止策を講じることが義務付けられることとなります。

それでは、LGBTQ+の人も働きやすい職場づくりに企業はどのような対応をすべきなのでしょうか。就業規則やハラスメント防止規程で、性別、障害、国籍などによる差別の禁止を記載している企業は多いと思いますが、まずはその他の制度や規則等がLGBTQ+の人がいることを前提に作られているかを見直すことをお勧めします。 LGBTQ+差別の禁止がルールとしてあるか、広くカミングアウトをしていなくても本人の同意した一定の手続きを経れば他の従業員と同じ福利厚生が受けられるのか、などを確認します。

いますぐにでも始められる規則や方針の改定の内容としては、SOGIに関しての差別・ハラスメントの禁止規則、同性パートナーを配偶者と同等に扱う規則、LGBTQ+の従業員とそのパートナーのための転居・医療費支援、平等で偏見や差別のない育児支援、パートナーの死に対する忌引き休暇、性別適合手術を含むトランスジェンダーへの手当、LGBTQ+に配慮した従業員ハンドブックの作成、採用活動の規則の見直しなどが挙げられます。

 

●ピンクウォッシュに注意!企業の取り組みはインナー施策、アウター施策の両方が重要。

企業の社会的理念が消費者の購買行動に影響を与え始めているいま、欧米ではLGBTQ+フレンドリーをアピールする企業が増加しています。しかし、マーケティングやPRだけのために、レインボーパッケージの商品を作ったり、プライド月間など一定の期間のみ取り組みを行ったりするような企業は、すぐにうわべだけの行為だと消費者に見抜かれ、ピンクウォッシュとして批判の対象となってしまいます。LGBTQ+のインクルージョンをしっかり行っている企業であっても、それ以外の大きな問題があれば「目をそらさせようとしている」と指摘されるケースもあります。透明性が求められる現代では、企業の「信頼」は、競争力を確保するために必要不可欠な要素となってきています。

企業のLGBTQ+への取り組みは、インナー向け施策とアウター向け施策の両輪で育てていくことが重要です。インナー向け施策としては主に、社内で行う風土や制度の整備・改善の施策があります。アウター向け施策は、企業イメージ改善を目的とした発信、消費者・顧客との接点におけるサービスや商品の見直し、リクルーティング対策、外部団体との連携を含みます。どちらかの施策に偏りがあると、好ましくない影響を及ぼす場合もあります。

たとえば、キャンペーンやウェブサイトでLGBTQ+フレンドリーをアピールしながら、インナー施策の実態が伴っていない場合、「LGBTQ+ フレンドリーな企業だと期待して店に行ったのに、現場の従業員から配慮のない対応を受けてしまった」など、ネガティブブランディングとなるリスクがあります。逆に、インナー向け施策に集中しすぎると、現場の従業員にとってはなぜそこまでやらないといけないのか、必要性を実感しづらくなることもあります。企業においてアウター向けの施策がないと、意識の高い従業員以外を巻き込みにくくなり、波及力が弱くなります。

 

●応募数は年々増加:LGBTQが働きやすい職場づくりの指標「PRIDE指標」

任意団体「work with Pride」は、2016年に日本初の職場におけるLGBTQなどのセクシュアル・マイノリティへの取組みの評価指標「PRIDE指標」を策定。年々応募数は増加しており、企業の取り組みも徐々に活発化してきていることが伺えます。

「PRIDE指標」は、下記5つの評価軸を元にwwP の目的である「企業・団体などが枠組みを超えてLGBTQが働きやすい職場づくりを日本で実現する」ことを目指し、社内施策のガイドラインの確立や、働きやすい職場づくりの応援、よい施策のナレッジシェアにつながるよう活用されています。

1. Policy(行動宣言)
2. Representation(当事者コミュニティ)
3. Inspiration(啓発活動)
4. Development(人事制度・プログラム)
5. Engagement/Empowerment(社会貢献・渉外活動)

●あらゆるビジネスパーソンに向けたLGBTQ+実践書

本書では、ビジネスパーソンをターゲットに、最低限知っておきたい知識から組織におけるダイバーシティ推進時の留意点、施策の提案までをご紹介。電通ダイバーシティ・ラボが10年前から取り組んできた知見を活かし、調査データや最新事例をふんだんに引用しながら解説しています。

そもそも性の多様性について知りたい入門者から、実際に職場でどんな取り組みをすべきかお悩みの人事担当者、DE&Iを事業として発展させていきたい方、あらゆる層にご活用いただける一冊になっています。

『図解ポケット ビジネスパーソンが知っておきたいLGBTQ+の基礎知識』
出版社:秀和システム
価格:1,210円(税込)
著者:伊藤義博(PRソリューション局)、木下舞耶(第1CRP局)、清水鈴(CRD局)、中川紗佑里(電通総研)、吉本妙子(PRソリューション局)
第0章「企業としてLGBTQ+領域に取り組む意義とは?」
第1章「聞くに聞けない! LGBTQ+基礎知識」
第2章「LGBTQ+を取り巻く社会の動きと世論」
第3章「当事者が抱える課題と各セクターの取り組み」
第4章「LGBTQ+の人が働きやすい環境づくり」
第5章「LGBTQ+とビジネス領域」
https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798065861.html


執筆者 吉本妙子

取材・文: cococolor編集部
Reporting and Statement: cococolor

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