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Oct.

2021

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13 Jul. 2021

日本の避妊は、ないものだらけ。「#なんでないのプロジェクト」代表・福田和子さん

中川 紗佑里
プロデューサー
中川 紗佑里

2021年6月、緊急避妊薬の薬局販売に関する検討が再開されました。緊急避妊薬は、性行為から72時間以内に服用することで、高い確率で妊娠を防ぐ薬です。世界の約90か国では薬局販売されているにも関わらず、日本で緊急避妊薬を手に入れるには医師の処方箋が必要。さらに、費用も6000円から2万円程度と高額です。

避妊をめぐる日本の状況を変えるべく、アクションを起こし続けてきた女性たちの1人が、「#なんでないのプロジェクト」の代表・福田和子さんです。福田さんは留学先のスウェーデンでの経験をもとに、このプロジェクトを始められました。

 

スウェーデンでの体験から始まった「#なんでないの」

「スウェーデンに来たら、日本との違いにびっくりすることがたくさんあって…。まず、薬局で緊急避妊薬が1500円くらいで普通に売れられていることに衝撃を受けました。あと、ピルをもらいに行ったら、色んな避妊法も教えてもらったんですけど、性教育とかちょっとかじってたはずなのに、どれも聞いたことなくて…。さっそく家に帰って調べてみると、スウェーデンが特殊なわけではなく、ふつうにどこの国でも使われてるものであることがわかりました。」(福田さん)

日本で生まれ育ち、「自分を大切に」という性教育を受けてきたと話す福田さん。しかし、スウェーデンでの体験を通じて、日本では自分を大切にする術がほとんど用意されていないことに気付いたと言います。海外の状況を知れば知るほど高まる、日本に対する「なんでないの?」という気持ち。スウェーデンから帰国した福田さんは、「#なんでないのプロジェクト」を始めました。

 

世界じゃ「ふつう」。日本にはないものだらけの避妊法

「これが一般的な避妊法と言われるものです」と言って福田さんが見せてくれたのが、下記の図。(筆者訳)アメリカ疾病対策予防センター(CDC)のウェブサイトでも紹介されているこの図には、さまざまな避妊法が効果の高い順に並べられています。

…あれ、なんとなく聞いたことはあっても、使い方がわからないものばっかり。それに、ほとんど日本ない!?

「これらの避妊具(避妊シールは除く)は基本的に、WHOが出している必須医薬品リストと呼ばれる、どの国でも病院を建てるならこの医薬品は網羅しておきましょうね、っていうリストに載っています。でも、日本ではこれらの大半が手に入らず、産科医の間でもあまり知られていません。それに加えて人工妊娠中絶にかかる費用が高額であることを国際会議のような場ですると、会場がザワつくんです。『日本にサンプル持って説明しに行こうか』って言ってくれるネパール出身の助産師さんや、自分事のように怒ってくれるガーナ出身の女の子もいました。」(福田さん)

 

避妊を考えることは、自分の体と向き合うチャンス

また、各国・地域別の避妊法の使用状況のデータも見せてもらいました。各国では多様な避妊法が使用されている一方で、日本では男性用コンドームの使用に偏っていることがわかります。

「日本の女性が、すべての選択肢を知った上で選んでいるのなら、それは尊重されるべきだと思うんです。だけど、そもそも選択肢がなかったり、いま日本でアクセスできる避妊法も高額だったりとか、本当の意味で個人の選択が大事にされているとは言いにくいのかなって。

それに、避妊法の選択肢が限られていることで、自分の体と向き合うチャンスを失っているとも思います。色んな避妊法を使ったことがある子たちに話を聞くと、人それぞれ自分の好きなものが違うんです。それぞれ自分でいろいろ試して、私はこれが一番いいかもとか、次これやりたいかも、みたいな選択ができるんです。方法によって効果が持続する期間も全然違うので、『あれ、自分は子どもが欲しいのかな』とか『それって何年後だろう』とか、考えるきっかけにもなります。」(福田さん)

 

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ

「My body, my choice」(私の体、私の選択)という、フェミニストのスローガンがあります。その考えの根っこにあるのが、「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(SRHR)という概念です。日本語では「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。

SRHRは、すべての個人が自分の「性」と「生殖」に関して自由に選択をすることを保障する、非常に重要な概念です。WHO(世界保健機関)をはじめとする国際機関では、SRHRは人が生まれながらに持つべき権利であるとし、各国政府にもそれぞれの国民にこの権利を保障することを求めています。

しかし、日本におけるSRHRの認知はそれほど高くありません。福田さんがこれからやりたいことの1つは、日本でSRHRという考え方をもっと広めることだと言います。

「少子化対策や女性活躍といった国や企業の都合が先にくるのではなく、一人ひとりの人生の選択や決定権といった『ライツ』に根付いた考え方が、もっと広まるようにしていきたいなあと思います。」(福田さん)

 

5歳から始まる「包括的性教育」

SRHRを一人ひとりが理解するために重要な役割を果たすのが、幼児期からの性教育です。「包括的性教育」が最近の性教育の潮流で、国際的なガイダンスとしては、福田さんも翻訳に携わられた、ユネスコの『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(オンラインで無料公開)というものがあるそうです。

「このガイダンスの中では、性教育は5歳から始まるのですが、まずは最も身近な人間関係である家族のことや、自分と他者の境界線、プライベートパーツ、NOの伝え方などから学びます。

日本で性教育というと、いわゆる性行為そのもの、性感染症、妊娠・中絶とか、そういうのを思い浮かべられる方が多いかもしれません。でも、このガイダンスの中だと、性的なことや二次性徴的なことはその一部でしかなくて、対等な人間関係の築き方や、人権の話、ジェンダーの話に最初に重きが置かれているんです。そういうベースがあって初めて、SRHRの話になっていくんですよね。それが日本の性教育からごそっと抜けてしまっている部分だと思います。」(福田さん)

 

おわりに

インタビューを通じて、とても印象に残った言葉があります。それは、「産むなら支援されるのに、避妊だと支援されない。女性にとってはどちらも一続きの人生なのに」というものです。日本におけるSRHRの現在地が、この一言に凝縮されているような気がしました。

産むことも、産まないことも権利。この考え方自体に反対する人は、今や少ないかもしれません。しかし、「産まないこと」が「産むこと」と同じくらい大切なこととして語られているかというと、はなはだ疑問です。「産まないこと」を支える具体的な方法や社会の仕組みについて、私たちはもっと積極的に議論していく必要があります。

 

■ 福田和子さんプロフィール

大学在学中に留学先のスウェーデンで、日本では、性教育や避妊法の選択肢の不足によって、誰もが性に関わる健康や権利を守れない状況にあると痛感。帰国後の2018年5月、『#なんでないのプロジェクト』をスタート。現在は 『#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト』共同代表も務める。スウェーデン・ヨーテボリ大学大学院公衆衛生修士課程修了。FRaU×現代ビジネス等に連載中。[翻訳]ユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス【改訂版】―科学的根拠に基づいたアプローチ』(明石書店、2020年)

取材・文: 中川紗佑里
Reporting and Statement: nakagawasayuri

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