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2024

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1 Nov. 2021

【レポート】高校生アイデアフェス#仲間と一緒に考える子宮頸がん

川村章子
メディカルコミュニケーション プロデューサー/イベントコーディネーター
川村章子

ラベンダーリングが主催する「高校生アイデアフェス#仲間と一緒に考える子宮頸がん」が8月21日・22日に開催された。このアイデアフェスはワクチンの接種対象年齢でもある高校生自身が「子宮頸がん」のことを考えるきっかけをつくるということを目的としている。全国より43名が参加し、11チームに分かれて子宮頸がんをテーマに社会課題(検診率が低い、病気に関する知識が足りない等)を解決するためのコミュニケーションアイデア(ポスター、ステッカー、デジタルコミュニケーション等)を出し合った。オンラインで実施されたその様子をお届けする。

■インプットセッションと子宮頸がんにまつわる課題
参加した43名は7月末に事前のインプットセッションに参加している。そこでは、6つのテーマのセッションが行われた。

43名がこれらのセッションに参加し、まずは子宮頸がんについての理解を深めた。子宮頸がんについて知り、子宮頸がんにまつわるどんな課題があるのかをこの時間で発見してもらう。性の話題を避けることはできないため、多感な高校生には恥ずかしいと感じる内容もあったかもしれない。最初に産婦人科医の遠見才希子先生より「性への関心はそれぞれ。自分のペースで参加してください。」と配慮があった。HPVのこと、ワクチンのこと、検診のこと、性教育など様々な角度から子宮頸がんの情報がインプットされた。そしてこの6つのインプットセッションからいくつかの課題がみえてきた。

■課題を解決するために
インプットセッションでみえてきた課題をどうやって解決するか。8月21日・22日の2日間では、各チームで課題を整理し、とくに重要だと思う課題について「誰に?」「何を?」「どんな風に?」「いつ?」「どこで?」伝えていくのかを話し合いメッセージ・1ビジュアルといったアウトプットを作り上げる。各チームにはメンターとして広告会社のクリエーターがサポートした。

※高校生がつくることのできるポスターやステッカーなど。ルールとして著作権や肖像権に考慮し、ホームページ等にある画像を勝手に使用しない。フリーの素材の使用、自分たちで撮影、作画は可能。高校生が貼れるもの、投稿できるものとする

同じ高校の仲間と参加したチームやはじめて会うほかの地域の高校生で編成されているチームもある。子宮頸がんというと女子高校生の参加と思われるかもしれないが、男子高校生も参加している。将来医療に関する仕事につきたいと参加を決めた高校生もいた。オンラインでの議論のため、スムーズにおこなわれるのだろうかと心配しながらみていたが、そこはさすが高校生だ。すぐに連絡先を交換し、共通のツールを駆使しながら、活発な議論が行われた。

ここで高校生が発表したものをいくつか紹介したい。

チーム名:PASSION FURUIT
その判断は、一生もの。 Your Choice, Your body.

1つ目はPASSION FURUITというチームが作成したもの。
子宮頸がんワクチン接種対象年齢の小学6年生~高校1年生の女性にむけて「正しい情報を基に、自分自身について考えてからこそ、自分にとって最適な判断ができる」ということを伝えるために作成された1ビジュアル・1メッセージである。使用した色にも説明があった。黒は冷静・真剣といった印象を与え、さらにジェンダーニュートラルといったことまで意識して作られている。QRコードを読み込むと厚生労働省のホームページが表示される工夫もされていた。

チーム名:CRLS
(Construct/Revision/Liberty/Smileのそれぞれの頭文字)
あなたにとって正しい選択、何ですか?
もっと知ろう、そして選ぼう。子宮頸がんワクチン

2つ目はCRLSというチームが作成したもの。
「親世代の間違った情報の理解によって、高校生の自分たちがワクチン接種をするかどうかを選ぶ自由を失っていることが課題」と感じ、学校で保護者向けに配布するものとしてつくった1ビジュアル・1メッセージである。高校生が子宮頸がんワクチンを接種するためには、親の同意が必要である。しかし、親が決めるだけではなく、子宮頸がんワクチンをうけるかどうかは正しい情報を知ったうえで、親と子が一緒にワクチンに対する理解を深めて話し合いをして決めるべきであるという想いがこめられている。岐路にたっているイラストはジェンダーバランスも考慮されている。

■Sexual and Reproductive Health and Rights (SRHR)
SRHRは日本語で「性と生殖に関する健康と権利」と訳される。これは自分の意思が尊重され、自分の体のことを自分自身で決められる権利である。今回紹介した2つのチームのメッセージはSRHRにつながるテーマである。高校生が子宮頸がんワクチンを接種するためには親の同意が必要ではあるものの、当事者である高校生自身も子宮頸がんを正しく理解し、自分自身で考えて選択するということの重要性を発信している。以前cococolorでもとりあげた「子宮頸がんかるた」を作ったLumiere(品川女子学院高等部3年)の彼女たちも同様だ。

参考記事:Lumiere を取材した記事はコチラ

参考記事:品川女子学院理事長の漆紫穂子さんを取材した記事はコチラ

子宮頸がんワクチン接種を推奨するということではなく、子宮頸がんを「理解」し、自分ゴト化として考え「選択する」ということが重要である。しかし、親と相談するにも、自分自身で考えるとしても、適切な情報がなければ選択をすることすらできない。高校生が子宮頸がんの情報にふれる機会があまりにも少ない。発信されていたとしても、ほとんど届いていないのが現状である。

■#仲間と一緒に考える子宮頸がん
高校生アイデアフェスは高校生自身が「子宮頸がん」のことを考えるだけではなく、社会にある課題を考えるというきっかけもつくった。様々な課題に向き合い43名の高校生が考えたアイデアはどれも素晴らしい内容だった。SNSの活用やPTA新聞への掲載など発信方法にも高校生ならではの目線や工夫があった。すべてを紹介することはできないが、最後に高校生たちが考えたメッセージをいくつか届けたい。

「#検診をうけるだけで救える命がある」
(チーム名:ピース)

「話していいんだよ、性のこと。だって家族だもの」
(チーム名:Spread)

「男性諸君‼本当にそれでいいの? 男性が子宮頸がんの知識を得ることはパートナーを守ることにつながります」
(チーム名:ペンペンチーム)


これらの高校生のメッセージをどのように感じるだろうか。
子宮頸がんにまつわる社会的課題は「検診率の低さ」「性教育」「SRHR」「ワクチン接種」「パートナーの理解」など多岐にわたる。新学習指導要領(中学校及び高等学校の保健体育科)には「がん教育」が明記され、中学生は2021年に完全実施、高校生は2022年度入学生から年次進行で実施とされているが、高校生が正しく理解し、自分で判断や選択できるように情報をしっかり届けるということは、学校でのがん教育のみならず、家族、自治体、企業などが取り組むべき大人へ課せられた宿題なのではないだろうか。

「高校生アイデアフェス#仲間と一緒に考える子宮頸がん」は、高校生だけではなく、大人である私たちが高校生から気づきをもらい、あらためて社会課題を考える機会を与えてくれた。11月は子宮頸がんの啓発月間である。今回アイデアフェスに参加した高校生のように、予防、検診、がん教育そしてSRHRなど、様々な角度からぜひ「子宮頸がん」について考えてみてほしい。

※参考:高校生アイデアフェス サイト

取材・文: 川村章子
Reporting and Statement: akikokawamura

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