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27 Jan. 2022

【レポート】MASHING UP Conference Vol.5 『街のかたちが変わる』

徳永栞
プランナー
徳永栞

「RETHINK, REBUILD. Building Sustainable System for All ―これからの続けられる社会とは―」をテーマに、MASHING UP Conferenceが11/19に開催されました
(冒頭画像 ⒸMASHING UP)。

MASHING UP で実施された20以上のセッションの中から、今回は「街のかたちが変わる」というセッションを取り上げます。
慶應義塾大学 環境情報学部教授 / ヤフー CSOの安宅 和人さん、隈研吾建築都市設計事務所の松長 知宏さん、東邦レオ 代表取締役社長の吉川 稔さん、モデレーターとしてメディアジーン MASHING UP編集長 / メディアジーン執行役員の遠藤 祐子さんの4人が参加されました。

これからの街のかたちはどうなるのか、街に住む人の意識・行動はどのように変化していくのか、についてディスカッションが実施されました。さらに、議論を重ねる中で、「街」のみならず「社会」にまでテーマが広がったことも本セッションの大きな特徴です。

リモート時代にもつながることができる街?!

まず、松長さん・吉川さんから地球OS書き換えプロジェクトについてご紹介がありました。

現在の日本は、いくつかの都市に機能が集中しており、街にある建築の多くはコンクリートでできています。本プロジェクトでは「いまこそ、地球のOSを書き換えよ」を掛け声に、自律分散した新しい街のあり方を生み出すことに取り組んでいます。
2021年11月には、東京都の大手町、北海道の東川町、大阪府の中津、香川県の父母ヶ浜の4か所をつなぎ、リモート環境であっても人とのつながりを創出できるかを実証実験しました。
各拠点のテーブルに他の拠点の様子が写るモニターを設置し、あたかも長い1つの机を囲んで各拠点の参加者がコミュニケーションをしているような「ロングテーブル」を実現しました。
本プロジェクトでは、離れた場所にいても同じものを食べたり、自分が食べていたものを他の拠点の人に翌日贈ったり、リモート下でも参加者同士の経験共有によりコミュニティとしてのつながりが生まれたと話しています。

(ⒸMASHING UP)

街のあり方にもリスクへの備えを~密から疎へ~

続いて、安宅さんから現在の街のあり方についてお話がありました。

現在の日本は都市集中型ですが、このあり方はスケール則の観点から言えば「最強」だそうです。道路などのインフラを整備するには、分散型の街よりも集中型の街の方が、コスパが抜群に良いためです。

その一方で、集中型の街には災害・パンデミックに脆弱です。
2019年に発生した台風19号では、大雨により関東・東北地方を中心に計140箇所で堤防が決壊(出典:内閣府「台風19号等の概要」)し、首都圏においても甚大な被害がもたらされました。また、新型コロナウイルスの影響により、私たちは密を避け、他者と距離を取ることが求められています。

上記状況により、都市のあり方が見直されています。いつ発生するか予測はできないが、将来必ず起こるリスクへの備えができていない現在の一極集中型の構造を、早急に自律分散型に変える必要があると安宅さんは発信されました。

しかしながら、街を密から疎に変えることは難しい問題だとも話しています。一極集中型から自律分散型を実施するには、インフラ整備のコストなど、課題が山積みだとも話しています。

街を密から疎に転換させるためには、私たちはどのようにしたらいいのでしょうか。

(ⒸMASHING UP)

自由に自分の街をつくる意識を持つ必要

吉川さんは複数のコミュニティを持ちながら分散して住むことについてお話されました。

ただ複数の拠点をつくるのでなく、各拠点でコミュニティを持つことが大切だと発信されました。仲良くしたり、時に喧嘩したり、人は他者とのコミュニケーションを通じて、自分の拠点となるコミュニティを形成していきます。そして、そのコミュニティに所属しながらどう生活していくかが大切になると発信されました。

さらに、都市は「機能」を主軸に計画されていますが、「人」をベースに街が存在するべきと話しています。
街を一部の人がつくるのではなく、一人一人が、自分自身が街をつくるという意識を持って自ら実験をしながら街をつくることが大事だと述べられました。

(ⒸMASHING UP)

街への関わり方をトランスフォーム
~受動から能動へ~


セッションを終え、新たな街をつくるためには、街に対しての人の関わり方を変える必要があるのではと考えました。具体的には、受動的から能動的に街への姿勢をトランスフォームせねばならないと思います。

今までは、デベロッパーや行政など一部の企業や組織が街をつくり、人びとはただそこで暮らすのが一般的でした。しかし、一人一人が今後の街の姿を考えて行動し、街づくりに積極的に関わる必要があると感じました。


街を密から疎へ変えることは安宅さんが仰っていたように、本当に難しい問題だと思います。ですが、どんなバックグラウンドを持っていても、みんなが街づくりに参加することで、新しい社会のあり方が生まれるのではないかと思います。

 

取材・文: 徳永栞
Reporting and Statement: shioritokunaga

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