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3 Dec. 2015

障害のあるなしに関わらず、ごちゃまぜにサッカーを楽しもう!-メリメロが拓くフランクな社会-

障害者サッカーというと、どんなものをイメージしますか?障害者と一緒にプレーするサッカーとは……?障害のあるなしに関わらず、ごちゃまぜにまざってサッカーを楽しむ場を提供することをミッションに活動するのが、任意団体メリメロです。メリメロとは「ごちゃまぜ」を表すフランス語。それは例えば、視覚障害者サッカー(ブラインドサッカー)を、聴覚障害者も一緒にプレーするといったことを意味します。一体そんなことが本当に可能なのでしょうか?そこに生まれる世界とは?創設者の中村祥子さんにお話を伺いました。

社会福祉をフランクにしたい
中村さんは生まれつき耳が聞こえなかったことから障害・高齢者福祉の分野に興味を持ち、高校でホームヘルパーの資格を取得。「障害のある人とない人との壁を低くして、社会福祉をもっとフランクなものにしたい」という気持ちを持つようになりました。国内唯一の視覚・聴覚障害者専用の大学、筑波技術大学に入学した後にフットサルに魅了され、デフフットサル・チームの選手となります。そんな折、チャリティーフットサルを通じて国際協力を行う学生団体WorldFutと出会ったことをきっかけに、サッカーの持つ、いろいろな人たちを惹きつける力について、強く実感するようになりました。

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(筆談用のタブレットを使い、インタビューに応える中村さん)

日本サッカー協会に選手登録している人の数は、約100万人。競技志向者だけでも約100人に一人もいるほど、サッカー、フットサルはポピュラーなスポーツです。サッカーなら多くの人たちが興味を持っている。サッカーには障害のある、なしを超えて人をつなぐ力がきっとあるはず。そんな想いから、中村さんは、サッカー、フットサルで多様な人をつなぐ場づくりをしたいと考えるようになりました。

 ちょうどその頃、公益財団法人日本サッカー協会(JFA)に、「障がい者サッカー協議会」をつくろうという動きが起こりました。各障害者サッカーの協会が連携を進めようという中、自分と異なる障害を持つ人のサッカーについてはあまり知らない当事者が多いことに、中村さんは気づきます。互いの関係性を深めることは、協会や理事だけではなく、プレーヤー当事者にとっても大切なこと。そんな想いから、中村さんは、フットサルを通して知り合った仲間たちと共に、メリメロを設立したのです。
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障害も多様。サッカーで壁を超えるチャレンジ
障害には視覚・聴覚・精神などさまざまなタイプが存在します。例えば、アンプティ(上下肢切断)、ブラインド(視覚障害)、CP(脳性麻痺)、デフ(聴覚障害)、FID(知的障害)などです。当然ながら、それぞれの障害によって、サッカー、フットサルのルールや、プレーを支える道具も変わってきます。

PC230991          (アンプティの杖などを使っての体験風景)

例えば、メリメロでもよく体験コンテンツを実施する、ブラサカ(ブラインドサッカー)は、全盲の人がアイマスクをつけ、まったく見えない状態で、シャカシャカと鳴るボールやコーラーと呼ばれるガイド役の声など、聴覚を頼りにプレーする競技です。これを、耳の聞こえないデフの人と一緒にやってみることに、メリメロは挑戦します。デフの人にアイマスクをつけてしまったら、情報を得る手段がなくなってしまうと思いませんか。けれどもメンバーの間に「この場にデフの人も一緒にいる」ということや「デフの人にはボディ・タッチなどでサポートしよう」ということが共有されると、互いを思い測りながら、プレーを成立させることができるのだと、中村さんは語ります。

IMG_0480(デフの人もブラサカ体験に挑戦:横の人がプレーヤーを支えている)

 一般的なメリメロのイベントでは、アンプティ(上下肢切断)にはクラッチ(杖)、ブラサカはアイマスク、デフは耳栓、CP(脳性麻痺)には独自ルールの組み込みなど、一定の道具やルールを用意し、障害のない一般の参加者も体験コンテンツに参加できる体制を整えています。そして、参加メンバーの構成に応じて、臨機応変に、柔軟に対応を考えるため、試合開始10分前にルールを変更するようなことも少なくありません。ウォーミングアップでは「手繋ぎ鬼」という、鬼と手をつないで別の人を捕まえに行くというコミュニケーション・ゲームを通して障害のあるなしに関わらずコミュニケーションが取れるきっかけを作るなど、参加者を理解し合える環境づくりが工夫されているのがメリメロの大きな特徴で、これが、コミュニケーション能力を高めることにもつながっているのだとか。確かに、多様性ある環境-なかでも特に、スポーツのように即座の対応を求められる状況には、一体感を強くし、コミュニケーションを高める効果があると言えそうです。

 初めて参加する人からも「障害のある人との接し方を学ぶことができた」「障害のある人でもサッカーを普通にやっていることにインパクトがあった」など好評で、主に口コミで人気が広まり、子連れで参加する人も多いのだとか。

melimelo-no01_024           (親子で参加する人も多い)

 そんなメリメロの皆さんが今後目指しているのは、この活動を地方でも広めることです。「メリメロの持つノウハウを、地方の団体に共有して、それぞれの地方でこういう活動が広がって欲しい」と語る中村さん。12月5日にはこれまで最大級となるイベント「メリメロフットサルフェスタ2015」をMIFA Football Park(東京都江東区)にて開催します。皆さんも是非、メリメロの世界を、体験してみませんか?

 中村祥子さん:
メリメロ代表。大阪出身。生まれつき聴覚に障害を持つ。2013年12月から国立スポーツ科学センター(JISS)の職員として女性アスリートのサポート業務に従事。プライベートでも「聴覚障害者があっても歌舞伎を楽しみたい!」と台本を借りて舞台鑑賞するなど何にでもチャレンジする姿勢を持ち、スポーツ以外の世界でも「メリメロ」精神を発揮。
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参考:
メリメロ 
メリメロフットサルフェスタ2015 (2015年12月5日)
 

 

取材・文: co-maki/今井麻希子
Reporting and Statement: co-maki-imaimakiko

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