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26

Apr.

2024

interview
20 Dec. 2022

TIME誌の「次世代の100人」に選ばれた社会課題に取り組む大学院生、能條桃子さんにインタビュー

石井 萌
ソリューション・プランナー
石井 萌

若者の投票率を上げる活動や男女平等の追求のために女性やジェンダーマイノリティの候補者を支援する活動が評価され、米国TIME誌の「次世代の100人」に選ばれた、大学院生の能條桃子さんに、女性・若者のリーダーとして活動を積極的に行う背景をお伺いしました。

 

米国TIME誌の「次世代の100人」に選出されたと聞いたときはどう思いましたか?

とても驚きました。自分が選ばれたというよりは、若者の政治参加の低さやジェンダー不平等が、世界の中でみても光が当たるポイントであったと考えています。

 

ジェンダー問題に対する取り組みを進めることになった原体験は何でしたか?

大学生になり政治系の団体に加入した際、どの団体も男性が代表でメンバーも男性ばかりなことに違和感がありました。その後、自分がNO YOUTH NO JAPAN(以下NYNJ)を創設したことによって女性が多く集まりました。

それまで女性が集まりづらいのは、そもそも女性が政治に興味がないからと言われていたのですが、NYNJを立ち上げたことで興味がないわけではないと確信しました。元々の男性を中心としたコミュニティの作り方だった故に女性が入りづらかっただけで、女性でも政治への関心があり、課題意識を持つ人が一定数いるのだと思いました。

NO YOUTH NO JAPANのInstagram

 

日本社会では、女性リーダーが少ないと言えます。政府は2020年代の可能な限り早期に女性の管理職の割合が30%になることを目標としていますが、現状は9.4%とまだまだ目標には遠いです。そんな中で、能條さん自身がリーダーを務めているからこそ大変なことはありますか?

現在活動している団体はメンバーに女性が多いので「女性だから大変」ということはないです。しかし、登壇者として話す際に自分しか女性がいない、女性代表として話すことはあります。最近は自分しか女性がいなかったら登壇しないようにしています。

 

登壇しないようにしているのは、なぜですか?

周りが男性で自分1人が女性という状況で「だから多様ですよね」と言われることに対して違和感を抱いています。また、男性は、男性代表として話す必要はありませんが、女性は女性の代表としての発言を求められます。自分の言いたいことではなく、「ここでこう言っておかなきゃ」ということが優先され、本当に自分が言いたいことではなくなることに対して違和感があります。

 

ご自身が活動する中で、こんなサポートがあればいいなと思うことはありますか?

男性・女性どちらも一緒に居心地よく活動していくためには、女性だけでなく男性側の学びも必要不可欠だと思っています。女性から男性に教えるという形だけではなく男性から男性にジェンダー問題について教えるという関係も築いていけると良いと思います。一番は、多様なロールモデルがほしいです。活躍する方々の多くは「ママでも頑張ってます!」という方が多いため、仕事をバリバリ頑張るという方だけでなく、仕事と家事の両立は厳しいから家事はさまざまなサービスに頼っています等の多様な仕事観が増えてくると、より様々な人がイメージをしやすくなると思います。

来年の統一地方選に向け、女性候補を増やすために立ち上げたFIFTYS PROJECTの記者会見の様子。(能條さん:写真右から2人目)

 

様々な障壁がある中、リーダーを務めるうえで「こういう経験があるから頑張れる」などといった支えになっているもの、はありますか?

自分が背伸びしてでもロールモデルとして存在することで、同世代や次の世代の方たちをエンパワーメントできていると実感する時です。基本的には自分がやりたいことのために活動をしていますが、他の人のためにもなっているのだと思えると続くモチベーションになります。

 

現在、大学院生として修論を執筆しながら様々な活動をされていると思うのですが、将来の展望、こんな社会にしていたい・こんな風になっていたいという目標はありますか?

まずは、ロールモデルが増えた方がいいと思っています。現状では「若者・政治・女性」でいうと、私が呼ばれることが本当に多く、一人が抱えないといけない量が増えて、できることが少なくなってしまうので仲間を増やしていきたいです。今、活動がとても楽しいです。いつかは今の日本の政治が良くなる、希望がもてる体験を創っていきたいです。

 

「今、活動が楽しい」と言えるのはなぜでしょうか?

活動してなかった時と比べると、今の方が生き生きと社会の中で息を吸うことができていると思います。活動をしていると社会がよくなっていくというのが見えるため希望を持つことができます。また、思ったよりも仲間がいるということに気づいたことも大きいです。

NO YOUTH NO JAPANでの活動の様子(能條さん:写真一番右)

 

能條さんと同年代の方で、リーダーになる一歩が踏み出せない人、リーダーだけど色々悩んでいる人、またはジェンダーの取り組みをしようとしている人がいらっしゃると思います。そんな同世代へメッセージをお願いします。

代表やチームのリーダーになりたいかは選択で良いと思います。リーダーシップをとることはリーダーじゃなくてもできます。積極的に機会を獲得するのが大事だと思います。とりあえず「やりたい」と口に出すこと、そして悩んでいる場合はぜひ一歩踏み出してみてください。口に出して発信していると意外と仲間が集まると思うので、ぜひ仲間を作ってほしいです。

 

インタビューを終えて

インタビューを通して、男性は男性代表として話を求められないが自分は女性代表として話を求められるから自分が言いたいことが中々話せないという話が印象的でした。能條さんのように、会議などで「女性代表として」と役割を求められている方は少なくないと思いますが、実際に違和感があるということを聞かなければなかなか気づくことができない視点でした。

多様性を実現するために、様々な取り組みが行われていますが能條さんの話にもあったようにいまだにロールモデルに多様性があまりないということも現状だと思います。これまで先輩方の「育児も仕事も頑張ってきた」というお話を聞き、尊敬する一方で自分が同じライフスタイルを実現できるか、と疑問に思いロールモデルと自分とのギャップに悩んでいました。しかし、ロールモデルの多様性のなさは私1人の違和感ではなく、能條さんも含めて同世代の方が共通して持つ違和感なのではないのでしょうか。例えば、子どもを持つ意志がない方にとっては、育児も仕事も頑張っている!という方の話よりも子どもを持たない選択をした方の話の方が参考になるかもしれません。もし私が子育てをしながら働くとした場合、どちらも100%で頑張るということは難しいと考えているため、子育てをしながら様々なサービスを活用して自分の体調やできる範囲で仕事との両立している方の話を参考にしたいと考えています。

特定のロールモデルの方以外のお話を聞く機会も重要ですが、多様なロールモデルをそれぞれに部分最適で参考にするということも良いかもしれません。例えば、仕事はAさんのこの部分を参考に、私生活はBさんのこの部分を参考にする、というように自分の目標や将来像に沿って部分的に参考にするという考え方であれば、自分らしい両立を見つける方法になると思います。

今回のインタビューは、人を性別や年齢などのラベルで捉えることを控え、一人ひとりどういう人なのかということを意識しようと改めて自分自身の多様性への向き合い方について考える機会となりました。これから社会を作っていく若い世代が、まずは自分ができることに1個ずつ取り組んでいくことがより多様性のある社会の実現につながると思います。

 

<プロフィール>
能條桃子、1998年生まれ24歳。
2019年、若い世代の政治参加を促進するためにInstagramで政治の情報をわかりやすく発信するNO YOUTH NO JAPANを発足。
2023年の統一地方選挙に向けて、ジェンダー平等実現を目指す20・30代の女性やジェンダーマイノリティを支援するFIFTYS PROJECTも開始。

取材・文: 石井萌
Reporting and Statement: megumiishii

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