オフィスのUD、考えていますか? アクセシビリティーと情報保障。
- アートディレクター/UDプランナー
- 植田憲二
■多様性の時代、オフィスではユニバーサルデザインはますます大切なものに。
オフィスには若い世代からシニア世代、また様々な障害者や外国人、LGBTQ+の方たちが働いています。そして会議室フロアのような社外から訪問されるお客様が多いところでは「誰もが平等に情報が得られるようにする配慮」が求められています。オフィスには案内サインや防災サイン、会議室やトイレなどの設備がありますが、本回ではユニバーサルデザイン(以下:UD)から見た情報保障について実際の施工例をもとにお話ししたいと思います。
例えばフロアマップなどの高さは健常者(男性・女性)や車イスの方でも無理なく見える高さとして私たちは約153センチをセンターにしました。また細かい情報はマップの下にまとめ、車イスの方の目線近くにデザインしました。
■みんなの会議室:アクセシブルミーティング・ルーム
障害者など多様な人たちが参加して会議をするときのミーティングルーム。情報保障の設備がある会議室は企業の利用頻度によるところではありますが、自治体などの公共施設では一つ以上あると助かります。
出入り口は車イスユーザーでも使いやすいように押しても引いても開く「双方向開きドア」や「大きなスライドドア」を採用しています。「未来スピーカー」は難聴者をはじめ聞き取りにくいと感じている方に特殊な機構でマイクや映像からの音を広範囲で聞こえやすくするスピーカーです。「UDトーク」は参加者の発言をリアルタイムで文字に起こしモニターやスマホで確認できるアプリケーションです。
■「だれでもトイレ」障害者の方が安心して利用できるように。
多機能設備のトイレは病院のような雰囲気を与えてしまうこともある。「だれでもトイレ」は室内も水色に統一して明るくリラックスして利用できる空間にしました。また介護者が付き添う場合は足元まで降ろせる隔離カーテンで利用者のプライバシーに配慮しました。使用中のサインライトが点灯しますので利用者や外で待つ介護者にも安心です。
■サインは見やすくが基本。 UDフォント「みんなの文字」を使用
会議室のサインは全てユニバーサルデザインフォントを使用しています。UDフォント「みんなの文字」は視力の弱い人にも読みやすい・誤読しないように開発された文字です。数字などのつくりが大きく遠くから見てもわかりやすい文字です。
サインの表示場所は照明や外光の入り方や反射などもあり見えづらい場所もあります。またサインを付ける壁の素材も金属・ガラス・塗装面と違うところもあるかもしれません。事前の確認によって文字の色や大きさを検証することが大切です。
■障害者の目線で考える「防災対応」
オフィスのUDを考えるとき最も重要なことは災害時の対応を準備しておくことかもしれません。訪問客には車イスの方や視覚・聴覚障害で不便を感じている方、日本語がわからない外国人の方など多様な人がいることを想定します。防災ピクトも避難誘導サインのひとつとして有効です。
大きな地震や火災が起こったときにどうアテンドするか事前に社員が心得ておくことが大切です。日頃の防災訓練や多言語対応した避難通路マップの準備も必要になってきます。避難無線(館内放送)も外国人の方には日本語だけだと意味が通じない人もいるかもしれませんし、そもそも聴覚障害者には放送は意味を持ちません。課題はいくつもあります。
大手百貨店でさりげなく店内に設置された避難誘導旗を見つけました。きっと災害時に店員の方が誘導できるようになっているのでしょう。アナログな方法でありながら素晴らしいアイデアだと思いました。さあ皆さんも自分のオフィスのことを想像して考えてみてください。きっといいアイデアが浮かぶはずです。
UDでオフィスを考えること。これはそのまま社会の課題を考えることと同じだと思いませんか?
制作・文:植田憲二(電通ダイバーシティ・ラボ 「見やすさプロジェクト」)
お問い合わせ https://dentsu-diversity.jp/contact/
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