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18 Feb. 2020

編集部が行く!パラスポーツ観戦記_vol.9パラテコンドー

2020年1月26日、「サンマリエ カップ」(東京2020パラリンピック競技大会の日本代表選手選考会)が開催されました。テコンドーは、バドミントンと並んで、東京2020大会で初めてパラリンピック正式競技として実施される競技です。世界パラテコンドー選手権がはじめて開催されたのは、2009年。競技自体が比較的新しく、東京2020大会での実施が決まってから日本国内における強化が進められるようになったため、ここ数年で競技レベルが急成長していると言えます。初めてパラテコンドーを観戦した筆者が、会場で感じた競技の魅力をお伝えします。

 

 

スピーディーな足技の連続に釘付け

 

パラテコンドーには、上肢に障害のある人が行う「組手(キョルギ)」と、知的障害のある人が行う「型(プムセ)」がありますが、今大会では「組手(キョルギ)」のみ実施されました。

テコンドー自体が「足のボクシング」と言われるほど足技を主体とした格闘技で、パラテコンドーも基本的なルールは健常者とほとんど同じです。大きな違いとしては、手技である「パンチ」が得点にならないことと、頭部への攻撃が反則になることです。足を使った「蹴り技」のみで、相手の装着している胴プロテクターを攻撃します。胴プロテクターに蹴りの衝撃が伝わると、「シャキーン」という効果音とともに、得点板に得点が反映されていきます。この時、力が弱いと得点にはなりませんので、正確で力強い蹴りが求められます。

通常の有効な蹴りが決まると2点、180度の回転が加わった後ろ蹴りが決まると3点、後ろ蹴りから軸足を入れ替えて360度の回転蹴りが決まると4点のポイントが入ります。2分間の試合を3ラウンド行い、合計得点が高い方の選手の勝利となります。

 

通常の有効な蹴り

180度回転が加わった後ろ蹴り

 

回転蹴りの種類によってポイントが変わるのは、パラテコンドー独自のルール。飛びながら攻撃を仕掛けることもあり、ダイナミックでスピーディーな足技の連続に、思わず釘付けになってしまいます。

 

華麗な守備にも注目

 

パラテコンドーは、残っている上肢の長さ等によって、障害の程度が最も重いK41から最も軽いK44まで、4つのクラスに分かれています。腕は胴を守る時に重要ですので、選手一人ひとりの特性を把握して、いかに自分の隙を作らず、相手の隙を突くかが勝敗を分ける鍵になります。

 

相手が攻撃を仕掛けてきた直後の隙を狙って得点を決めるシーンも多く、格闘技ならではの一対一の駆け引きも見どころ。また、一瞬の隙を突く攻撃も爽快ですが、抜群の反射神経で攻撃を避ける姿も華麗で見ごたえがあります。

相手の攻撃にいかに素早く反応できるか、避ける技術にも注目です

 

東京2020のドラマは始まっている

 

パラテコンドーの種目は、男女それぞれ体重別に3階級に分かれています。今大会、東京2020パラリンピックの出場権をかけて試合が行われたのは、K44(K43)クラスの男子-61Kg級と、同じくK44(K43)クラスの男子-75Kg級の2種目。K44(K43)クラスの女子+58Kg級の太田渉子選手は、エキシビションマッチとして行われました。

女子+58Kg級 太田渉子選手

 

男子-61Kg級は、世界ランク5位(K43)の阿渡健太選手、世界ランク9位(K44)の伊藤力選手、世界ランク11位(K43)の田中光哉選手による三つ巴の戦いでしたが、最も世界ランクの低い田中選手が大金星を上げて見事優勝という結果に。

田中選手はつい昨年まで-75Kg級で戦ってきたものの、体を絞って-61Kg 級に転向したそうです。

試合後に抱き合う田中選手(奥)と伊藤選手(手前)

 

男子-75Kg級は、世界ランク8位の工藤俊介選手が世界ランク35位の星野佑介選手を倒し、見事優勝しました。

 

大応援団に祝福される工藤選手

 

選手の所属企業や道場などからも多くの応援が駆けつけていて、会場は大声援に包まれていました。自国開催のパラリンピックで初めて用意されることになった舞台が、パラテコンドーの選手、ファン、競技や選手に関わる人たちにとって大きな意味を持つものであることが伝わってきて、初観戦ながらに胸が熱くなってしまいました。

 

 

進化が楽しみなパラテコンドー

 

次々と繰り出される足技の数々、一瞬の隙を狙う駆け引きと、試合中はスピード感溢れる展開から目が離せないパラテコンドー。歴史の浅い競技であるため、今第一線で活躍している選手たちが辿っている道がそのまま競技の歴史を作っているように感じられ、パラリンピックではどんなドラマが見られるのか、その後どのように競技が発展していくのか、今後の進化が今からとても楽しみになりました。

 

執筆者 杉浦愛実

取材・文: cococolor編集部
Reporting and Statement: cococolor

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