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19

Mar.

2024

interview
19 Sep. 2018

川辺さん、こども哲学ってどんなものですか。

半澤絵里奈
編集長 / プロデューサー
半澤絵里奈

“哲学”と聞くと、歴史的な哲学者の名前や終わりの見えない議論が頭をよぎり、正直小難しい印象をいだく。一方で、『自信をもてる子が育つこども哲学』の著者であり、何度かお会いしたことがある川辺洋平さんのこども哲学に関する活動を観察していると難しさは全く感じないどころかとっても楽しそうだ。

こども哲学とは、実際どのようなもので、どうやって対話が成立するのだろうか。こども哲学という体験が社会や子どもたちにどんな影響を与えるのだろうか。疑問が溢れて止まず、著書を読ませて頂き、ついに川辺さんにインタビューをさせて頂くことにした。

第1回目では、こども哲学とはどのようなものなのかについてお送りいたします。

 <川辺洋平さんプロフィール>
特定非営利活動法人こども哲学・おとな哲学アーダコーダ代表理事。
1983年生まれ。東京学芸大学教育学部を卒業後、イラストレーターとして活動開始。2007年に株式会社電通入社。その後、出版社にてクリエイティブ・ディレクターとして勤務し、2014年に独立。NPO法人こども哲学・おとな哲学アーダコーダを設立し、現職に至る。保育士、幼稚園教諭、小学校教諭、中学校教諭(美術)、高校教諭(美術)の資格を持つ。著書『自信をもてる子が育つこども哲学』(ワニブックス)、分担執筆に『哲学する保育原理』(教育情報出版)。その他、毎日小学生新聞、ハフィントンポストにも連載を持つ。

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こども哲学とは

こども哲学とは、その名の通りこどもが哲学的なテーマについて意見を交換し、対話することを楽しむ活動だ。哲学的なテーマについて、自由に意見を交換し、ともに考える哲学対話は、街中では「哲学カフェ」と呼ばれて大人同士の間で広く普及し始めているので、知っている人も多いだろう。そうした哲学対話を子どもと一緒にする活動を総称してPhilosophy for children(p4c=こども哲学)と呼ぶ。現在p4cは道徳教育の一環として学校の教科書にも記載されるまでに広がりを見せており、こうした広がりを地域や家庭の人間関係にも広げていこうというのが「こども哲学」で現在、川辺さんがチャレンジしている領域だ。


こどもから問いが出てくるまで待つ

川辺さんの話を聞いているうちに、哲学的なテーマとはいったいどのようなものなのだろうかという疑問が湧いた。哲学対話のテーマが一覧になっていれば、それを子どもにぶつけてみたいところだ。そう思って質問してみると、意外な答えが返ってきた。

「こどもから問いが出てくるまで待ちます」(川辺さん)

たとえば、川辺さんの主宰しているこども哲学教室では、参加する子どもたちに「何をしたい?」と意見を聞き、子どもたちのしたい遊びをひとつひとつ実現していく。そうやって何度も遊んでいるうちに、遊びの中で、ふと思ったギモンや不思議について、子どもたちが話せるような関係ができてくるのだという。

「こどもって非常に警戒心の強い、素直な人だと思うんです。」(川辺さん)

川辺さんが大事にしているのは、『ここは安全な場所、自分の真剣な話を聞いてもらえる人たちだ』と思える環境や人間関係をつくること。そうすれば、子どもたちの口から、不思議に思ったことへの素直な気持ちが出てくるようになる。子どもたちから出てきた問いが、大人も答えに窮するようなギモンだったら、それが哲学対話を始める合図だというのが川辺さんの答えだ。

こども哲学に参加するこどもたちや周囲のおとなたちの様子は、映画『こども哲学~アーダコーダのじかん~』(52分/日本語・英語字幕)というドキュメンタリー作品となって第13回シカゴ・ブローアップ・アートハウス国際映画祭でファイナリストにノミネート。映画は2018年2月に劇場公開され、7月には書籍『自信をもてる子が育つこども哲学-“考える力”を自然に引き出す』(ワニブックス)として発売されるまでになった。映画は現在Youtubeで無料公開されており、4歳から6歳のこどもたちが自分自身の言葉で、せいいっぱい語り合い、ぶつかっていく姿を垣間見ることができる。

著書『自信をもてる子が育つこども哲学』 ご紹介 

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第2回目の記事では、「人生や社会のなかで哲学って必要なのか」ということについて川辺さんと語った内容をお送りいたします。
おたのしみに。

取材・文: 半澤絵里奈
Reporting and Statement: elinahanzawa

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