患者と家族 自分の心を大切にする ~WCW2022 セッションプログラム取材レポートCancerX 家族~
- プランナー
- 徳永栞
一般社団法人CancerX主催のWorld Cancer Week 2022(以下WCW2022)について、ポータル記事を起点に、WCW2022公式メディアパートナーのcococolorでレポートしています。
今回は、「Exchanging ideas & Sharing views」をコンセプトテーマとして、1/30-2/5の7日間の間で28以上のセッションが実施されましたが、WCW2022の2件目の記事となる今回は、” 【CancerX 家族】~患者と家族 自分の心を大切にする~ ”というセッションをご紹介します。
本セッションでは、患者の家族として自身の心を大切にするための方法や、社会としてのサポートについて取り上げられました。
私自身、家族ががんサバイバーということもあり、患者や家族の心をどう大切にするのか知りたいと思い、本セッションに参加いたしました。
以下4名の方が登壇されました。
上野 美和さん(メディエゾン代表)
児玉 久仁子さん(東京慈恵会医科大学医学部看護学科 / 在宅看護学 講師 家族支援専門看護師)
酒井 菜法さん(日蓮宗高応寺 住職 / 認定臨床宗教師 / マインドフルネス指導者)
モデレーター:山上 睦実さん(東京大学医学部附属病院 がん看護専門看護師)
家族も、笑うこと・自分の時間を大切に
上野さんからはご自身のケアギバーとしての経験から、家族が自分の心を大切にするための秘訣をお話しされました。
2002年にメディエゾンを設立し、日米間での国境を超えてがん患者・家族をサポートしている上野さん。ご自身もご家族を支えた経験があり今回登壇されました。上野さんが学生の頃から、脳卒中で左半身麻痺があったお母さまを、ご結婚されてからは悪性繊維製組織球種・骨髄異形成症候群・幹細胞移植を経験した旦那さまをサポートされてきました。ご経験を通じて、家族にとって2つのことが重要だと考えられています。
1つは笑うこと・楽しむことです。
症状が辛くなり旦那さまがなかなか笑わなくなる中で、上野さんは、旦那さまが笑うようなネタを提供したり犬を飼ったりすることで、旦那さまも上野さん自身も笑えるような環境づくりをされていたそうです。
2つ目は「何をしたいのか」と自分の中で持つことです。
上野さんは薬学部在学中お母さまが脳卒中になられ、薬剤師の国試を先延ばしにしてお母さまを介護されていました。
やりたいことを実現している友人と比べて、「自分のやりたいことはいつできるのか」と思うこともあったそうです。
しかし、「なぜ薬学部に入ったのか」ということを自分の中に持つことで、MDアンダーソンがんセンターでボランティア後、リサーチナースとして働くことができたとお話されています。
社会で患者の家族をサポート
家族を支える専門家がいることにもこのセッションでは注目されていました。
ご登壇者の児玉さんからは、医療従事者としてのご経験を通じて、家族のサポートについてお話がありました。
児玉さんは家族支援専門看護師として患者・その家族をサポートしています。
がん患者の中には治療に臨む中で精神的に不安定になったり、家族を含む周囲とのコミュニケーションに困難が起きたりすることもあると言いますが、そのため「自分が悪いのでは」と思い詰めてしまう家族もいらっしゃるとのことです。特に10代・20代のケアギバーの中には社会と孤立してうつになる人もいるとのことです。
だからこそ家族が一人で抱え込まず他者に相談できることが重要であると語られました。
家族をサポートする方は医療者だけではありません。
本セッションでは認定臨床宗教師・お寺の僧侶というお立場から、酒井さんが家族へのサポートについてお話されました。
酒井さんからは3つの活動をご紹介いただきました。
1つ目は、訪問看護ステーションと連携し、お寺で実施しているがんカフェです。
患者・家族・遺族・医療従事者が話せる場を創出し、お寺が困った時にかけこめるサードプレイスであることを発信しています。
2つ目は認定臨床宗教師としての患者との腕輪づくりです。
認定臨床宗教師は、一般社団法人日本臨床宗教師会が認定する資格です。仏教含めいろいろな宗教者が認定されており、全国に214人います。
「家族に対して何もできない」という申し訳なさを感じている患者と一緒に、酒井さんはうでわ作りを実施しています。うでわ作りを通じて、患者が家族に贈ることができるプレゼントづくりをサポートしています。
3つ目は仏教を起点とした瞑想法であるマインドフルネスです。
がんカフェの最後でも、マインドフルネスを実施されています。マインドフルネスによって、いらいらしたり辛くなったりしたときに自分の心に向き合い、自分自身で心をケアすることができるとお話されていました。
家族が自分の心を大切にするには
本セッションを通じて、家族が自分の心を大切にするうえで2つの要素が重要だと気付きました。
1つ目が自分自身との向き合いです。
患者優先のことが多くなるのが自然だと思います。一方で、継続的なサポートをしていく上でも、自分自身がどうしたいのか、どうありたいのかを考え、自分を大切にすることも重要なのだと感じました。
2つ目が医療現場・第三者機関のサポートです。医療現場での支援や、医療現場以外のサードプレイスにおけるサポート等、家族だけで乗り越えることを前提とせず、社会全体で患者・家族をケアできるようなスキーム構築が求められていると感じました。医療現場での支援や、医療現場以外のサードプレイスにおけるサポート等、家族だけで乗り越えることを前提とせず、社会全体で患者・家族をケアできるようなスキーム構築が求められていると感じました。
患者のサポートについては多く取り上げられていますが、あまり取り上げられていない家族のサポートも同じくらい重要なことだと感じました。
家族はどうしても患者のことばかり考えてしまい、視野が狭くなることも多いと思いますが、視野を広くし、家族がリラックスして患者に向き合うために、社会に何ができるのか。一人ひとりに何ができるのか。
継続的に議論を起こすことも含めて、無理のない看護やサポートのありかたを、医療従事者でない私自身も模索していきたいと思います。
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