編集部が行く!パラスポーツ【リモート】観戦記~テニス&車いすテニス「ニューミックス」~
- メディアプランナー
- 八木まどか
6月以降、日本国内では少しずつ、スポーツの試合が再開し始めました。
そんな中、車いすテニス界の絶対的王者・国枝慎吾選手らが、日本国内トッププロテニス選手たちと一緒に企画し、世界中を興奮させたエキシビジョンマッチ「橋本総業 チャレンジテニス 」を、オンライン上で届けてくれました。
車いすテニスからは国枝慎吾選手と荒井大輔選手の2名、男子プロテニス界からはダニエル太郎選手、西岡良仁選手ら9名が出場。「Team Taro」と「Team Shingo」の2チームに分けて、シングルス・車いすシングルス・ニューミックスのスペシャルマッチとして行いました。
試合は、無観客リモート中継として、WOWOW公式YouTubeなどでオンライン配信されました。
2日間の大会のなかで、特に盛り上がった試合が「ニューミックス」。
ニューミックスとは、車いすテニス選手・テニス選手がペアを組んで戦うミックスダブルスです。この種目は各地で以前より行われていましたが、国内トップ選手による組み合わせでは初めてで、どんな展開になるか誰も予想がつきませんでした。
しかし、いざ試合が始まると、選手たちの白熱のプレーが繰り広げられました。配信中YouTubeのコメント欄には、日本国内だけでなく海外からの視聴者のメッセージが多数寄せられ、国際テニス連盟の公式Facebookに投稿された試合動画は、公開から2日間で約16万回再生されるほどの盛り上がりに。
選手にとっても、お茶の間の観客にとっても、特別な試合となった、このニューミックスの試合を、パラスポーツ取材チームの3人(伊藤、八木、新編集部員A)で「リモート観戦」しました。
リモート観戦してみた!
各自宅のパソコンからオンライン会議ツールを使い、YouTube配信動画を共有しながら観戦。少しでも興奮が伝わるように、観戦中の会話を一部紹介します。
《試合開始!》
https://www.facebook.com/InternationalTennisFederation/videos/272394340738356/
International Tennis Federation(国際テニス連盟)公式Facebookより
《試合終了。Team Shingoの勝利!》
さまざまな衝撃を得た、ニューミックス観戦の感想
【編集部員A】
観戦前は正直、試合が成り立たないのではないか、もしくは、手加減して戦うことになるのではないか、と思っていました。でも、試合が始まって数分後、その考えが間違っていたことに気づきました。ものすごいスピードで動き、コースを読み、正確かつダイナミックに打ち合う様子に、僕は驚きました。
選手へのリスペクトも強く芽生えました。健常者のテニス選手と車いすテニス選手が別々の試合をしていると、正直、テニスに詳しくない僕には「すごさ」がわかりにくいと感じていました。しかし、今回ニューミックスでは、異なるスタイルの選手が同じコートに立つことで、それぞれのプレーの特徴が際立ち、それぞれのすごさがよくわかりました。
ニューミックスのように、インクルーシブなスポーツには、観る人に新たな気づきや視点を与えてくれます。それは、パラアスリートに向けられたものだけではなく、全ての人につながる価値のあるものだと思うのです。
また、解説の松岡修造さんのような、ガイド役も大事だとわかりました。自分が経験していないスポーツはどうしても前のめりになりづらいもの。今回は彼の解説が、興奮や驚きを自分なりに咀嚼することをサポートしてくれました。
【八木】
「久しぶりにテニスを観ることを楽しみにしているファンへ届けたい」と国枝慎吾選手が語っていたように、選手からファンへの思いが詰まった試合だったことが印象的でした。
ちなみに、チェンジアップのときに選手のインタビューを交えるなど、ダニエル太郎選手のアイデアがいくつか実現されており、若手選手のアクティブな動きには、単にオリンピック競技・パラリンピック競技の垣根だけでなく、様々な垣根を超える可能性を感じました。
試合後の国枝慎吾選手のSNS には「これはシェアされるやつだ!とポイント直後に思いました(笑)」といったコメントと動画の投稿などがありましたが、そこに本当に、国内だけでなく海外からの賞賛の声が寄せられたのが証拠です。オンライン配信の試合がどのように盛り上がるのか、誰もが模索する中、見事に世界中を楽しませてくれました。
【伊藤】
もしかしたら、オリンピック、パラリンピックの本番より面白い試合だったかもしれません。
未来の新競技、あるいは、未来の新しい国際スポーツ大会の第一歩を、この目で目撃してしまったかもしれない。大げさでなく、歴史的瞬間に立ち会っているような感動がありました。
スポーツは、ルールの中で正々堂々と戦って勝つことが求められるもの。もちろん、その制限の中での修練によって鍛え上げられるアスリートの心身の強さには心を打つものがありますが、アスリートたちが、純粋にスポーツを楽しんでいる瞬間には、そういうルールというのは不要なのかもしれません。フェアに戦うために、体重の階級を作るなど、身体的な特徴をそろえる必要のある競技もありますが、身体的な特徴が違うことも楽しみながら、自分たちが愛してやまないスポーツをしているとき、人はあんなにも素敵な表情を見せてくれるのか、と衝撃を受けました。
ダイバーシティな世界が本当に受け入れられるとき、そこにはきっと、こういうピュアな「楽しい」気持ちが芽生えているのだろうと、この日の選手たちの姿を目の当たりにして、改めて感じました。
パラスポーツの今後
新型コロナウイルスの感染状況を慎重に検討しながら、世界の、日本国内の、パラスポーツ大会も徐々に動き出しています。
もちろん、あらゆる人が安心して楽しめるように、新しいやり方を模索しながら。
今後もパラスポーツチームでは、どんな状況でも自ら道を切り開くパラアスリートの勇姿や、パラスポーツの魅力を伝えていきます。
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