人生100年時代をもっと楽しく、「きかくのがっこう」のチャレンジ
- 編集長 / プロデューサー
- 半澤絵里奈
ハイ!ハイ!ハイハイ!ハーイ!
ある休日、都内某所の会議室、勢いよく手を挙げる小学生たち。
「じゃあ、そこのあなた発表してくれる?」
「はい!えーとぼくが考えたのは・・・」
その後も次々に手が上がり、目を輝かせて練りに練った企画を発表する子どもたち。
娘の通う学校の授業参観でおずおずと手を挙げる生徒たちの様子とは違う。一人ひとりが伸び伸びとしている感じ、誰に見られているかということも関係なく、伝えたいことに溢れているというエネルギーを感じる。
「企画を考えるのってすっごくたのしい。考えた企画を真剣に聞いてもらえる。いいねって言ってもらえて一緒にどんどん面白い企画にしていけるんだよ。あー面白かったなー!」
その日の帰り道、小学3年生の娘が言った。
きかくのがっこうとは?
娘が参加したのは「きかくのがっこう」というイベント。様々なバックグラウンドや動機を持つ8人がチームとなって、小学生を対象に展開している企画の授業のようなもの。
発想フレームはあえて教えずお題の「解き方自体を、自分が見つける」という体験を尊重し、その繰り返しによって企画する心を育み、同時に自己肯定感を重要視し、「自分の企画を聞いてもらえた!」「いいねって言ってもらえた!」という原体験の創出を狙っているという。
人生100年時代のウェルビーイングを実現する七つ道具のような能力
きかくのがっこうでは、この企画体験を繰り返すことによって7つの力が身につくという。
1)イノベーション発想力
ふつうを疑い、固定概念を壊すやり口をみつける経験。
2)ニーズ把握力
相手の人の気持ちを把握し、理解する経験。
3)コンセプト力&コピー力
企画の真ん中を設定し、タイトルを付ける経験。
4)表現力
自分の考えを、絵や言葉で魅力的に表現する経験。
5)ロジカルシンキング&ストーリーテリング力
現状/課題/解決策/表現の順序でまとめる経験。
6)プレゼンテーション力
人前で恥ずかしがらずに自分の考えを発表する経験。
7)抽象化力&学習力
うまく企画できたときのやり方を自分でみつける体験。
仕事でも必要とされる能力が丁寧に因数分解されている。
しかしこんなにたくさんの要素を子どもたちにどうやって?と思うが、そこはこのチームの底力。30年近く企画を生業にしてきたプロフェッショナル、コミュニケーションのプロ、教育現場で子どもたちと長年向き合ってきた専門家がギュッと集まった8人なのだ。
こっそり覗いてみたら、黙々と企画を書く子どもたちの姿
イベント当日、子どもたちに与えられたお題は『あめのひがたのしくなるきかく』を考えること。
まず初めに一人で企画を考え(15分)、みんなで会議をして議論を行い(15分)、再度自分の企画をブラッシュアップし(15分)、最後にもう一度会議をする(15分)という60分勝負。
企画や会議は、低学年・中学年・高学年ごとにグループに分けられ、そこにファシリテーターの大人が2名ずつつく形式で進められ、親たちは一度子どもたちから離れ解散した。
終わるころ、娘のいる会議室をそっと覗いたら、そこにはいつもと違う表情で圧倒的に集中して企画を練る娘の姿を発見することができた。
他の子どもたちも一心不乱に白紙に企画を書きこんだり、話し合いを続けている。
真剣だ・・・!
その後の発表は冒頭の通り、どの子どもも一生懸命手を挙げて自分の企画を聞いて欲しい気持ちで溢れていた。娘も手を挙げて企画を発表し、満足そうだった。子どもたちの企画は、普段世界の見方が違うのかなと思うくらい、発想のスタート地点からして多様性に溢れていた。さらに、一つ一つの企画をどう実現するのかが良く練られていて、どの企画書にも構造図のようなものや見取り図のようなものがあって興味深かった。
持ち帰ってきた企画書を見せてもらうとシールが貼ってある。これは何かと問うと、子ども同士で会議の時間にいいなと思った互いの企画にシールを貼る制度があったという。
自己肯定感を高めることや相手の企画を傾聴するためにもとてもよい制度だと感じた。
そして、これはコロナ禍におけるオンライン会議のさみしさ・虚しさ解決にも一手打てるぞと感じた。あの日以来、わたしは相手が上司であろうと後輩であろうと社外の方であろうととにかく誰かの発言のあとにはオンライン会議のシステムに搭載されているスタンプやコメント機能を駆使して反応し続けている。
誰かが賛同や反応してくれることはやっぱりうれしいし、良いものを作っていくときにすごく大事なアクションなのだと子どもたちが改めて教えてくれた気がする。
内なる課題提起の力にもつながる企画力
今回のイベント参加によって、お題に向き合いなんとか自分一人で考えてみて、アイデアをぶつけあってコメントし合ってさらに企画力を上げていくという体験を楽しんだ娘。
以前、「(自分が通うのとは)別の小学校でうさぎ飼っているらしい。いいな」と言う娘に、自分の小学校でも飼えるように企画したらどうかと言ったときは、模造紙とポストイットを持ち出し親として手取り足取り教えてしまった。
娘が考えたくなるまで待ち、「自分でどう考え始めるか」を見守り、考えをそのまま受け止め、いいね!と言う余白や余裕が私にはなかったと思う。そのため、娘も自分でどうしたいか?自分のアイデアは何か?ということよりも大人の正解に寄せてきていた。
しかし、イベント参加によって、自分の企画はどんどん良くすることができるし、一生懸命考えたことはみんなに聞いて反応してもらえるという喜びを知り少しずつ変わってきたように感じる。実際、彼女の企画は子どもらしさもありつつ、彼女らしくイラストで表現されていた。
彼女に必要だった体験はこういうことだったようだ。
こういう体験がないと、企画力も課題提起をする意欲も湧いてこないのかもしれない。大切なことを教わった60分だった。
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「きかくのがっこう」
~未来を自ら切り拓く企画力を育む~
公式ウェブサイト https://kikakunogakkou.studio.site/
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