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Nov.

2024

interview
23 Mar. 2022
立川市のドリームロード壁画プロジェクトで制作中の柴田将人さん

将人は作家になる。アール・ブリュットで壁を越えていく。

佐多直厚
ソリューション・プランナー / プロデューサー
佐多直厚

 早春の日曜日、立川市で始まったアール・ブリュット立川の壁画プロジェクトを訪問。専門教育を受けていない人のアートをアール・ブリュットと呼び、近年はコミュニティ活動として全国に様々な運営組織が設立されています。2015年から展覧会をスタートしたアール・ブリュット立川はその先頭グループにいる団体です。タイトルで紹介した将人こと柴田将人さんはその主要なメンバーの一人です。2年ぶりに会った将人さんと名刺交換しました。アーティスト柴田将人。生年月日、在住、所属法人とともに作品販売のQRコードも記載されており、両面を彼独特の作品でデコレーションした作家らしい内容です。

柴田将人さんの名刺両面

将人さんの名刺・両面

「先日名刺交換させていただいた息子の将人は、知的障害を伴う自閉症です。コロナ禍の初期は目に見えないウイルスが理解できず、通っていた就労継続支援A型事業所は休業してしまうし、外出もできなくて家で暴れ、自傷行為やパニックを繰り返していました。コロナの前からそうでしたが、絵を描いている時間だけが彼の幸せなひとときです。作品を仕上げることや、出来上がった作品には、ほぼ関心はありません。でもこの数年、立川伊勢丹のアール・ブリュット立川展に出展するようになり、会場を訪れた方々に自分の絵を褒めてもらえるようになってから、ずいぶんと息子は前向きに変わったように思います。使える語彙が少なく、また抽象的で目に見えないものを、言葉で表現することが非常に難しいので、自分の絵に題名をつけることもとても苦手です。ただ絵にタイトルがあると管理するのに『便利』ということも、この数年で学んだかも知れません。今回の壁画は『みんなの海』だそうです。」これはアール・ブリュット立川実行委員会コアメンバーのお母さん、柴田まりさんから後日いただいたお礼状の文面です。わたくしが名刺交換で感じた彼の成長は、発信するアーティストへの成長なのでした。

プロの作家とプロのキュレーターを目指したチームとして。

 彼が所属するアール・ブリュット立川は2015年から展示会をスタート。実行委員会メンバーは障害者福祉の専門家たちですが、福祉支援を超えて作家の発掘と成長支援、その先の自立サポートを目指して、JR立川駅前の伊勢丹立川店、多摩モノレールの各駅ほか広く回遊型の展示会イベントを毎年開催。

アール・ブリュット立川公式ウェブサイト 過去の展示会2015~20年一覧

2021年はアール・ブリュットin昭和記念公園へと進化。
*コロナ禍のせいでイベントはかなり縮小せざるをえませんでした。

続くコロナ禍の影響を乗り越える2022年企画が、今回訪問した立飛壁画計画ウォールペイントプロジェクト「ドリームロード」です。

立飛ウォールペイントプロジェクト「ドリームロード」とは・・・

スケールの大きな回遊型からさらに進化し、高さ2.7m幅180mに及ぶ壁面を2年かけて作家たちが創作にチャレンジします。現在の壁画制作パノラマ画像制作開始は2022/1/14。右端から左へと進んでいき、完成予定は2023年4月。
(筆者撮影:2/27現在の状況。拡大してご覧ください。)
 作家の魂がこもった作品が目の前で描かれる素晴らしさは壁画の醍醐味。その現場で支えるボランティアスタッフとコアメンバー。実行委員会代表の松嵜ゆかりさんが感慨を語ってくれました。
「これまでになかった展示会を催しつつ、作品販売・グッズ制作販売などで収益を目指し、資金調達・協賛を獲得する活動の手ごたえと忍耐。福祉畑の委員ばかりなので悪戦苦闘ですが、支援者の方々、アール・ブリュットの先達の皆さんそして専門家の方の力添えで一歩ずつ。目指せ、 作家工房。プロのキュレーターへと少しずつ、少しずつ育ってきました。」

壁画で超えていく先に。

 壁画は世界中で、いろんなプロジェクトで描かれています。11年目を迎えた3.11では物資格納のコンテナボックスにボランティアみんなで描きました。被災地の壁面にも励ます絵がたくさん描かれています。現代を代表するキース・へリング、バンクシーも が主たるステージ。それをはがして換金するという驚くべきニュースもありましたが、基本的には社会の財産。
作り手の側から考えると、他者を想定して制作するものであること。身勝手な自己主張の破壊行為の落書きとは一線を画します。わたくしは将人さんのようにアーティストたちが壁画を描くことで社会化という壁を越えていると頼もしく思いました。彼らにはじめて 伊勢丹のギャラリーで会ったときのピュアさから成長し、表情と振る舞いに輝きがあふれています。その先に経済的にも自立し、家族を支える立場に成長して、家族の幸せを眺める笑顔を思い描いています。

ドリームロード壁画へのアクセス
JR立川駅から多摩モノレール立川北駅乗車、次の高松駅で下車。モノレール進行方向の高松駅北信号を左折。裁判所前信号を超えると右手に見えてきます。
参考:グーグルマップ

壁画の前で脚立に乗っている翔太さん。足元養生シートには制作中の文字。

将人さん「制作中」(筆者撮影)

取材・文: 佐多直厚
Reporting and Statement: raresata

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