男の子が赤いランドセルを持つことはおかしいこと?
- アソシエイト・メディアプランナー
- 久保葉月
電通と「こどもりびんぐ」が共同発表した、子どもに対する「女の子らしさ」「男の子らしさ」意識調査に伴い、「子どもにまつわるジェンダーバイアス」をさまざまな視点で紐解くリレーコラム。
第3回のコラムテーマは「こどもインタビュー」。
当事者である小学生たちは、今回の調査結果でわかったことについて、日ごろどのように思っているのか、取材を行いました。
今回取材を快く受けてくださったのはcococolor編集部メンバーのお子様たち。
小学四年生のあんなさんは昨年学校の総合学習の授業で「ダイバーシティ&インクルージョン」について学び、「ジェンダー」という言葉も聞いたことがあるようです。小学三年生のだいきさんは学校ではまだ聞いたことがないとのこと。
そんな二人が「ジェンダーバイアス」についてどのように思うのか、聞いてみました。
目次:
・取材後記
■男の子が赤いランドセルを持つことはおかしいこと?
今回行った調査では、「女の子(男の子)だから」という理由で 子どもが欲しがった商品を買わなかった経験がある人が24.5%もいることがわかりました。
昨今ではそんな生活者のインサイトを受け、売り場で「女の子向け」「男の子向け」の表示をなくしたり、性別関係なく手に取りやすい商品開発を進めたりするなど、子供のおもちゃにジェンダーレス化の動きが広がっています。
2021年の日本おもちゃ大賞から「ボーイズ・トイ」「ガールズ・トイ」部門を廃止し、新たに「キャラクター・トイ」部門などを設けるようになったのも、その動きの一つです。
徐々におもちゃ業界では、性別関係なく好きな遊びをあきらめなくてもいい環境づくりが始まっています。
小学生の2人には、購入しなかった商品カテゴリの上位のもののうち、毎日身に着けることも多い「ランドセル」に着目して話を聞いてみました。
ランドセルといえば、どの色やデザインにするか、子ども自ら悩みに悩んで決めるケースも少なくないでしょう。
ランドセル工業会の調査によると、2022年4月入学のランドセルの平均価格は56,425円とかなり高い買い物であることは間違いありません。
調査の自由回答でも
■「ランドセルの色を選ぶ際、赤が良いと言った息子に、こっちの色の方がかっこいいよ。と他の色を誘導してしまった」
■「子供は緑が良いと言っていたのに、実母に男の子だから黒にしないといじめられると言われた。」
など、子どもが欲しがった色とは異なるランドセルを購入したとの声が多く寄せられました。
― みんなのランドセルは何色ですか?
あんなさん:濃い茶色にちょっとピンクっぽい紫が混ざっているやつ!いろんな種類がある中から自分で選んだ!
だいきさん:キャラメル色!いろんな種類から自分で選んだ!
(二人とも自由に決めたようです。)
― 周りには男の子で赤いランドセルだったり、女の子で黒いランドセルを持っていたりする子は見かけますか?
だいきさん:赤いランドセルの男の子5人いる!
(え、本当に!?)
― 二人は自分の好きな色のランドセルを選ぶことができたと思うけど、これから1年生になるお友達がいた時、「赤のランドセルは女の子の色だよ」と誰かに言われて、赤色にするかしないか悩んでいる男の子がいたら、二人はなんて声をかけますか?
あんなさん:赤が好きなら赤にすればいいし、赤は女の子の色って誰かが法律で決めたわけではないし、自分が好きな色にすればいいと思うよ、って声かけるかな。
だいきさん:赤が好きなら、周りの人は気にせず、自分のことを大切にして赤に決めちゃったら?っていう。
(ランドセル売り場に二人のようなこどもアドバイザーがいたら、選ばれる色もかなり変わるかもしれない…)
■女の子が警察官になりたいのはおかしいこと?
本調査では「女の子(男の子)なのに〇〇」と他人から言われて モヤモヤしたことがある人は37.9%にも上ることが分かりました。
筆者も「女の子なんだからおとなしくしなさい」とか、食事シーンでサラダを取り分けると「女子力あるね」と言われモヤモヤしたことがあります。調査結果を読み解くと、小学生もバイアスがかかった発言を浴びることがあるようです。
調査の自由回答でも、以下のようなコメントが寄せられました。
■「警察官やユーチューバーになりたい」と言った娘に対して、夫が「女の子なのになりたいの?」と言っており、モヤモヤしました。
■子どもが転んだときに、泣かずに立ち上がると、ママ友が「男の子だね、すごい!」と言っていた際、性別は関係ないよねと心の中でモヤっとしました。
― あんなさんの将来の夢は動物の研究者になることって教えてくれたけど、「女の子なのに研究者になりたいの?」と言われたらどう思う?
あんなさん:“私”が好きなこと・したいことがあって、そう言っているのに、どうしてあなたにそんなこと言われなきゃいけないの?って思う。
(おっしゃる通りすぎます。個別様々な事情はありますが、夢はあきらめなくてもいいのですよね…)
― 「男の子だから、泣いちゃダメ」と言われたら?
だいきさん:先生に言われることがあるけど、ムカってなって、なんで?って思う。女の子でも泣いている子いるじゃん!
(小学校で言われることがあるのか…筆者も言われたらムカッとなるかもしれない…)
― 二人はどんな世界になったら嬉しいですか?
あんなさん:女の子だからとか、男の子だからとか、他の差別もなくなって…●●だからっていう人がいなくなって、みんなが好きなことにチャレンジできる世界!
だいきさん:好きなものを「これが好き!」っていえて、いろんなことにチャレンジにできる世界。
本記事を読んでくださっている方の中にも「女の子なのだから、おとなしくしなさい!」「男の子だから泣かないの!」などと言われた経験を持つ方がいらっしゃるかもしれません。
今回の調査結果でもまだまだジェンダーバイアスがかかった言動や行動が残っていることが分かりました。性別に関係なく、誰もが素直に感情を表現でき、興味の幅を広げ、やってみたいことにチャレンジできる社会になることを願っています。
小学生の二人は、自分の選択に対し、他の人が何と言うかは気にしない、そんな自信があるように感じました。
ランドセルの色を決める時だって、将来なりたい夢だって、女の子(男の子)だからとバイアスに縛られることなく、自分の好きなもの・したいことを選び・歩んでほしい、
調査からもそんな親御さんの声が伝わってきますし、筆者もそのように願っています。
一方で、私たち・大人たちのバイアスに影響を受けた言動や行動が、子ども自身の選択経験を狭めているのではないか、子どもに限らず、相手に自分の経験・価値観を押し付けていないか、私たち大人たちもジェンダーバイアスに関するリテラシーを高め続ける必要がある。と学んだ取材でした。
【調査概要】
■調査方法:インターネットによる調査
■調査対象者:子育て情報サイト「あんふぁんWeb」「ぎゅってWeb」メール会員(全国)のうち、小学生以下の子どもをもつ保護者
■調査時期:2022年2月16日~3月6日
■回答数 :681人
■調査実施:株式会社こどもりびんぐ(シルミル研究所)
■出典:こどもりびんぐ「シルミル研究所」、電通ダイバーシティ・ラボ
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