ITOCHU SDGs STUDIO 「キミのなりたいものっ展?with Barbie」企画者 橋口幸生さんにインタビュー|あたりまえを疑うとは?|
- アソシエイト・メディア・プランナー
- 川口真実
ITOCHU SDGs STUDIOで2023年4月1日(土)~7月17日(月)まで開催されている体験型の企画展示「キミのなりたいものっ展?with Barbie」。
この企画展示ではバービーと一緒に職業の多様性やジェンダーバイアスを考えることができるような体験展示が7つ用意されています。
(公式サイト)
https://www.itochu.co.jp/ja/corporatebranding/sdgs/20230316.html
私も実際に足を運んで見たところ、楽しみながら考えを深めることができるようなアイデアにあふれた空間でワクワクが止まりませんでした。
そこで、どんな思いでこの企画展示が制作されたのか、企画者の一人である、橋口幸生さんにお話を伺うことにしました。
橋口幸生氏
クリエイティブ・ディレクター、コピーライター。代表作は伊藤忠商事「キミのなりたいものっ展」、ニデック「世界を動かす。未来を変える」、「世界ダウン症の日」新聞広告、貞子3D「世界でいちばん、3Dが似合う女」など。『言葉ダイエット』『100案思考』著者。TCC会員。趣味は映画鑑賞。Twitterフォロワー2万人超。
https://twitter.com/yukio8494
まず、この展示を企画するきっかけは?
近年、国際女性デーに関連するコミュニケーションが様々な形で行われるようになりました。
一方で、「そもそもジェンダーバイアスって子どもの頃から始まるものなのに、子ども向けのものがないよね」という気づきがチームにあり、何か子ども向けの企画がしたいと思ったのが発端です。
また個人的には、Like a girlというP&Gの動画に衝撃がありました。
動画の中で「女の子らしく走って」と大人の女性に言うとわざと体をくねくねさせたり、弱そうに見せたりするのに対し、子どもに同じ質問をすると自分らしく走る。このことから、成長とともにジェンダーバイアスが作り上げられていくことに気が付かされる動画です。
広告の手法を使えば、普段は意識していなかったバイアスも実感できるようなコミュニケーションもできるんだと思いました。
広告は良くも悪くも、「男らしくないといけない、女らしくなければいけない」といったジェンダーバイアスやイメージを作ってきたという歴史があります。
しかし、広告には新しいイメージを醸成するというポジティブな力もあるはず。
例えばこれまで母親や女性ばかりが描かれていた洗剤のCMも、近年は男性が主役になり、社会のあたりまえがアップデートされています。
そんな社会をアップデートするような企画ができたらと思いました。
ジェンダーの問題は女性だけの問題と思われがちですが、本当は皆に関わる問題だと思います。
自分自身若い頃から「男らしく、タフでないといけない」という風潮に対する違和感があったので、声を上げたいと思っていました。
企画を作る上で気を付けたことは何ですか?
皆の夢を否定しないことでしょうか。
例えば、統計を取ると女の子がお花屋さんになりたいという声はとても多いです。
女の子が「お花屋さんになりたい」という思い自体は悪くない。
「女の子はお花屋さんにしかなれない」と思わせるような社会の圧こそが問題だと思います。
展示を見て感じてもらいたいことは何ですか?
展示に来た子どもや大人たちには「あたりまえを疑う視点」を持ち帰ってほしいと思います。
あたりまえを疑う視点を持つと、いつもの毎日が違って見えてきます。
展示のタイトル「きみのなりたいものっ展?」の、最後に “?”をつけたのはその意図からです。
なりたい夢を持ってそれを叶えるために努力することだけが大切だとは思いませんし、何か夢を持とう!ということより、あたりまえを疑う思考の癖を作ろう、というメッセージを投げかけたかった。
そのために展示の中では沢山の疑問を投げかける工夫をしています。
例えば「政治家と聞いてキミの頭に浮かんだのは、女性?男性?」という疑問。
ここでもし疑問を投げかけるのではなく、
「政治家と聞いて男性ばかりが思い浮かんでしまうのは、よくない」
といった決めつけをし、一方向でのコミュニケーションをした場合、見に来た方の思考は止まってしまうのではないかと思いました。
断定や批判をするのではなく、疑問で投げかけることで、みんなで考え、想像していきたいと思うのです。
バービーについて教えてください。
バービーが発売される以前は、女の子用の人形は赤ちゃんをモデルにしたものばかりでした。
男の子は宇宙飛行士の人形で遊べるのに、女の子は赤ちゃん人形を使ったお母さんごっこしかできなかったそうです。
そんな状況の中、はじめての大人の女性のドールとして作られたのがバービーです。
現実世界で女性宇宙飛行士が生まれる前から、バービーの宇宙飛行士が生まれていたり、ずいぶん前から女性大統領のバービーがいたり。知れば知るほど進歩的なドールだなと感じました。
バービーキャリアウォールという展示では、バービーの歴史の年表も載っており、歴史を体感することができます。
この企画を実現する上で一番大変だったことはなんですか?
広告クリエイターが行う展示は文字が多めのパネル展示になりがちです。
そこで、いかに体験型の展示として落とし込めるかを一歩踏み込んで考えました。
引き出し型の展示など、思わず手を伸ばしたくなる仕掛けを散りばめることで、「自ら考えるきっかけ」を作ることができたのではないかと思っています。
様々な性格や特徴が書かれた引き出しを開けると、その性格や特徴が生かせるかもしれない仕事が見つかる体験展示「ひきだし」の引き出しでは、
予想を裏切る答えを引き出しに用意するなどの工夫をしました。
また、引き出しに書かれた性格や特徴は「世間的に良いとされている特徴」だけでなく、いろいろな才能の可能性を提示したいという思いも反映しました。
頭が良いとか、足が早いとかだけではなく、自分が才能だと思っていないことも、裏返せば自分の人生を助けてくれるものなんだ、ということが伝わると嬉しいです。
最後に、インタビュアーからひとこと。
企画者の思いや工夫が詰まった「キミのなりたいものっ展?with Barbie」
ジェンダーバイアスについて、楽しみながら、体験をしながら考えることができる貴重な機会なので、是非足を運んでみてほしいです。
私自身も一児の母として、子どもと職業や将来の話をする際には、この展示で学んだことを活かして可能性を広めていきたいなと思いました。
「キミのなりたいものっ展?with Barbie」概要
主催: ITOCHU SDGs STUDIO
協力:バービー(マテル・インターナショナル株式会社)
期間:2023年4月1日(土)~7月17日(月)
会場:ITOCHU SDGs STUDIO(東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden B1F)
時間:11:00~18:00
混雑状況により入場整理券を配布致します。定員に達した場合、ご入場いただけない場合がありますので予めご了承ください。
休館日:毎週月曜日
※月曜日が休日の場合、翌営業日が休館となります。
料金:入館料無料
詳細はURLよりご確認ください。
https://www.itochu.co.jp/ja/corporatebranding/sdgs/20230316.html
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