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17 Dec. 2019

世界のLGBTマーケティング最前線!②国や市が積極的に後押し!アムステルダムをダイバーシティの震源地に

阿佐見綾香
戦略プランナー
阿佐見綾香

昨今LGBTの課題への関心が高まる中で、LGBTの祭典への企業の出展も参加者も増大し、イベントの様子が大きく様変わりしています。そんな中、違和感をぬぐえない企業の取り組みも散見されるという指摘が挙がっています。

これから日本の企業はどうふるまえば良いのか。そのヒントを海外のプライドパレードから学ぶために、マーケティング分野で活躍してきた田辺貴久氏・山中肇氏・永田龍太郎氏の3人が「虫めがねの会(※1)」と一緒にパネルトークを企画。

(※1)「虫めがねの会」:若手教員の勉強会としてスタートした、LGBTと教育について考える会。会の代表の鈴木茂義はオープンリーゲイであり、小学校の先生をしている。

2回目はアムステルダム・ゲイ・プライド(Amsterdam Gay Pride)のレポートをお届けします!

 

山中氏がレポート!
ダイバーシティの震源地を目指して、
交流の場を支援「オランダ アムステルダム」

山中氏は外資系メーカー、広告代理店のブランドマネジメント担当として、LGBTの祭典に出展する多くの企業のブース企画を手掛け、アムステルダム・ゲイ・プライド2019では東アジアからは初の出展団体となった「プライドハウス東京」の招聘、参加を担当されていました。

山中:オランダは2000年に世界で初めて同性婚を可決した国なので、LGBTコミュニティにとって特別な意味を持つ国です。

アムステルダム・ゲイ・プライドの「カナル(運河)パレード」(2019/8/3)はとても珍しいパレード。アムステルダムを流れている運河を5時間かけてぐるっと回りながらパレードをする、世界で初めて運河を使ったLGBTパレードです。

山中:2019年のテーマは「過去を見つめ、未来へ向かおう」。2019年で50周年を迎える「ストーンウォールの反乱」(※2)を意識したテーマでした。

(※2)ストーンウォールの反乱とは‥1969年6月28日、ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン(Stonewall Inn)」が警察から踏み込み捜査を受け、LGBTが初めて警察に立ち向かい大きな暴動となった。世界初の大規模な衝突事件だったと言われており、その後LGBTの人権運動を活発化させるきっかけとなり、世界初のプライド・パレードを生むきっかけにもなった。

 

アムステルダムの行政の取り組みからフォーカスすると、オランダ警察はLGBTとアライの警察官から成る「ROSE IN BLUE」フロートを出しています。

山中:彼らはLGBTに対するヘイトクライム(※3)から当事者を守る立場にいて、毎年必ずこのようなフロートを出して「差別を許さない」という意思を積極的に発信しています。

(※3)ヘイトクライムとは‥人種、宗教、肌の色、民族、性的指向、性自認、心身の障害などを理由とした偏見や憎悪が動機で引き起こされる、嫌がらせ、脅迫、暴行などの犯罪行為のこと

永田:運河を進む途中、橋の下をくぐるときには高さが1.8メートルほどしかありません。そのため、橋の下をくぐる瞬間は人形や筒のような装飾は空気を抜いてしぼませ、全員「伏せ」の状態になって進んでいきます。橋の下をくぐるともう一回空気が入り、みんなが立ち上がって歓声が上がる、という流れを23回ほど繰り返します。

 


山中:一般企業のフロートも参加しており、例えば「セールスフォース」は社内チームの「アウトフォース」が中心となって、アライの社員や家族や友達を引き連れて参加していました。

 

このパレードに参加できるのは80艘、80組に限られています。今年の申込は全部で200団体あり、その中から選抜されます。今回、日本からエントリーした「プライドハウス東京」が東アジアからは初めて選出され、今年の目玉船としてこのアムステルダムのパレードに参加しました。

沿道から大歓声を浴びる「プライドハウス東京」のフロート。

山中:日本からはドラァグクイーンや、『弟の夫』著者の田亀源五郎氏と氏による漫画も搭乗して話題を呼びました。アムステルダムに住んでいる同性婚をした日本人カップルなど、現地の人も含めて50人で船に搭乗しました。東アジアからの参加が初めてだったので、現地の日本人の方や、メディアからも熱狂的な歓迎を受けました。

 


山中:パレードの前日には、アムステルダム市長が世界中の活動家約150名を招き、旧市庁舎で交流会を主催。交流の機会が提供されることで、ここからまた新しい多様性にあふれた文化が作られていきます。

オランダが世界で初めて同性婚を可決した国として「ダイバーシティの震源地」であろうとしている意思を感じました。

 

パレードの前には参加者代表を集めた説明会があり、そこでは自分たちの船が何番目に出発するのかが発表されるのですが、その会場にはUberがアムステルダム本社ビルを無料で開放。

山中:80艘の船が並ぶために長い待ち時間がありますが、無料でお酒をふるまうなどの工夫がされ、楽しい雰囲気を作っていました。Uberの『Reserved for Pride』というパンフレットも設置されており、ブースを出したりレインボーの装飾を作ったりする以外にも、世界中の活動家に対して場を提供することでLGBTフレンドリーをアピールできることが学べます。

永田:Uberは、パレードが開催される都市でサービスを展開している場合、アプリをそのタイミングで開くと、走っている車が全部レインボーの車に変えられています。そのため、興味・関心がない人も、「ああ、今パレードの時期なんだ」と気づく仕掛けも作っていますよね。Google Mapアプリのパレードのルートもレインボーになっています。日本も主要なパレードではレインボーになっているようです。


永田:このパレードではフロート船に乗れる人数は本当に限られていますが、両岸と係留されたボートに人が鈴なりで、こぼれそうなほどの盛り上がりを見せています。色々な意味でダメだと思いますが、浮き輪で浮いて眺めている人も。


永田:警察だけではなく救護のために消防署も船を出しており、そこには当事者もそうじゃない人もいたり、楽しげな羽をつけているような人もいたりしました。「自分たちが出動しなくて今回も良かったね」という話を終わった後にしているのを立ち聞きしたりしました。

山中:オランダ、そしてアムステルダム市は行政として、このLGBTの取り組みを支援・発信しようとする意思が明確で、自ら積極的に関わって取り組んでいる印象を受けました。

 

■cococolor編集部がチェック!アムステルダムから学ぶポイント

各国の活動家の交流の場を作るなど、自国の都市を拠点に世界のダイバーシティ&インクルージョン推進のきっかけをつくっていこうという、国の気概が見られるアムステルダム。

Uberがパレードの説明会のためにアムステルダム本社ビルを無料で開放したり、パレードが開催されている時期にアプリ上でその都市を走っている車をレインボーの車に変えたりなどの取り組みが見られました。パレードそのものへの出展以外にも、このパレードを“街ごと化”し誰もが主体的に向き合えるようにするために、企業や小売店だからこそ担える役割はたくさんありそうだというヒントが学べました!

 

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取材・文: 阿佐見綾香
Reporting and Statement: ayacandy-asamiayaka

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