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interview
5 Mar. 2021
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Airbnbのビジネス、その核にあるダイバーシティ&ビロンギング

山本葵
デジタルプランナー
山本葵

昨今、日本でもダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)という言葉を耳にする機会が増えてきました。D&Iとは人の多様性を認め受容することを指し、ジェンダーや年齢、国籍、障害、価値観、文化などに関わらずそれぞれの個を尊重しあうことが、特に今の社会では個人に、そして企業にも求められています。

今回は、ダイバーシティ&ビロンギング(以下D&B)という考えを重要な企業理念とし、共同創業者ら自らがその大切さについて発信、創業以来重要なものとして捉え続けている、Airbnb Japan株式会社の広報部長・松尾崇さんにお話を伺いました。
※D&B:Airbnb社におけるD&Iの意。InclusionはBelongingとされ、全ての人に居場所を提供するというAirbnbのサービスにより沿う言葉として使われている。

 

(右下:今回お話しを伺った松尾さん)

(右下:今回お話しを伺った松尾さん)

 

 

意欲的にD&Bに取り組んできたAirbnb

Airbnbは2008年の創業以来、本社がある米国のほか世界中でさまざまな取り組みを経ながら、コミュニティの誓約の導入や差別禁止ポリシーの強化、差別撲滅&ダイバーシティ向上専属チームの常設など、差別や偏見なく利用されるサービスの構築にプラットフォームを提供する企業としての責任感を持ち、意欲的に取り組んでいます。

差別禁止ポリシー

Airbnbのダイバーシティ

 

Airbnbのビジネスの根幹にある「居場所」への考え

Airbnbのダイバーシティに関するWebページには、Airbnb共同創業者兼CEOのブライアン・チェスキーの言葉として以下のような記載があります。

 “Airbnbのミッションは、「人は根源的に善であり、人が集まるコミュニティには必ず居場所がある」という発想が核にあります。”

Airbnbは共同創業者のうちの2人、ブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアが、アメリカのサンフランシスコで最初のゲストにエアーマットレスと朝食を提供したことから始まりました。当時は知らない人を家に泊める、知らない人の家に泊まらせてもらう、ということは社会ではなかなかハードルの高いことでした。 そこで2人はこのミッションを胸に、デザインの力を借りながらステークホルダーが信頼し合えるコミュニティ作りを目指し、Airbnbを今や700万件もの登録物件を抱えるグローバルサービスへ成長させることに成功しました。

松尾さん曰く、Airbnbではどの社員にもD&Bに関する研修や、豊富な資料へのアクセスが確保されており、社としてのポリシーやアクションについて日々学ぶことができる環境が整えられているそうで、

「D&Bは誰か一部の人にとっての大切な考え方ではなく、全ての人にとって大切な考え方であるということを創業者が理解しています。そしてその考え方は社員全員にも浸透しています。」

とお話ししてくださいました。

ブランドの核であるD&B、そしてそれに基づく信頼の大切さを企業のトップが常に発信し続け、企業としてミッションを体現し続けていることに、AirbnbのD&Bへの強い思いを感じました。

 

日本でのD&Bの啓発活動

220以上の国や地域でサービスを展開するAirbnbは、各地域の法規制を遵守しながらサービスを展開していますが、どの国や地域であってもD&Bに対する取り組みは変わりません。もちろん日本も同様で、国内外の観光客が多く利用する日本のAirbnbでは、個人的に物件を貸し出しているホストが数多く活躍しており、宿泊・体験のホストの男女比はほぼ同率だそうです。

そんなホストの方々は多くのインバウンドのゲストと関わってきた経験から、色々なバックグラウンドのゲストを受け容れるD&Bについての知見も豊富です。Airbnbでは、その集合知を社内のみならずホストコミュニティで広め合い、学び続けているとのことです。松尾さんは今後も会社として、これまで以上に社内外でのD&Bの啓発活動を進めていきたい、と話していらっしゃいました。

 

社会課題とAirbnbが目指す新しい選択肢の提示

2020年12月、Airbnbは緊急時に医療従事者や自然災害等困難に直面した人々に無料で宿泊先を提供するAirbnb.orgというNGOを立ち上げました。この取り組みはアメリカでハリケーン・サンディによる災害が発生した際に無償で家を解放したホストの動きをきっかけとし、Open Homesとして2012年に開始していたプログラムをさらに進化させた取り組みです。世界各国の滞在先の確保が困難な人々がこのプログラムによって支援を受け、日本では2016年4月に熊本地震が発生した際に有志のホストが被災者を支援しました。

このようにAirbnbが世界のあらゆる社会課題に積極的に社をあげて取り組んでいるのは、サービスを展開している地域で「会社として信頼を得るためには何をすべきか」という、Airbnbの信頼に対する根本的な考え方を常に意識し、ビジネスとして成長させることを考えているからだと言います。Airbnb.orgはまさにこの考え方がAirbnbの企業としてのミッションを超えてAirbnbコミュニティにまで波及し、形になった素晴らしいプログラムです。

そんなAirbnbには、今後日本では地方でのAirbnbの活用をさらに普及したいという考えがあるそうです。

「Airbnbのホストの男女比は半々ですが、やはり地域差もあるのが現状です。日本の地方には利用されていない空き家も多く、Airbnbで空き家や古民家の再生、活用を促すことで、誰もがビジネスを始める機会を得ることができます。地域の活性化や観光を促進し、副業としての選択肢を増やすことができるようになれば、Airbnbを通じて様々な価値観や考え方に沿った生き方を提案することができるのではないかと思います。これからもますます誰もがホストとして活躍できるよう、自社の取り組みへの知名度と理解を得るよう努力を続けていきたいと考えています。」

D&Bとは1人1人の違いを受容し合うこと。AirbnbはD&Bをベースに、自社サービスを通して多様な選択肢を提供することで、様々な生き方を受容できる社会構造そのものを作り上げようとしていると感じました。

 

インタビューを終えて

今回のインタビューで印象に残ったのは、松尾さんが「Airbnbが世界各国の優秀な人材を魅了してやまないのは、個々の違いを受け入れ、力にできるAirbnbのD&Bの考え方を社員が体現しているからではないかと思います。」とおっしゃっていたことです。全員の意見が尊重され、評価される。そんな社員の居場所づくりが浸透しているAirbnbは、会社のサービスだけではなく強みもD&Bの考え方に則っています。

ひとつの企業が社会に真摯に向き合いミッションを体現することで、信頼の輪が社員、そしてホストやゲストにも広がる。そしてそのD&Bのミッションが違う個を同じ方向に導く軸となり、今のAirbnbの企業としての勢いにつながっていると感じました。

D&Iの大切さが注目され、企業として多様性のあり方と向き合い、CSRや人材サポートの一環として取り組む企業も増えてきましたが、Airbnbはビジネスの核としてD&Bを据えることでより加速度的なビジネスの成長を遂げることができているのではないかと思います。どれだけ稼ぐかよりも、どのように稼ぐか、が大事になってくると言われている今の時代。多くの企業がAirbnbからヒントを得ることができるのではないでしょうか。

取材・文: 山本葵
Reporting and Statement: yamamotoaoi

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