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Dec.

2021

event
27 Nov. 2020

CRF2020-そだてる人が、そだつ場所-セミナーレポートVol.1

小川百合
クリエーティブ・プロデューサー
小川百合

NPO法人Ubdobe※が主催するCommunity Roots Forum 2020 Online -Autumn- 今回のテーマは「教育・保育」。教育・保育・子育てに携わる
ゲストがオンライン上で、これからの時代の教育・保育について語り合いました。4時間以上にわたる熱いセッションのレポートを3回に分けてお届けします。

■CRF2020 Online -Autumn- タイムテーブル

 

■Talk Session1 では、教育の専門家である汐見稔幸さんと、特色のある園舎で注目を集めるふじようちえん園長 加藤積一さんが「育てる」というその姿勢自体を根本から問い直し、”教育”の本質に迫りました。

 

加藤先生
そもそも、子どもを育てるというのはおこがましい話だと思います。
それを証拠に、人は生まれてから誰も教えないのに、多くの人が話だし、歩き出します。つまり、子どもは生まれながらにして“自ら育つ力”を
持っているのです。だから、その自ら育つ力を充分に発揮させるのが教育の場だと思っています。先生が子どもに教えるのではなく、環境を通して子ども自らが気づき、行動につなげること、特に、不便との出会いこそ、子ども自らの工夫を生み、工夫することで育ちが出てくると考えています。
例えば、園庭をがたがたにしているのは、1回転んだ子は次に気を付けて
転ばないようにするものです。バリアフリー社会は、すべてがスムーズでいいのですが、子どもの育ちには体幹もバランス感覚も鍛えられない環境でもあるのです。

 

汐見先生
子どもはいい環境があれば自ら育っていくので、大人は子どもが自ら育つ環境を作ることが大事。自由に探索していいよという条件があれば、頭も体もしなやかになり、自分で調べると楽しいことを知る。

 

―いい環境に触れるのが都会の子どもは難しいのでは?

 

加藤先生
その状況でやれることはたくさんある。例えば、部屋の造りをオープンにすることで、あえて、ほかの部屋の音が聞こえる状況にして、一生を通じて役立つ雑踏の中での集中力を育てたいと思っています。基本的に、人間は見ようと思うものしか見てないし、聞こうと思うものしか聞いてないのが現実です。田舎、都会は関係なく、様々な環境が子どもの育ちに貢献し、子どもの未来の姿に繋がるか?を考えることが大切ですね。

幼児期は、何かがすぐできること、正解を求めることが重要ではない。
むしろ、ふじようちえんではあえて不便にして、子どもたちに工夫してもらうようにしている。

 

―子どもがケガをしないように危険なものを排除する傾向もありますよね?

 

汐見先生
子どもがケガをせずに大人になることはない。小さなケガはいっぱいしましょう。ただ、一斉保育はケガをしやすい。好きなことはみんなそれぞれだから。いろんな遊びをそれぞれが自由に選べると、自分のレベルに合わせて、ケガをしないように身につけていく。
ケガは頑張って生きている証。

 


―親は子どもにこう育って欲しいというのが無意識に作られるが、
子どもに対してどのようなまなざしが必要ですか?

 

汐見先生
現代は「ねばならない※」が人類の中で最も増えた社会。昔なら子どもはどこでも自由に遊べたが、今は決まっている。自分で決めた好きな道を通って帰るのが楽しいのに、通学路も決められているし、受験もこう答えを書かなければならないと決められている。
人間はたった1回の命をどのように輝かせたいかは本人が決めること。
自分が何をやりたいのかを探すのは自分しかおらず、それを探すのは
子ども時代だから子どもに没頭させる育て方が大事だと考えている。

 

加藤先生
本当にそう思う。それには、個人差を認めることが大切です。
あなたがしたいことをあなたが選びなさいという姿勢で、なんでも自分で決めることを子どもたちに求めたい。現代はみんな一緒という空気が蔓延していて自分で決められない、つまり、脆弱な知性の時代になっているように感じているが、今こそ、そしてこれからは、たくましい知性が必要だと思います。
子どもは育てるもので、何から何までやらなくてはというお母さんの意識もわかるけど、明るい未来はあるのだろうか?子ども一人で生きていけるのだろうか?と感じます。

 

―父母の不安になる気持ちはどこからくるのでしょうか?

 

汐見先生
「ねばならない時代」を若い時に過ごした世代は、情報を入れられて、テストでアウトプットという育ち方をしてきた。子育てをして一生が終わるわけではないので、自分が幸せになるためのチャレンジが親にとっても大事なことだと思う。子どもは自分探しをしているので、レールを引いても意味がない。先が読めない社会は見方を変えれば、おもしろい時代を生きているともいえる。不安なことはしょうがないので、おもしろいことや、楽しいことを見つけていく生き方をしながら子どもの可能性を信じて心のバランスを取っていけるといい。

 

加藤先生
子どものなんでもおもしろがる力を大切にし、みんなが認めてあげる。
それが、社会や時代を創る力になると思う。

 

汐見先生
そもそも子どもは育てるものなのか?というテーマに対しては、
子どもは丁寧な環境が整えば自らどんどんと育っていく、ということ。
すぐれた文化や人との出会い、おもしろい世界をみつける応援をしてあげるのが親。そのときに親自身も変化の激しい社会の中で、自分探しをやっていると子どもとの共通点が増える。それぞれが上手に自分探しをするためにみんなで応援し合う時代だと思う。

 

 

■Talk Session1を終えて

今、日本は世界で一番子育てが難しい国と言われています。子育て世代が抱える育児に対する不安を海外では理解されないそうです。
渦中にいると、この環境が当たり前のように感じてしまいますが、日本の子育ては特異なのです。

親の不安な気持ちは「ねばならない時代」で育った世代という影響があると汐見先生は話されていましたが、母親という立場になっても「ねばならない」は非常に多くあります。子育て中の人は無意識のうちにたくさんの「ねばならない」に晒されているという事実を知り、そして、そこに固執する必要はないという知性があれば積もる不安も少しずつ軽減されるのではないでしょうか。

自分が何をやりたいのか探すのが子ども時代。

自分は親で子どもは育てる対象だと線引きをすることも、子育ての不安を加速させているのかもしれません。子どもの成長がそのまま母親(育児に一番、関わった人)の成果のように捉えられる風潮もあり、気付いたら
子どもの人生にレールを引いてしまっていることもあるように思います。
今回のセッションでは子育てにおける明確なひとつの答えがありました。
『自分が何をやりたいのかを探すのが子ども時代で、子育ては
子ども自身が何をやりたいのかを探す環境づくりを応援すること。
親も自分探しをして、子どもと一緒に人生を楽しむこと。』
私自身も子育てに迷ったら、ここに立ち返ろうと思いました。
そして、子どもの育つ力を信じるまなざしをすべての大人が持つことで、本来は楽しいはずの子育てができる国になることを願います。

 

Vol2へつづく。

 

Ubdobe あらゆる人々が積極的に社会参加できる楽しい世の中を目指す「医療福祉エンターテインメント®︎」集団。”福祉というパスポートを持って旅に出よう”「福祉留学」をオンラインにて開催するなど活動は多岐にわたる。

https://cococolor.jp/crf2020_1
https://cococolor.jp/crf2020_2

※「ねばならない」 〇〇しなければならないという、義務や責任、そうすることが当然であるという意識。

 

■トークゲストプロフィール

汐見 稔幸(東京大学名誉教授/白梅学園大学名誉学長/ぐうたら村代表)

加藤 積一(学校法人みんなのひろば ふじようちえん 理事長・園長)


■司会 / MC

三木 柚香(東京大学大学院教育学研究科博士課程在籍/NPO法人Ubdobe ローカル事業部)

取材・文: 小川百合
Reporting and Statement: yuriogawa

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