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6 Jul. 2020

コミュニティ・ルーツ・フォーラム2020 オンラインセミナーレポートVol.2

小川百合
クリエーティブ・プロデューサー
小川百合

NPO法人Ubdobe※が主催するCommunity Roots Forum 2020は、新しい福祉とまちづくりの仕掛け人たちを通し、人口減少、高齢化が進む現代の地域のまちづくりにおいて重要な地域包括ケアを考えることを目的に開催されました。今回は4時間にわたるフォーラム後半のレポートです。

■CRF2020 ONLINE タイムテーブル


■第三部
第三部はgreenz 小野 裕之さんをモデレーターにCommunity Nurse Company  中澤ちひろさん、 海士町社会福祉協議会  片桐 一彦さん、 YouTuber せかたんさんによる移住や旅をしながら福祉と関わる方々のパネルディスカッションでした。



―移住者を切り口に地域ではどんな動きがありますか?

中澤さん(5年前に雲南市へ移住)
雲南市は移住者が多く、地域医療での人材不足をきっかけに人が集まりだした。まちづくりのNPO法人と行政がチャレンジを通した地域づくりを始めたことでUIターンの人が多く活動している。

片桐さん(24年前に海士町へ移住)
海士町は2200人の小さな島で人口の約2割がIターン。人口が減り、島が潰れかけた時に、何とかしたいという挑戦者が島に集まり、文化として移住が定着。受け入れ体制がよくなっている。ただ最初からそうではなく住民との情緒的な繋がりを経て、島のパワーとなっている。定住をあまり求めず、入口と出口を広くして様々な人を迎え入れている。

(右上:中澤さん / 左上:せかたん / 右下:片桐さん / 左下:小野さん)

―新しい移住者が地域でチャレンジするにあたり、気を付けていることは?

片桐さん
歯車でいうと島を何とかしたい移住者のギアは早いが、島の歯車はゆっくり回っている。回転数が合わないとはじかれるので、コーディネーターが島の流れに歯車を合わせていく。目標を先の方(島を最終的に残したいというゴール)に持って行くと回転数は徐々に合ってきて、合った時に快感を覚えると移住者たちは口を揃えて言う。

中澤さん
住民との信頼関係がないために、チャレンジを反発された経験がある。地域の中ですでに信頼されている移住者の支えがありチャレンジができた。
なので、チャレンジする人を応援する倒れない支援が大切。

―日常に戻った時に改めてリアルで大切にしたいことはありますか?

中澤さん
島根に来て思うのは、自分の楽しいはすごく身近なところで作れるということ。コロナになったからこそ、足元の幸せが見えやすくなった。自分のできることをみんながやることで、より暮らしやすい地域になると思う。

せかたん
どれだけオンラインが発達しても、リアルに勝るものはないと思う。旅をしているからこそ、リアルな人と人の繋がりでしか感じられないことがある。そこを分かりやすく発信していくことが僕たちの役目。

片桐さん
田舎なので、コロナになっても生活はそんなに変わらないが、世の中はアフターコロナ時代に地域の人との距離感が見直されるのではないか。田舎の自給自足に近い、支え合って生きていく感じがますます注目されると思う。

 

■第四部
第四部は福祉を起点に新たな文化、そして暮らしを拡張しているヘラルボニー 松田 崇弥さん & 松田 文登さんと Happy 首藤 義敬さんによるトークセッション。途中システムトラブルがあり、Ubdobe代表の岡さんも登場となりました。



―新しい福祉や、浮くことを恐れない異端児などと表現されることをどう感じる?

松田崇弥さん(以下、崇弥さん)
新しいことをやっているとはそんなに思っていない。福祉業界と少し違うのは、世間にベクトルが向いているところかもしれない。

首藤さん
浮くことも、福祉も全く考えていない。自分や子供、家族にとって良い暮らしを考えている。おじいちゃん、おばあちゃんに介護が必要で、子どもはいろんな大人にたくさん会えたらいいなと考えていたら、週に200人くらいがはっぴーの家に集まるようになった。

―今の世の中や福祉業界に対して、もっとこうだったら面白くなるのにと思うことは?

首藤さん
福祉はこの何年かである程度整ってきているが、高齢者のために、障害者のためにと言っているけど、自分自身はどうなのかと思う。自分の周りの小さな社会を作れないのに、大きな社会のことを考えられるのだろうか。福祉をやっている人は制度から作ろうとする。でも自分が見たい日常の世界を考えるとそれを描ける。制度から入ると可能性が低くなるように感じる。

崇弥さん
自閉症の兄がコンクリートから不純物を取り除く仕事ができるようになった。できなかったことができるようになるのは素晴らしいが、すでに本人ができることや、本人が楽しいかどうかという感覚を持つと社会も変わってくると思う。

―はっぴーの家はさまざまな顔があるが、ひとことで表現するとすれば?

首藤さん
はっぴーの家はめっちゃフツウ。

岡さん
初めて行ったときにそう思った。異端とかではなく、とても気持ち良くフツウな場所。子どもがいて、おじいちゃん、おばあちゃんがいて、たまにケガ人が出て。あらゆる人がひとつの地域で暮らしているけど、「施設」になった途端に分断されることが今の福祉では多い。(はっぴーの家は)初めてここなら入りたいと思った。


(右上:松田文登さん / 左上:岡さん / 右下:松田崇弥さん / 中下:首藤さん / 左下:MC貞松さん)

―まちづくりは意識していますか?

首藤さん
まちづくりの定義はわからないが、人とまちの関係性を作ることはやっている。はっぴーの家では認知症という言葉を使わない。遊びに来て知らないうちに認知症の人と会話をして、何かの機会にあの人は世間一般でいう認知症の人だと伝えると驚く。そんなきっかけをつくるために、地域のハブとなり人との関係性を結んでいる。それを外からみると、まちづくりや福祉に見えるのかもしれない。

文登さん
建設現場の仮囲いをソーシャルアートのミュージアムにするプロジェクトをやっている。街にアート作品を取り入れることで、日常にアートが馴染み、それが知的障害のある人のアート作品というのが、脳に残るだけでその人の育ち方が変わってくると思う。そういう瞬間を紡いでいくことがまちづくりという意味ではできていないかもしれないが、まちを生きる中で意識が変わり、その人の生き方も変わっていくことに繋がればいいなと思う。 

崇弥さん
まちづくりは知る母数を増やし、感情移入できる体制を作っていくことだと思う。

岡さん
まちづくりをそんなに意識していない人が結果として、今まで繋がってこなかった人たちを繋げて、新しい街の価値やカルチャーにしている印象がある。

 

■フォーラム視聴参加を終えて

「地域包括ケア」=人と人が気持ちよく繋がること

日本では20人に1人以上が障害を持つと言われ、現在健康な人も事故や病気で障害と向き合う可能性があります。また少子高齢化が進む中、だれもが家族や自身の介護の問題に直面するでしょう。障害も介護もごく身近なことで特別なことではありませんが、障害については「かわいそう」であるとか、介護は「辛い」などというネガティブな認識が根幹にあるように感じます。フォーラムの中では、何度もその認識が崩れる感覚がありました。

はっぴーの家を何かの記事で知った時に、多世代が繋がることで日本が抱える様々な問題を解決している特別な場所のように感じましたが、首藤さんは「はっぴーの家はフツウ。だれもが気持ちよくフツウでいられる場所。」と語りました。人と人が気持ちよく繋がっていれば、本来は何でも解決できるのかもしれません。そのことが、海士町の島民スローガンに表現されていました。


「ないものはない」
島にはコンビニもなく、便利なものはなにもない。
島民が繋がることでないものはなにもない。

まずは自分の暮らしや生き方を見つめ直し、人との繋がりに価値を見出すことが、多様性社会を生きる上で何よりも大切なことではないでしょうか。

 

 

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メディカル・ウェルフェア・テクノロジーの領域を縦横断し、あらゆる人々の積極的社会参加を推進する「医療福祉エンターテインメント®︎」集団
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■トークゲストプロフィール

中澤 ちひろ(Community Nurse Company株式会社 取締役)

片桐 一彦(海士町社会福祉協議会 事務局長)

せかたん(YouTuber / 世界幸せ探検隊

松田 崇弥 & 松田 文登(株式会社ヘラルボニー CEO & COO)

首藤 義敬(株式会社Happy 代表取締役)

 

 

 

取材・文: 小川百合
Reporting and Statement: yuriogawa

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