連載『ダイバーシティと映画』 多様性課題の中のフェミニズム
- コミュニケーション・プランナー
- 國富友希愛
連載『ダイバーシティと映画』スタート
年間100~200本程度の映画を鑑賞・分析している國富が
全3回に渡ってお届けする連載『ダイバーシティと映画』です。
第1回の本記事では、多様性課題の中のフェミニズムについてお送りします。
映画から読み取れるトレンド
2010年代からLGBT映画の名作が増えはじめています。
10年が経過した今、LGBTQについて特殊な存在としての演出はされなくなり、性の多様性が存在することは“あたりまえ”のこととして捉えられていると感じます。
ここ数年は、黒人の方の視点から歴史を紐解いたり、差別を描く作品。2019年以降は、ジェンダーバイアスに関わるテーマ、特に女性差別を意識させるものが目立ちます。
映画の中で描かれるあらゆる“多様性”に鑑賞者として触れることは、
「他者と自分との違いを知ること」
です。
それはつまり、それぞれの違いを受け入れたり、自分のありのままを受け入れることでもあります。
私にとっては、精神的な“救い”でもあります。
少し具体的な映画の事例を取り上げたいと思います。
昨年大ヒットした「JOKER」の中で、主人公JOKERことアーサーは、突然不意に激しく笑いだしてしまう脳の病気を患っています。
その症状によって、周囲から好奇な目で見られて苦しみ、社会の中で阻害を感じるという設定がされていました。
私は、「JOKER」を観るまで、“情動調節障害”と呼ばれる、感情表現を調節できない症状のことを知らなかったのですが、鑑賞を通じて自分自身のなかに多様性に関する幅がまた少し広がった印象があります。
「笑うこと一つにおいても多様な事情が存在する」
という視点が生まれると、
人生の解釈や他者との接し方に広がりが生まれます。
誰もがすべての多様性を経験することは不可能です。
しかし、映画を通じて多様性を知り、解釈するチャンスはたくさんあります。
映画を通じて、あらゆる登場人物に出会い、他者そのものを疑似体験することや社会の価値観を知ることで、ゆっくりと視野が広がる体感をぜひみなさんにもおすすめしたいなと思っています。
多様性の中のフェミニズムについて
以前から、女性の価値観を描く映画はたくさんありました。
特に、2017年あたりから、“フェミニズム”を主軸とする作品数の増加は顕著です。
「フェミニスト」や「フェミニズム」の存在について、日本国内での捉えられ方がネガティブであることがやや残念です。
フェミニズムとは、女性の社会的・政治的・法律的な自己決定権を主張し、性差別からの解放と両性の平等を目指す思想のことを示し、女性の権力のみを主張しているものではありません。
私自身は、2017年以降、映画作品でフェミニズムの思想を目の当たりにするようになってから、その重要性を感じるようになりました。
もしかしたら、それ以前は、日本におけるジェンダー課題を盲目的に捉えていたのかもしれません。
というのも、子どもの頃から、男性主体・男性主導の世の中に育ち、もっとフェアに世の中を見つめる機会がなかった!と気づかされたのです。
幼い頃の記憶から性別にかかわるエピソードを取り上げるときりがありません。
私が女性であることで失っていたフェアネスについて、今振り返れば「おや?」と思うことも、当時はそれが当たり前だと疑問に思う機会さえ与えられていなかったのです。
疑問に思う機会を与えてくれたのは、映画
そのような私に価値観の変化を与えてくれるのは、海外の動向です。
新型コロナ感染症の影響で、ジェンダー課題は一部深刻化しています。
それは例えば、社会にとって重要な政策決定の場に女性の存在を始め多様性が担保されていない現状、風俗業の方への社会的保障の議論、個人に出されるはずの補助金受取の際に、受取人として世帯主が基本設定されていたことを見ればよくわかります。
海外の動向を見渡してみれば、台湾、ドイツ、ニュージーランドを始め、強い女性リーダーの存在、そしてそれをポジティブに受け入れる社会の在り様を学ぶことが出来ます。
性別に関わらず、差別や嫌悪について見直す機会をあらゆる事例が与えてくれるのです。
同様に映画作品を通じてフェミニズム、或いはフェアネスを知り、考える機会を重要視したいというのが私の訴えです。
第2回、第3回の『映画とダイバーシティ』を通じて、フェミニズムを考えるきっかけとなる映画をご紹介していく予定です。お楽しみに!
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