連載『ダイバーシティと映画』多様性課題の中のフェミニズムについて Vol.2
- コミュニケーション・プランナー
- 國富友希愛
連載『ダイバーシティと映画』
年間100~200本程度の映画を鑑賞・分析している國富が、全3回に渡ってお届けする連載『ダイバーシティと映画』です。第2回の本記事では、ミソジニーとフェミニズムに焦点を当て映画を紹介いたします。
■『SWITCH』
日本国内においては、まだまだ多くの女性差別・男性差別が存在していると私は自身の経験からも強く思います。ミソジニー主義、ホモソーシャルというものがありますが、すべて一様にジェンダー差別とくくってしまうことで、問題の本質的な部分が議論されていないのではないか、とも感じます。
男性差別の一例として、男性保育士に対する社会の偏見や、男性は仕事で稼ぐべきといった価値観が挙げられます。女性差別の一例としては、数字でも明らかになっている経済格差、女性であることを理由に社会から要求される”家庭への向き合い方”、性的搾取などが数多く存在しています。性差というのは、一概に線を引いて可視化できるものではありませんが、両者の違いを実感できる映画に、『SWITCH』があります。
(あらすじ)プレイボーイの大手広告代理店勤務の男性が、女性関係の恨みを買い、元カノに殺される。死んだはずの彼だが、目が覚めると、美しい女性の肉体に憑依している。女性の姿で、「真に自分を愛してくれる人」を見つけることができれば、天国に行けるという契約をどうやら悪魔と結んでいるらしい。彼(彼女)は、天国に行くために、自分を愛してくれている女性を探すが、なかなか見つからない。生前無意識に行ってきた女性差別を、男性たちから逆の立場で経験し、自分がいかにミソジニストであったかを痛感し、自分が女性になることで、ジレンマに悩む。
男性が女性に生まれ変わることで初めて気づく女性の生きづらさが描かれ、一方で男性には男性の生きづらさがあることを教えてくれます。
■『ハスラーズ』
2008年のリーマンショックについて、NYウォール街の男性たち目線で描いた映画は多くありますが、女性の視点を中心に描かれた唯一無二の名作に『ハスラーズ』があります。
(あらすじ)ウォール街で活躍していたストリッパーが主人公。リーマンショック後、財布のひもが突然固くなった彼女たちの裕福なクライアント。一方で生活が苦しくなった彼女たち。「真面目に働いても生活が苦しいのに、経済危機を引き起こした張本人であるウォール街の金融マンたちは、なぜ相変わらず豊かな暮らしをしているのか。」腑に落ちない彼女たちは、とある計画をする。実在の事件をもとにした物語。
この作品は、スリリングで、犯罪もの×シスターフッド×ストリップダンスのコンボで大変見応えがあり面白い作品です。
しかし、国内では酷評が並び、動員人数は伸びませんでした。酷評の中身を探ると、男性の性的消費財として生きる道からの解放を訴えるためのストリッパーの逆襲という脚色が、日本のホモソーシャルでは、完全にタブーだったように思えます。ストリッパーという職業や女性蔑視に関する課題を強く感じました。これは、数か月前にメディアで話題となった「ホステスにはコロナ禍での休業補償を払いたくない」という話と似ています。
作品内に目を向けると、この作品のために50歳でポールダンスを習得したジェニファーロペスの演技は圧巻で、その年のオスカー助演女優賞ノミネートは間違いないと巷では評価されていました。しかし実際は、アカデミー会員にも受け入れられず、それに対して多くの女性から抗議の声が上がりました。是非、ご覧いただき、あなたの感性は、どのようにこの映画をとらえるか、試してみられると面白いかもしれません。
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