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26 Sep. 2022

アップサイクルと社会課題の交差点で生まれた「名刺用凸面点字器 ten・ten」

半澤絵里奈
編集長 / プロデューサー
半澤絵里奈

2022年3月に「で、おわらせないPROJECT」というオフィスで使用しなくなったプラスチック製品のアップサイクルを推進でさまざまな社会課題に対応するプロジェクトの第一弾として「名刺用凸面点字器 ten・ten(テン・テン)」を発表した。

 

環境課題に向き合い、それで、おわらせない

この点字器は、会社のなかで使われていた入れ替え期限を迎えた防災用ヘルメットや使い古したクリアファイルをアップサイクルして作っている。働き方改革や感染症の影響でオフィスの使い方や必要備品の在り方が変わり、今あるものをどうするのか喫緊の課題になっている企業も多いのではないか。

私自身は2011年3月の東日本大震災のときにヘルメットが手渡されてしばらく自分の近くにおいて業務を行い、日々の重要資料をクリアファイルに整えて収めてきたため、これらの備品にも思い入れがある。それらをただ捨てるのではなく、再度自社の資産として迎え入れられる仕組みというのは「ものを大切にする」という考えに新しい選択肢が加わったと感じた。そして、ここまでは環境に関する課題解決のストーリーだが、「で、おわらせないPROJECT」のポイントは全体のプロセスのなかで社会課題との交差点をつくり具体的なソリューションに帰結しているところだ。

第一弾としての「名刺用凸面点字器 ten・ten」はその名の通り、名刺一枚一枚に点字を書くことができる手のひらサイズのツールとなっており、晴眼者だけでなく点字利用をしている視覚障がい者とも名刺の情報を共有できるようになる。


知らない世界をうかがい知り、実感し、気付きの輪を広げたい

点字器の発表にあたってプロジェクトとして「点字を書く大変さ、読む大変さを知ることは、目が不自由な方々の世界をうかがい知るための入り口にすぎませんが、それらを実感とともにお会いする方々にお伝えし、気づきの輪を広げたいと願って、名刺に自分の名前と連絡先だけでも点字が書けるように」というメッセージが出ている。

実は点字を読める人口というのは決して多くなく、視覚障がい者の総数に対して約1割と言われている。今後、テクノロジーの進化とともにより効率的に代用となるツールが増えていくだろう。一方で、点字を書いてみる・読んでみるという作業は貴重な原体験として教育現場にも数多く導入されている。点字の一覧表を見ると、五十音を母音と子音で分けて組み合わせて表現できる仕組みを知ったり、一般的に使用されている点字器は凸面を作るために文字を鏡文字のように打ち込まないといけないことを知ることができる。(※名刺用凸面点字器 ten・tenは読むのと同じ向きで書くことが可能で初心者にも使いやすくなっている)

 

ten・tenのワークショップをやってみて

「名刺用凸面点字器 ten・ten」はモノの開発だけにとどまらず、電通ジャパンネットワークの12社101名を対象に点字名刺作成のワークショップを実施した。参加者からは自社にten・tenを使って点字記載のある名刺を持つようにしたいという声や、DE&Iの理解につながるというもの、入れ替え備品の大量廃棄に苦慮していたためこの取り組みに強い関心を抱いているという声が上がった。

 

あなたの名刺にも点字を搭載してみませんか

事業者のアップサイクルプログラムとして提供するもので単品での販売はしていないが、働き方が大きく変化しオフィス備品の行き先を検討している企業の方々や、アップサイクル+社会課題への向き合い+実際に手を動かして体験してみることまでをセットに何かアイデアをお探しの方々におすすめしたい。

 

まずは話を聞いてみたいという方もお気軽にご連絡をお願いします。

で、おわらせないPROJECT「名刺用凸面点字器 ten・ten」の情報はこちらから
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2022/0329-010509.html

取材・文: 半澤絵里奈
Reporting and Statement: elinahanzawa

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