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Apr.

2021

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5 Apr. 2021

今年は120位。意識と実態がつりあわない、日本のジェンダー平等

中川 紗佑里
プロデューサー
中川 紗佑里

120位。先日発表されたジェンダー・ギャップ指数2021の日本の順位です。2019は149カ国中110位、2020は153カ国中121位ときて、2021は156カ国中120位と順位に大きな変化はありませんでした。

「ジェンダー平等」は国連の持続可能な開発目標(SDGs)の一つとしても設定されており、近年(ようやく)日本でも議論の的になっています。今年は、この120位という数字を何度も耳にすることになるでしょう。

 

ところで、ジェンダー・ギャップ指数って?

 

「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」は、ダボス会議を運営する世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表している、各国のジェンダー平等の達成度を表す指数です。

14の指標を、

①経済への参加とその機会
②教育の到達度
③健康と生存
④政治的エンパワメント

という4つの視点から評価し、その国の社会全体のジェンダー・ギャップを指数として算出します。この指数では、ジェンダー平等が達成された状態を「1」、男女がまったくの不平等である状態を「0」と考えます。

日本は各分野の指数がそれぞれ、①経済 0.604、②教育 0.983、③健康 0.973、④政治 0.061という評価を受けており、特に経済分野と政治分野がジェンダー平等とはほど遠い状態にあることが分かります。

 

経済・政治分野でのジェンダー不平等は、世界共通の課題

しかし、経済・政治分野におけるジェンダー不平等は日本だけの課題ではありません。上の図1は、世界の平均(紫色)と日本のスコア(黄緑)を重ねたものです。

世界の平均値でも、教育(0.950)と健康(0.975)は1に近くジェンダー平等の達成度が高い一方で、経済は0.583と低く、政治は0.218とさらに低くなっています。そう、経済・政治分野におけるジェンダー不平等はグローバル規模の課題なのです。(とはいえ、日本の政治分野は抜きん出て低いと言わざるを得ませんが……)

 

 ジェンダー・ギャップは西ヨーロッパで小さく、中東や北アフリカで大きい

上の図2は、世界の各地域のジェンダー・ギャップ指数とカテゴリー別のスコアの平均を比較したもので、色が濃くなるほどジェンダー平等の達成度が高いことを表しています。

ここからは、西ヨーロッパや北米のジェンダー・ギャップは小さく、中東や北アフリカで大きいことがわかります。ちなみに、日本の総合的なジェンダー・ギャップ指数は、0.656。これは東アジアの平均値よりも、世界全体の平均値よりも低いのです。

 

ジェンダー平等をめぐる人の意識は?世界最大規模の意識調査「世界価値観調査」

 

ここまで見てきたWEFのジェンダー・ギャップ指数は、政府や企業の要職における女性の割合や男女の賃金の格差など、客観的なデータをもとにジェンダー平等の達成度を把握しようとするものでした。

では、人々の意識はどうなっているのでしょうか。ある社会に属する人々の意識を知ることは、その社会の規範、すなわち社会における暗黙のルールや「空気」を考えるうえで重要です。やはり、ジェンダー・ギャップ指数の順位が高い国ほど、人々の意識も高いのでしょうか。もしくは、意識と実態に乖離がある場合もあるのでしょうか。

そこで、電通総研が1990年から参画する世界価値観調査を手掛かりにして少し考えてみたいと思います。この調査にはジェンダーに関する質問も含まれており、国連が発表する「ジェンダー社会規範指数」でも根拠となる重要なデータとして引用されています。

世界価値観調査は、1981年から100を超える国・地域で実施されていますが、ここでは、2017年から2020年にかけて実施された第7回世界価値観調査の77カ国のデータ(2020年9月時点で入手可能なもの)を使用します。

調査対象国の数は、WEFのジェンダー・ギャップ指数がカバーする国の数より少ないものの、多くの地域の代表的な国が含まれており、参考としては十分でしょう。なお、第7回世界価値観調査の詳細な国際比較は、こちらからご覧いただけます。

 

「女性が男性と同じ権利を持つ」に肯定は8割で、77カ国中45位

まず、社会全体のジェンダー平等に関する質問として、「女性が男性と同じ権利を持つ」ことが「民主主義の性質として必須」かどうかを問うものがあります。日本では「民主主義に必須である」と答えた人の割合は、80.8%。8割の人がジェンダー平等を肯定していることが分かります。

この数字は一見大きく見えるものの、国別にランキングにしてみると、77カ国中45位と真ん中よりもやや下に位しています。

 

「ジェンダー・ギャップ指数が上位」=「ジェンダー平等に肯定的」とは限らない?

ランキング上位の国には北欧や西ヨーロッパなど、ジェンダー・ギャップ指数(GGI)でも上位に入る国々が目に飛び込んできます。しかしよく見ると、3位にギリシャ(GGI:98位)や10位バングラデシュ(GGI:65位)などがラインクイン。45位の日本は、フランス(GGI:16位)とチェコ(GGI:78位)に挟まれています。さらに、このグラフの中での最下位のマレーシアは、GGIでは112位と、日本よりも高い評価を受けています。

このデータのみでは、何かを言い切ることはできませんが、ある国のジェンダー平等の達成度と、その国の人々のジェンダー平等への肯定度は、必ずしも比例しているわけではなさそうです。つまり、人々がジェンダー平等への高い期待をもっていても、社会が追いついていないというケースもあるということです。

 

経済・教育・政治におけるジェンダー・バイアスの国際比較

 

次に、ジェンダー・バイアスに関連する3つの質問についてみていきましょう。下記の意見に対する賛否を問うものです。

「男性の方が女性より経営幹部として適している」
「大学教育は女子より男子にとって重要である」
「男性の方が女性より政治の指導者として適している」

それぞれ、ジェンダー・ギャップ指数のカテゴリーでいうところの、①経済、③教育、④政治にあたります。ちなみに、この調査では、時系列での比較を可能にするため、1981年から同じ質問票を使用しています。そのせいで、2021年を生きる私たちから見ると、「質問そのものが差別的では?」と感じる部分もあるかもしれません。その場合は、上記のことが理由であるとご承知おきいただければと思います。

まず「男性の方が女性より経営幹部として適している」かを問う質問です。この意見に賛成する人の割合が多い順に、77カ国を並べてみました。少しややこしいのですが、このグラフでは下位にいくほど、「男性の方が女性より経営幹部として適している」と思う人が少ない、つまり性別役割分担意識が薄いことを意味しています。

上の図4のように、日本は77カ国中54位で、どちらかというと下位グループに位置しています。最下位グループには、ジェンダー平等先進国の北欧、西ヨーロッパ、オセアニア諸国が多く入っています。

 

次に、教育。「大学教育は女子より男子にとって重要である」に「強く賛成」もしくは「賛成」する日本の回答者は12.6%と少なく、77カ国中48位です。

 

最後に、政治に関する質問です。

上の図6が示すように、「男性の方が女性より政治の指導者として適している」に賛成する人の割合は、77カ国中50位。政治は、WEFのジェンダー・ギャップ指数において日本が特に厳しい評価を受けていたカテゴリーですが、人々の意識もそれに連動して低いというわけではないようです。むしろ、政治における日本のジェンダー・バイアスは、北欧や西ヨーロッパ、オセアニアなどに次いで弱いという結果が出ているのです。

 

ジェンダー・バイアスはそんなに強くないはずなのに……

ここまで、WEFのジェンダー・ギャップ指数と第7回世界価値観調査の結果を見比べてきました。そこから浮かび上がったのは、ジェンダーをめぐる日本社会の実態と、人々の意識の間のズレです。議員や管理職の女性比率や男女の賃金格差を見ると、日本のジェンダー平等への道のりは長く険しいもののように思われる一方で、人の価値観や意識という面から見ると、厳しい現実に見合うほど強固なジェンダー・バイアスが存在しているとは言えないのです。

 

日本の壁は「意識のジェンダー・ギャップ」と「アクションへの躊躇」

 

日本はなぜ、この歯がゆいズレを埋められないのでしょう。理由を探ることはこの記事の目的を超えているので、ここでは電通総研が今年2月におこなった、電通総研コンパス第6回「ジェンダーに関する意識調査」から得られた二つの発見を、ジェンダー平等に向けた今後の論点として提示したいと思います。

一つは、「意識のジェンダー・ギャップ」です。日本の「社会全体」が「男女平等になっていると思いますか」と尋ねたところ、「男性の方が優遇されている」と答えた人は全体で64.6%。しかし、男女別で見ると、男性は54.1%、女性は75.0%と、20.9ポイントの差がありました。つまり、性別で現状認識が異なっている可能性があります。現在の日本では、意思決定者における男性の割合が非常に大きいため、この性別による意識のギャップは見過ごされるべきではありません。

 

もう一つは、ジェンダー平等の実現に向けた「アクションへの躊躇」です。議員や管理職などの一定数を女性に割り当てる制度である、「クオータ制」への賛否を聞いたところ、「賛成」は38.1%に留まり、「どちらでもない」が44.7%、「反対」は17.2%という結果になりました。

ジェンダー平等に反対する人はもはや多くはない一方で、いざ実際に制度をつくったり、是正措置を講じるといった段になると、慎重になる人が多いことが考えられます。

事実、民主主義・選挙支援国際研究所(International IDEA)の「ジェンダー・クオータ・データベース」によると、地方選挙のレベルも含めるとすでに約130の国と地域が何らかのかたちでクオータ制を導入しています。慎重になることが悪いことではありませんが、世界に遅れをとる日本のジェンダー平等への取り組みを考えると、時間的猶予があるとは言えないでしょう。なお、電通総研コンパス第6回「ジェンダーに関する意識調査」の詳細は、こちらで公開しています。

 

ポストコロナの世界はどうなる? 

 

国連のレポートや、さまざまな政府データが報告するように、新型コロナウイルスによるパンデミックは、男性よりも女性に対して、より大きな負の影響を与えています。WEFの「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2021」では、ジェンダー・ギャップ解消までに必要な期間は135.6年と、2020年の99.5年から約35年引き伸ばされました。この理由として、政治分野でのジェンダー平等が前回のレポート時点よりも後退したことや、社会全体としてジェンダー・ギャップ解消のスピードが鈍化していることが挙げられています。

コロナ禍の厳しい状況の中でも、日本ではようやくジェンダー平等に向けた議論が熱を帯びてきました。今まで看過されてきたジェンダーをめぐる問題が、次々と浮き彫りになっています。この流れを止めずに、社会の変化につなげていくことが、日本を120位から押し上げる唯一の方法ではないでしょうか。

 

※この記事は、「ウェブ電通報」からの転載記事です。

取材・文: 中川紗佑里
Reporting and Statement: nakagawasayuri

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