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Dec.

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28 Dec. 2018

見えなくても花見?香りが届ける春とは

飯沼 瑶子
副編集長 / プランナー
飯沼 瑶子

 

季節は冬ですが、一足早く春の話題です。

誘導するようですが、春を感じる花といえばなんでしょうか。
…「桜」という答えを期待しています。

では、そんな桜の香りについて、すぐに想像できるでしょうか?
「そういえば桜の香りってどんなのだっけ?」と思った方もいるかもしれません。

実は桜は香りが薄く、金木犀やバラのようにこれ!と香りが感じにくい花なのだそうですが、そんな桜の香りを感じられる品種があるのです。
それが…


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“春めき”という桜

 

南足柄市の農園経営者の古屋富雄さんが作出した新品種の春めきは、ソメイヨシノなどよりも少し早い3月中旬頃に咲き、桜としては強い香りがするのが特徴です。

満開の時期が3月と通常よりも早いので「卒業生を送る桜」として各地の小中学校などに春めきを寄贈していた古屋さんでしたが、目の不自由な方から「香りで春を感じる」と感想を頂いたことをきっかけに各地の盲学校などにも苗木の寄贈をされるようになりました。

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古屋さんと春めき

 

この話をニュースで知り「春を感じると言われるまでの香りがするのか!体験してみたい」と現地へ駆けつけたのが、香りのプロである長谷川香料の大森さんたち。というのも、花の香りについては図鑑などに記載されていることもありますが、実際に強く感じられるような香りがする花に出会うことは少ないそうです。

現地で実際に嗅いだ春めきの香りは、期待以上。甘く優雅でパウダリーな香りが離れていても感じられ、早速、長谷川香料による香りの開発が始まりました。

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長谷川香料の大森さん

 

これまで春を実感するシンボルとしての「桜」は視覚で楽しむものでしたが、香料となることによって「香り」でも体験できるようになる。
そして、「香り」は素材だからこそ、様々な最終商品との掛け合わせで、春めきを通じた「春」を多様な形で届けることができる。

しかも、春めきの香りが届けるのは春だけではありません。
桜の開発者である古屋さんの取り組みに共感し、長谷川香料で開発された「春めきの香り」を活用した商品の売上の一部は、盲学校などへの寄付・植樹に充てられるドネーションプログラムと連動しています。

 

「得意なこと」で繋がり合う社会

 

長谷川香料の、香りで生活に彩りを提供するという使命と、世界で唯一の香りを創りだす技術。
古屋さんの開発した春めきと、目の不自由な人からの「春を感じる香り」という発見、それに寄り添った古屋さんの思い。
それを紹介し拡げたニュースと、ここに可能性を感じた調香師としての大森さん。

それぞれの得意分野を組み合わせ、世の中に拡げていくことで、人から人へと思いを伝えていくことができる「春めきの香り」が生まれたのです。

「春めきの香り」がこのボトルの中に…!

 

障害のある人にもない人にも使いやすいユニバーサルな商品ということや、障害のある人たちへの支援という事だけでなく、障害のある人からの視点が「香り」のプロ達に新たな気付きを与え、そしてその結果、香りによる社会全体への新たな価値提供が可能となったこの事例は、「インクルーシブ・マーケティング」の一つのあり方ではないでしょうか。

※インクルーシブ・マーケティングは用語集下記へリンク
https://cococolor.jp/diversityword/inclusivemarketing

 

次回は、この春めきの香りを生活者に届ける一般商材についてのレポートをお送りする予定です!

取材・文: 飯沼瑶子
Reporting and Statement: nummy

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