自分をまるごと楽しむための、色の選び方
- プロデューサー
- 在原遥子
皆さんは朝起きて服を選ぶとき、どんな基準で選んでいますか?予定に合わせて選ぶ、天気で選ぶ、または自分の好きな色で選ぶ、好きな素材で選ぶ…ルールは様々だと思いますが、選んだ服によってその日一日の気分が決まると言っても過言ではありません。
6月26日に開催されたオンラインカンファレンス「Women’s Well-being Updates 2021」で、「色をまとおう。ラベルにとらわれず自分をまるごと楽しむ」というセッションがありました。登壇者は、トータルビューティーアドバイザー・亜耶バネッサさんと、ファッションブランド「Creative Studio REING」の代表・大谷明日香さんのお二人。ジェンダー、年齢や体型など既存のカテゴリから自分を解放し、個性を活かす装いの見つけ方について、とても役立つお話がたくさんありましたのでレポートさせていただきます。
冒頭、亜耶バネッサさんからは、「ありのままの自分を受け入れて、いつでもハッピーに外に出られるのって、well-beingですよね」と新鮮な解釈が提示されました。トータルビューティーアドバイザーとして、メイクのオンライン講座も運営している亜耶さんは、どうしたら自分に自信を持てるかという質問を頻繁に受けるそうですが、それに対する亜耶さんの答えは、「どんな姿でも美しくて綺麗だよ」という素敵な言葉でした。
実は亜耶さんご自身が、2人のお子さんを出産されたあと太ったことがきっかけで、美の基準について考えるようになったと言います。メディアでは「ママでも綺麗」と産後のタレントさんの体型に言及するような発信も目にし、違和感を抱いたのです。「体型、年齢、性別など様々な要素が社会からラベリングされていて、私たちはファッションやメイクで選ぶ色に自分でブレーキをかけてしまっている」という指摘は目から鱗でした。
そして「正解が社会に作り出されているように感じる」と話したのは、大谷さん。ご自身がファッションブランドを立ち上げたきっかけも、「世の中には異性愛のためのプロダクトばかり」と気付いたことだそうです。すべてのカップルに寄り添うパートナーリングのプロジェクトは、まさにその理念が具現化されています。また、「心地よい自分でいるためのアンダーウェア」をコンセプトに、型・カラー・サイズにおいて性別の区別がないジェンダーニュートラルなデザインの下着も開発。多くの人々がジェンダーバイアスを感じる色の一つであるピンクの商品も、「Limitless Pink」というネーミングで発売しました。「もっと自由に、誰もが性別問わずピンクの多面性を楽しめるように」という願いを込めたのだそうです。
ここで、お二人がセッションで語った、「自分をまるごと楽しむ」ための2つの提案をご紹介します。
1)思いきったメイクをしてみる!
メイクはその日のうちに落とせるので、失敗しても似合わなくても全く問題ありません。普段なら絶対に選ばない色を使ってみることで、気持ちの切り替えになったり新たな自分を発見したり、いい刺激になるのです。亜耶さんも、「ブレーキをかけるより、チャレンジすることが大切」と話していました。
2)自分を枠にはめるのではなく、知識を味方につけて選ぶ!
自分が生まれ持った色素と服やメイクの色が合うと、より綺麗に見えるということで、近年パーソナルカラー診断を受ける方が増えています。ただ診断を受けることによって「これは似合う、これは似合わない」とかえって決めつけるようになってしまう方もいるそうです。「あくまで、自分に似合う色を知識として味方につけましょう」と亜耶さんから重要なアドバイスもありました。
自分に似合うスタイルの探し方については、生まれ持った骨格の違いによって、似合う服の素材や形を知ることができる「骨格診断」という考え方も紹介されていました。ここでも大切なことは、骨格診断の結果に縛られるのではなく、知識が「ちょっとした自信につながる」ということです。私たちは多感な時期に雑誌やテレビのメイク・ファッション特集をお手本にするのが当たり前だったため、「目はパッチリの方が可愛い」「痩せないと短いスカートが履けない」などが正解であると刷り込まれてしまっています。そんな思い込みを取り払うツールの一つとしても、有効かもしれません。
亜耶さんからのアドバイスは、「『当たり前』や『普通』を一度外して、自分に似合うものに集中する。そのときの土台や手段としてパーソナルカラーや骨格診断を活用する。そのためにまずは自分の心に向き合う。そして色んな自分がいると知る」というものでした。まさに、メイクやファッションは、アイデンティティに直結しているのだと感じました。
ファッションは本来、年齢もジェンダーも体型も関係ない、自己表現のツールです。自分自身を縛っている固定観念を捨て、自分らしい表現を選んでいけるように、ポジティブな方法を見つけていきたいと思いました。「Fake it till you make it.(できるようになるまでできるフリをしよう)」という格言のとおり、メイクやファッションでなりたい自分に挑戦することで、好きな自分に一歩ずつ近づいていけそうです。是非皆さんも今日から参考にしてみてください。
文:在原 遥子
登壇者プロフィール
大谷 明日香(おおたに・あすか)
Creative Studio REING代表。上智大学、ロンドンへの短期留学を経て広告代理店に入社。プランナー兼プロデューサーとして、グローバル展開する日本ブランドのコミュニケーション戦略設計を複数担当。YOUNG SPIKES2016・日本代表選考にてBRONZE受賞時、課題がジェンダー不平等だったことを機に「社会課題にこそ、クリエイティブの力が必要だ」と感じNEWPEACE Inc.に参画、2019年に「Creative Studio REING」を立ち上げる。主にジェンダー/セクシュアリティ/サステナビリティ等の課題を軸に、企業の戦略立案や広告制作に携わりながら、性別二元論のあり方を問い直すプロダクトやコンテンツの開発、コミュニティの運営を行う。
亜耶 バネッサ(あや・ばねっさ)
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業。一般社団法人メイクカラーアナリスト®アカデミーJAPAN東京校インストラクター。メイクカラーアナリスト®適正姿勢指導士。メイクアップ、パーソナルカラー、骨格&ラインアナリシス、ヘアスタイル、姿勢&ウォーキングの全てをトータルで指導するトータルビューティーアドバイザー。企業のスキルアップ研修、講演会、セミナー、ブランド監修やコンサルティング、プライベートレッスンなど全国で行っている。ヘアメイクアップアーティストとしても、撮影現場や結婚式を担当。
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