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Dec.

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column
1 Aug. 2023

「男らしさ」を押し付けないビジュアルコンテンツ

在原遥子
プロデューサー
在原遥子

ビジュアルコンテンツが人々にもたらすイメージは、人々の購買行動などにも大きな影響を与えます。企業やブランドのビジュアルの中に、「共感を持てる人物が、親近感のある生活を送っている姿が描かれていると購買意欲につながる」という調査結果も出ています。(※1)今回は「男らしさ」と「男性像」の変化にフォーカスして、Getty Images社が運営するビジュアルコンテンツ提供サービス「iStock」の分析を基に、ビジュアルコンテンツの影響について考えてみたいと思います。

 

「男らしさ」の変遷

日本では、伝統的な男らしさというと、経済的な成功のために懸命に働き、感情を表に出さず、家事にも参加しない、いわゆる「サラリーマン」や「おじさん」というイメージが真っ先に浮かびます。昭和の時代に描かれていた漫画に登場する「お父さん」には、家族の大黒柱として 1 日中働き、仕事が終われば同僚とお酒を飲んで帰宅する、といった姿も良く見受けられました。また TVCM などで見られた、かっちりとしたスーツを着て仕事に励み、アルコールやたばこを嗜む姿もかっこよく見えたかもしれません。

一方で、現代の「男らしさ」はどうでしょうか。これまで女性らしいとされてきた感性や創造性を大切にする男性や、共働き世帯の増加を背景に育児や家事を主体的に担う男性も増えて、物腰が柔らかく平和主義的、身だしなみやファッションにもこだわり、カジュアルで流行を取り入れたスタイルを好み、もはや性別にこだわらないといった考え方を受け入れる傾向が強くなっています。

2013年 伝統的なビジネスマン

121198301,Jacob Wackerhausen,iStock

2017年 家族と過ごす男性の姿

1419737387,Koh Sze Kiat,iStock

 

現実との乖離

VisualGPS (※2)の調査によると、日本の男性の 6 割程度は、「メディアや広告の中に、自分に似た“共感できる男性”が十分に表現されていない」と感じていて、世界平均と比較しても高い傾向にあることが分かっています。メディアや広告で「会社でバリバリ働き、21時に退社して同僚と居酒屋でビールを飲むスーツの男性」ばかりが登場したときに、例えば「フリーランスで仕事をしながら、週3回は子供を保育園に迎えに行ってそのまま家で夕食を作る男性」は果たして共感できるのか、ということだと思います。

さらに日本の男性消費者の10人に9人が、「仕事と家庭を両立させるためのサポートを求めていている」という結果が出ており、男性が子どもの世話や家事をしたり、家庭内でマルチタスクをこなしたりする姿も実生活の中で多く見られるようになりました。男性=仕事、女性=家事といった伝統的なジェンダーロールを表現したビジュアルコミュニケーションはもはや受け入れられにくくなってきています。

 

「共感できる」ビジュアルの重要性

企業やブランドは、日本の男性が「共感できる」ビジュアルをどう選択すればよいのでしょうか。インクルーシブでジェンダーステレオタイプのない「男らしさ」を表現するために、ワークライフバランスや働きやすい職場環境のほか、男性が育児や家事など家庭生活に積極的に参加する姿が見えるビジュアルコンテンツを採用することがとても大切です。さらには多様な体型やスタイルを認め、男性のセルフケアや心の健康もビジュアルコンテンツにおいて強調されていくことが、いまの男性の共感を呼ぶかもしれません。(※3)

女性が仕事をする傍らで、食事を作る男性。

  1444395205,Koh Sze Kiat,iStock

カジュアルな恰好で自分らしく働く男性。

1213860371,whyframestudio,GettyImages

 

皆さんが業務等で日本の男性のビジュアル素材を起用する際は、以下の点をセルフチェックしてみてください。(※4)

・男性の家庭での様子を表現していますか? 仕事をしながら子供の世話をしたり、家事を分担したりなど、家庭内の活動を男性が担っていますか?

・男性像を前向きに表現していますか?

・男性の仕事や遊びの瞬間をとらえていますか?

・他の人と協力して作業する男性の様子を表現していますか?

・ビジネスシーンでは、様々なタイプの人たちと偏りなく一緒に仕事をしている男性を表現していますか?

・自分を大切にしている男性の様子を表現していますか?

 

「Gender Equality」と聞くと、女性活躍推進を最初にイメージしてしまうことがまだまだ多い日本において、「男性の多様性」に寄り添う社会の実現も急務であると感じています。ビジュアルコミュニケーションにおいて、ステレオタイプにとらわれず、多様な声を反映し、さまざまな背景や経験を伝えることが、男性に限らずすべての人にとってインクルーシブで公平な未来を育むために重要です。今回VisualGPSの調査結果などを読み、今後はより一層ビジュアルコンテンツが人々に与える影響の大きさを意識していきたいと思いました。

 

文:在原遥子

 

※1:Getty Images VisualGPS 調査より。 

※2:ゲッティイメージズは、2020 2 月より、世界的な市場調査会社である MarketCast 社と提携し、26 カ国 13 言語で 1 万人以上の消費者と専門家を対象に調査を行い、「今、求められているビジュアルコンテンツ」を具体的な数字とともに明らかにした「VisualGPS」と呼ばれるガイドラインを作成しています。 

 ※3:出典=日本のために男らしさを再定義 – Creative Insights – Getty Images 

 ※4:出典=日本における男性像をポジティブに表現する – Creative Insights – Getty Images 

取材・文: 在原遥子
Reporting and Statement: yokoarihara

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