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Dec.

2024

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21 Jul. 2021

ソウル大学教授に聞く、多様な社会課題から学び成長する「BTS現象」

大塚深冬
プランナー
大塚深冬

世界的に活躍している韓国のアイドルグループ、「BTS」。

彼らが世界の人々に与えてきた影響について、人種や文化、ジェンダー観や世代などの社会的な観点から深く掘りさげる一冊『BTS オン・ザ・ロード』(玄光社刊)について、ココカラーでは以前ブックレビューを掲載しました。

今回、オンラインイベント「前人未到の地をさらに高みへと進むBTSに、わたしたちはなぜ熱狂するのか?『BTS オン・ザ・ロード』の著者が徹底解説」にて、著者のホン・ソクキョン氏(ソウル大学言論情報学科教授)に直接お話をうかがう機会をいただきました。

イベントの主催は、神保町にある韓国書籍専門のブックカフェ・チェッコリ。ソウル大学の研究室から参加してくださったホン教授と、70名以上の参加者たちの熱い想いが集まったイベントは2時間半以上におよびました。

 

— 白熱のオンラインイベント —

『BTS オン・ザ・ロード』でも紹介された内容を中心にしたホン教授によるプレゼンテーション。その中から、ココカラーとして注目した部分を、スライドとともに一部紹介します。

ホン教授は、フランスのグルノーブル大学で言論情報学博士号を取得され、2007年から世界の韓流に関する論文を発表されています。韓流現象の世界的な浸透を研究した本の執筆や、K-popに関する学術会議にも基調講演者として登壇されるなど、韓国屈指の韓流研究者であるとともに、BTSの所属事務所HYBEに信頼されている学者です。

ホン教授は、ARMY(アーミー)と呼ばれるBTSのファン約100人への直接取材なども通して、BTSを世代や多文化、人種やジェンダー観などの社会的な側面から研究されてきました。

ホン教授は、BTSを「新時代主義の時代で癒しを与える小さなヒーロー」ととらえて、複雑な階層や競争の中を生きる現代の若者たちとともに成長してきたと語ります。BTSとARMYの関係性と、そこから生まれた数々の社会的な活動や変化について「非常に自発的なファンダムは、アクティビズムの未来である」という言葉は、ココカラーとしても興味深い見解だと思いました。

著書を引用するかたちで前の記事でも紹介したように、欧米で一般的とされてきた「覇権的な男らしさ(hegemonic masculinity)」や新自由主義的で「権威主義的な男らしさ(toxic masculinity)」に対して、BTSは「ソフトな男らしさ(soft masculinity)」や「有害でない男らしさ(anti-toxic masculinity)」を提示してきたことにホン教授は注目しています。

また、人種や多文化的な観点からもBTSを考察し、これまでのハリウッドに代表されるような白人中心の魅力的な男性像に対して、東アジアの男性であるBTSが、地域性を超えたファッションや外見を通して、「マイノリティとしての特性を失うことなく、魅力的な男性として普遍的な価値」を世界に対して発信してきた点に触れました。

 

— ココカラー、ホン教授に公開インタビュー —

 

ここからは、ホン教授へのココカラーの取材内容を紹介します。イベントに先立って先生に頂いた回答とイベント当日のやりとりを、本稿用に編集した内容をお届けします。

 

 本の中で、「BTSが若者たちを導き、癒しを与えている」と紹介されていましたが、BTSの所属事務所であるHYBE社の「Music and Artist for Healing」という理念の“Healing”はどういう意味だと思いますか?

 

 「BTSの7人のメンバー」とHYBEとの間で、BTSが取り組むべき社会課題の共有はされているのでしょうか?HYBEの方針とメンバーの提案とのバランスが気になっています。コアメッセージやコンセプト(Love yourself / Speak yourself等)はやはり7人だけで作り上げているのか、それともHYBE社が打ち出しているものもあるのでしょうか。

 

「ホルモン戦争」の歌詞炎上など、BTSも過去には批判にさらされたことも多かったと思います。センシティブな言葉・問題とどう向き合うか(人種・政治等)の意思決定のフローについて、どうリテラシーを保っているのか?どう課題をインプット&アップデートされているとお考えでしょうか。

 

韓国でBTSが起こした変化にはどんなものがありますか?日韓では状況を比較されがちですが、韓国でも多様性に対する意識や「正解はこうである」という社会に何か変化はありましたか?

 

— 多様性を尊重する社会のヒントへ —

冒頭でも引用したホン教授の言葉のように、複雑な社会問題に興味を持つきっかけは人さまざまです。BTSはその一つの例として非常に興味深いと思い、今回ココカラーで紹介するに至りました。

 

ホン教授への取材を通して注目したのは、今でこそ世界的な人気を誇るBTSが様々な失敗や想定外の批判を受けてきたことと、その一つ一つに誠実に、柔軟に、自分たちの言葉と態度で対応してきたことです。

 

この態度と対応の裏には、事業としての明確な方向性を持ちつつ、メンバーの感情や表現、自主性を尊重するHYBEとBTSの関係性、さらに、ファンもBTSが間違っていれば指摘し、それをBTSが誠実に受け止めて改善するという良いサイクルがあることも教わりました。

 

特に、彼らが批判を受けるたびに、問題を理解し、直し、成長して「完璧になっていった」という点には、ダイバーシティ・インクルージョンの領域で活動する個人としても企業としても、学べることがあると感じました。私たちが目指す多様性を尊重する社会、そのヒントは、BTSがこれまでに切り拓いてきた新しい道にも見つけられるのではないでしょうか。

 

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以下のリンクもご参照いただけますと幸いです。

 

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取材:在原遥子、大塚深冬、金里沙

取材・文: 大塚深冬
Reporting and Statement: mifuyu

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