わたしたちの多文化共生③ 東京外国語大学
- 共同執筆
- ココカラー編集部
「ヒューマンライツ・フェスタ東京」が、11月4~6日に開催され、11月5日には多文化共生プレゼンコンテスト「多文化共生都市をめざして-大学生が考える東京の未来-」が実施される。明治大学(山脇ゼミ)、中央大学(成田ゼミ)、東京外国語大学(長谷部ゼミ)、法政大学(山田ゼミ)、早稲田大学(山西ゼミ)の学生たちが、東京を国籍や民族などにかかわらず誰にとっても住みやすい都市(多文化共生都市)にするにはどうしたらよいか、東京都に提言する。
cococolorでは各校のプレゼンメンバーのリレーコラムを紹介していく。第三回は東京外国語大学長谷部ゼミのチーム。
「財産」
~プレゼン大会を通して、東京都(あるいは日本)の多文化共生に対して抱いた意識~
私は五大学プレゼン大会に出場するに際し、一本の映画と出会った。それは、中村真夕監督の「孤独なツバメたち~デカセギの子に生まれて~」、ブラジルから日本にデカセギにやってきた移民を親に持つ子供達の現状が描かたドキュメンタリー映画だ。
彼らは外国籍であるため、日本での義務教育が適用されていない。義務教育ではないことから、様々な要因により教育をまともに受けられず、大多数が3K(きつい・きたない・きけん)と呼ばれる労働環境で生活費を稼いでいく。経済危機などの理由により、母国であるブラジルに帰国を強いられる子も。
16歳以下で満足な教育も受けられず働いている子供がいることを、私たちは見て見ぬふりをしたまま生きていていいのか、私はそんな問いを持ちながらも、映画に没頭した。さらに、映画の中で彼らのうちの一人はこう言っていた。「デカセギは僕らの運命、どんな親しい友人も、愛する家族も、恋人ともいつか別れがくることを覚悟している」と。家族や友人との絆が日本人よりずっと強い彼らの中には、いつもこの覚悟があった。いつか別れる運命だからこそ、今を精一杯生きる。そんな覚悟を彼らは幼いときから持って生きている。
私たちから見たら、彼らが可哀相などといった感想を持つかもしれないが、映画の中で出会った青年たちは皆、同じように「デカセギに来たことで、日本のことも学べたし、いいことだった」と口をそろえて言う。どんな過酷な状況に置かれても、前向きで彼らは生き続けていたのだ。
以上は映画を見ての私の感想であるが、これは決してフィクションなどではない。日本には教育や就職の面で過酷な状況にある在日外国人は大勢いる。
私たちは、プレゼン大会を通して(おこがましいかもしれないが)、そんな彼らの現状を変えるきっかけを東京都に提言したいと考えている。
このプレゼン大会を通して、多文化共生に深く関心を持ち、一本の映画に出会い、今でも苦しんでいる在日外国人の方々がいること、そしてその現状をどう変えていけるか、という意識を持つようになった。彼らの現状を変えたいという強い意志さえ持つようになった。
そこで、特に私が注目したのは、第二世代、そして彼らの学習支援と就職支援の間に空白があることだ。この空白を埋める何かを生み出してみたいと考えており、具体案についてはプレゼン大会で提言したいと思う。
ここに私が所属するゼミの指導教官である長谷部美佳先生の言葉を引用する。
「誰もが東京、日本で生活していることを周りに自慢できる社会、それこそが多文化共生の実現につながるのではないか。」
この言葉のように、日本社会が二つの文化をもつ子供たちを「重荷」ではなく、「財産」として見るように働きかけたい。そうすることで、子供たちの可能性を広げるだけでなく、社会も豊かになるのではないか。以上が、私の多文化共生に対する考えである。
◆第2回多文化共生プレゼンコンテストの概要
主催:東京都
企画運営:多文化共生プレゼンコンテスト実行委員会
日時:2016年11月5日(土) 13:00〜16:00
会場:東京国際フォーラム ホールD5(D棟5階)
参加費:無料 (入退場自由)
参加チームとテーマ:
中央大学 成田浩ゼミ
「多文化共生プランin多摩」
東京外国語大学 長谷部美佳ゼミ
「Career Design & TOKYO 〜育てよう夢のつぼみ〜」
法政大学 山田泉ゼミ
「MOTTAINAI PROJECT〜食から始まる多文化共生〜」
早稲田大学 山西優二ゼミ
「ムスリムから見る多文化共生〜自己と他者の関係の中で〜」
明治大学 山脇啓造ゼミ
「△キッズプログラムin東京〜子どもが描くカラフルな未来〜」
関連サイト:
多文化共生プレゼンコンテストFacebookページ
ヒューマンライツ・フェスタ東京2016の公式サイト
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