【国際男性デー】これからの男性の生き方とは?
- プロデューサー
- 在原遥子
11月19日は「国際男性デー」でした。男性の健康と社会的、感情的、物理的および精神的な幸福に焦点を当てることや、正の男性のロールモデルを促進することなどを柱として、現在30か国以上で祝われています。その国際男性デーを記念したオンラインイベント「これからの男子はどう生きていく? -Future of Manhood-」(主催:Lean In Tokyo)が11月13日に開催されました。
今回のイベントでキーノートスピーチをされたのは、大正大学心理社会学部准教授で男性学研究者の、田中俊之(タナカ トシユキ)先生。現在の日本社会での男性の生きづらさはもちろん、次世代の男子たちはどのように生きていくのかという部分も重要な課題です。私自身も7歳男子の母として、男の子を持つ親世代はどのようなことにコンシャスであるべきか、大変興味がありましたので、イベントレポートをシェアさせていただきます。
男性学研究者 田中俊之先生(大正大学心理社会学部准教授)
その前に、イベント主催のLean In Tokyo(※1)があらゆる年代の男性 309人に対して2019年に実施した、男性の生きづらさに関する意識調査(※2)を見ておきたいと思います。職場や学校、家庭の場で「男だから」という固定概念やプレッシャーについて、78%の男性(「まったく感じない」と回答した人以外)が、多少なりとも「生きづらさ」を感じていることが明らかになっています。
具体的に感じる「生きづらさ」として挙げられたのは、「デートで男性がお金を多く負担するべき」「男性が女性をリードすべき」「男性は定年までフルタイム正社員で働くべき」などの固定概念でした。そのほかにも「男性が弱音を吐くのは恥ずかしい」「高収入でなければならない」という考えも、「生きづらさ」に繋がるという回答もありました。男性の価値や役割が、単一的である傾向が感じられます。
田中先生がまずシェアされたのは、「男性自立度チェック表」。そのなかには、役所への届けが一通りできることや、自分が飲むお茶は自分で入れるか、ボタン付けができるかまで含まれています。いままでは「できる男」というと、自然と仕事ができる男性を思い浮かべがちでしたが、これからは仕事だけでなく「生活力」が必要な時代になってくるのです。
また、田中先生が息子さんとテレビでアニメを観ているときのお話をされていました。ある男性キャラクターが妻に「お茶をくれ」と頼んでいるシーンには、田中先生が声に出して「自分でやればいいのにねえ」「なんで奥さんに頼むんだろうねえ」とツッコミを入れながら観ると言います。こういう副音声があると、メディアやコンテンツから受けるジェンダーバイアスも、子供たちは複数の視点を持って考えられるようになるかもしれません。とてもいいコミュニケーションアイデアだと思いました。
男性学を研究されている田中先生ですが、男性問題を語る難しさがあると言います。なぜなら、いま社会課題になっている「ジェンダー平等」ということが、女性差別解消という意味では男女二元論でありつつ、LGBTQ差別解消という意味では男女二元論から卒業しなければならないということだからです。「男性問題」とはこれらとは別の文脈で考えられるべきで、男性は「男性ならでは」の問題を抱えているのです。女性差別を解消するのが「女性が生きやすい社会」なら、「男性が生きやすい社会」とはどのようにそれと両立するのかも、これからもっと議論が進んでいくべきだと思います。
最後にこれからの時代を生きる男の子たちとその親たちへ、田中先生からのメッセージもありました。
・プライドを確立しよう(見栄ではなく、誇り)
・自分の中の多様性を認めよう
・人のために(利他的に)行動しよう
特に二つ目の「自分の中の多様性」が響きました。子供には、「自分の中には情けないところも弱いところもあり、それは恥ずかしいことではなくすべて自分なのだ」ということを認識し、自分に誇りをもって社会で生きていってほしいと思いました。以前私が書いたBTSの記事(https://cococolor.jp/btsontheroad)でも触れた、「オルタナティブな男らしさ」にも繋がる考え方でしょう。
実は、電通総研が2021年に行った「男らしさに関する意識調査」(※3)によると、若年男性において、男らしさ規範への共感が高いほど、いじめや暴力の被害者にも加害者にもなっているという結果が出ました。親としては、自分の子供が加害者になる可能性にも向き合う必要があるということも痛感します。
女性の社会進出が叫ばれて久しいですが、男性の生き方の多様性を考えたときにはまだまだ課題があると感じました。国際男性デーをきっかけに、社会が、女性が、男性に無意識に寄せている期待やプレッシャーについて、是非自分ゴトとして考えてみましょう。
取材・文:在原遥子
※1:Lean In Tokyoとは
FacebookのCOOであるシェリル・サンドバーグが率いるグローバルな市民活動「Lean In (リーン・イン)」は、彼女が2013年に『Lean In』と題した本を出版したことをきっかけに誕生し、現在は170ヵ国の約42,000に及ぶサークルが、女性の活躍を支援することで多様性のある社会を実現するために、様々な活動を展開している。その中でLean In Tokyoは、Lean In Orgの日本地域代表サークルとして2016年3月から本格始動し、女性が一歩踏み出すきっかけをつくることと、これを後押しできる仲間を増やすことを目標に活動を行っている。
公式HP:leanintokyo.org
※2:出典=2019年「男性が職場や学校、家庭で感じる生きづらさに関する意識調査」
https://leanintokyo.org/20191106press-release/
※3:出典=2021年「男らしさに関する意識調査」
https://institute.dentsu.com/articles/2234/
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