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Dec.

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10 Dec. 2021

カンヌ受賞作品から考える、障害とクリエイティブ

徳永栞
プランナー
徳永栞

今年6月にカンヌライオンズ2020/2021がフルオンラインで開催されました。カンヌライオンズは毎年6月に開催されている世界最大級のクリエイティブの祭典ですが、2020年は新型コロナウイルスの影響で中止となったため、今回は昨年分も含めた2年分の受賞作品が発表されました。

 

受賞作品の中には社会課題解決に取り組んだものも多いのですが、①LGBTQ+、②障害、③人種、④女性エンパワメントいう4カテゴリーに分け、特にアンメットニーズに着手している事例をピックアップして連載形式でお伝えしていきます。
※「アンメットニーズ」は「まだ満たされていないニーズ」の意で使用しています。

 

前回はLGBTQ+がテーマでしたが、今回は障害をテーマに2つの受賞作品をピックアップします。

 

自社スタッフを引き抜くよう呼びかけ!?障害者雇用を促進する石鹸

 #Steal Our Staff (ブランド:Beco、国:イギリス)

 

まずはこちら。
障害者雇用を促進するため、イギリスのトイレタリー企業であるBecoが障害を持つ自社のスタッフの履歴書をパッケージにした石鹸を販売した施策です。
上記動画によると、イギリスの110万人の障害者は職に就くことができず、障害者の雇用機会が少ないという社会課題があります。80%のスタッフが障害を持つBecoは、より多くの企業が障害者雇用を進めるべきだと考えており、石鹸のラベルに写真付きの履歴書を付け500以上の店舗にて販売しました。

本施策では、自社で障害者雇用を進めるだけでなく、他企業も巻き込みながら社会全体で障害者雇用を促進し、「障害者が働きたくても働けない」というアンメットニーズに対処しています。OOHにて他の有名企業に対して「Steal Our Staff」と、自社のスタッフをヘッドハンティングするよう呼びかけています。

誰もが手に取る身近な商品である石鹸や多くの人が見るOOHにて、障害を持つ自社スタッフの魅力や可能性を伝えることで、働きたい障害者が働ける社会にしているところが本施策の意義です。

Health & Wellness部門のグランプリを受賞しています。

 


楽しく発話訓練ができるプレイリスト

Saylists (ブランド:Warner Music、国:アイルランド)


次にこちら。
発音が難しい特定の音がある人気アーティストの曲を抽出したプレイリストを作成し、楽しく発話訓練ができる施策です。

若者のうち12人に1人は発話障害を持っています。彼らは治療のために発音しにくい音がある単語を繰り返し発音していますが、子どもにとっては何度も何度も同じ単語を発音するのはとても退屈であるという問題がありました。Apple Musicが誇る7000万曲の中から、”T”や”D”等、発音が難しい特定の音ごとに個別のプレイリスト「Saylists」が作成され、子どもたちはそのプレイリストの音楽に合わせて繰り返し発話練習をすることができます。

音楽に合わせて発話練習ができるプレイリストにより、「退屈せずに楽しく発話練習をしたい」というアンメットニーズに対処しています。
楽曲データの分析によりプレイリストが作成されていますが、データ分析を通じて今まで解決できていなかった上記アンメットニーズに対処できることが本施策の意義です。

私自身、Apple Musicにて実際に「Saylists」を再生させ、ビートルズのような往年のレジェンドからアリアナグランデのような今を時めくアーティストまで、本当に口ずさみたくなる楽曲がプレイリスト化されていることを体感しました。昔からある音楽の力と現代ならではのデータの力を掛け合わせによって生活者に寄り添っていることが、本施策の魅力だと思いました。

Creative Data部門のグランプリとRadio & Audio部門ゴールドを受賞しています。

 

上記2事例いずれも楽しく活き活きと生活することができるよう生活者に寄り添っています。生活者に寄り添うアイデアを生み出す秘訣は、石鹸・音楽等の日常に欠かせない存在とクリエイティビティを掛け合わせることだと認識しました。

私自身、プランナーとして生活者のアンメットニーズを解決するアイデアを考えたいと思います。

次回は人種をテーマにカンヌ受賞事例を紹介します。どうぞお楽しみに!

取材・文: 徳永栞
Reporting and Statement: shioritokunaga

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