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19

Jan.

2020

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9 Jan. 2020

「身の回りに多く存在している共用品とは~共用品と消費者とのかかわり~」

共用品と聞いてどのようなモノを想像をするだろうか。 

メジャーなものでいえばシャンプーボトルのギザギザや、アルコール飲料缶上部の「オサケ」の点字、スイッチ部の凸表示、電車・バス内の電光表示、軽い力で使える文具など、実は私たちの身の回りに数多くの共用品が存在している。

 私たちの身の周りにある共用品の例

これらの共用品開発に関わり、誰かの「不便さ」や「便利さ」をみんなの「使いやすさ」に変える活動をされている共用品推進機構の星川 安之(ほしかわ やすゆき)氏に、話を伺った。

 星川安之氏写真 共用品推進にて

◼️“みんな”で遊べるおもちゃとは?

星川氏は大学在学時、重度障害の子供たちが通所する施設で手伝いをする経験を持ち、施設での経験を通して、障害のある子どもが遊べるおもちゃを開発できないかと考えたことからおもちゃメーカーに入社した。ここから星川氏の障害のある子どもが遊べる玩具開発への取組が始まったのだが、特殊な仕様にするのは費用的にも難しいため、なるべくシンプルな工夫により解決できる方法を探していた。

実際に視覚に障害のある子供たちと接するなかで、まずはメロディーボールという目の不自由な子供たち専用の玩具を開発した。これは、ボールの中にICチップを入れたもので、軽い衝撃を与えると30秒間メロディが鳴るため、目の見不自由な子どもにもボールの位置が分かり、遊べる玩具になっている。しかし、ICチップが入っていることにより値段が上がってしまう。そこで開発したのが、商品に“小さな凸”をつける方法だ。“小さな凸”であれば費用は抑えながら、目が不自由な子供でも見える子供と一緒に遊ぶことができる。

そして、“凸”をつけたことは、現在数多く存在する共用品の大きなはじめの一歩となった。

 

◼️シャンプーボトルに付与された“ギザギザ“

“みんな”にとって遊びやすいおもちゃを開発してきた星川氏だったが、おもちゃに限らない日用品にも、共用品開発の視点が生かされることになった始まりは、“凸”を応用して開発されたシャンプーとリンスを区別するための“ギザギザ”だ。

シャンプーボトルに付与された“ギザギザ”

シャンプーとリンスのボトルを間違える人は多く、メーカーである花王株式会社にお客様からの意見が度々寄せられていたが、その意見の3分の2は障害のない人からのものだった。

視覚に障害のある人はボトルに輪ゴムを巻いたり、それぞれの位置を決めるなど、各家庭での工夫によって間違いを防いでいたが、形が同じな二つのボトルに関する対策は、障害の有無に関わらず共通の課題だったのだ。

現在の形に至るまでに、担当者は梨地のようなザラザラした加工など、多くのサンプルを作り、モニターを繰り返した結果、誰にとっても分かりやすくデザインの汎用性も高いことから、キャップの上もしくは本体の横にギザギザをつける方法が選定された。さらに、業界内で統一して、シャンプーへのきざみ付与を浸透させるべく、本数や高さやピッチなど詳細の規定は設けず、あくまでシャンプー側にギザギザをつけることのみを統一した。

現在多くのシャンプー容器にギザギザが付いているが、驚いたことにこの存在を知らない人はまだ多いという。「みんなに伝わりにくい理由として、“さりげなさ”があると思います。人間は痛みを伴うものに対しては意識に残りやすいですが、さりげなくあるものに対して日常で意識が回りません。」と星川氏は語った。

また同様な統一の手法は、牛乳の紙パック飲料の開け口がどちら側か分かるよう、開け口の反対側に半円の切り抜きを施すやり方に応用されている。

牛乳紙パック飲料上部開け口と反対側の半円の切り抜き

◼️ユーザーとなる障害者を仲間にした開発チーム

おもちゃ開発のために、目が不自由な子供の自宅を訪問したときには、彼女のために母親が自作した家の模型を見て衝撃を受けたそうだ。実際に子供が中に入れるサイズで、自分の家の構造を触って分かるようにしてあり、一緒に生活しているからこそ必要に迫られて作られたものだと感じたという。

共用品を今後も検討するにあたり、障害のある方にただアンケートをとるだけではなく、対象者が作る側・売る側と一緒になって何でも話し合える環境がないと本当のニーズを引き出せないと気付いた星川氏は、各種メーカーを中心とした共用品に関するプロジェクトを立ち上げた。ここでは実際に障害のあるメンバーも加わり、日常生活においてどんなことに不便を感じ、どんなものがあったらいいかを深く理解すべく、朝起きてから夜寝るまでどのように過ごすかを伺う中で、当人が当たり前のように過ごしている中にも数多くのハードルがあることが分かった。

 また、このプロジェクトのメンバーで、家電メーカーに勤務の人が訪問した目の不自由な人の家では、彼が開発に携わった洗濯機が使用されていて、本人は喜んでそれをその家の人に伝えたところ、彼女にとってその洗濯機のシートスイッチは凹凸がなく、どれが何の操作ボタンか分かりづらく、非常に不便に感じているという声が返ってきた。この声はすぐにメーカー内で共有され、電源ボタンに突起が付与されることになり、これをきっかけに家電業界全体でスイッチのON側に「小さな凸」その他のスイッチに点字が表示されるようになった。続いて多くの業界で規格を統一化することを目的とした日本産業規格(JIS)の制定につながった。

 

◼️誰でも便利にものを使えることが当たり前の世の中に

共用品の考え方も当初に比べると浸透してきたが、まだまだ共用品の枠組みを拡げるべきところがあると星川氏は感じており、すべての人にとって使いやすく分かりやすいモノづくりを共用品推進機構として支えていきたいという思いは、ある難病の方との出会いを通じて、さらに強まったそうだ。

現在指定されている希少難病は300種以上、指定されていない難病も含めると2,000以上にも及ぶといわれる。今後の星川氏の目標は、誰にでも使いやすい商品やサービスを普及し、すべての人が暮らしやすい共生社会を実現すること。「誰でも便利にものを使えることはごく当たり前」ととらえ、「共用品という言葉をなくす」ことを目指す。

 

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◼️取材をおえて

インタビューをさせて頂いた星川氏の共用品推進機構には様々な共用品があふれていた。冒頭でも述べたように実際に身の回りに多くの共用品が存在しており、多くの消費者の声が形となってそれが様々なところで練られ、記事内で述べたシャンプーボトルや牛乳紙パック飲料など今ではみんなにとって必要不可欠なものに変化を遂げている。

この話を聞き、様々な人が関わり一般的な使いやすさや快適さを追求した結果、一部の人(障害のある人)への使いにくさや不便さにつながっており、“障害の壁を越えて双方が使いやすいもの”を作るためには、障害の有無にかかわらず多くの消費者の声が大切であると痛感した。また共用品はどれも長い期間様々な人がかかわり試行錯誤して作られたものであった。この試行錯誤があったからこそ消費者が安心して楽しく使えるものが生まれたのだなと感じた。

日本の共用品は他国より進んでおり、国際規格になったり、考え方を広めたり、共用品の基準を作っていた。

また、他の人たちを楽しませ、自分も楽しいという状態にしたい、という星川氏の考え方に感銘を受けた。さらに、『不便さ調査で改善点を明らかにするのではなく、初めから「共用品」にできればと思う』という言葉に重みを感じ、この人柄こそ共用品をここまで広めた要因だと確信した。

共用品もユニバーサルデザインもインクルーシブなど世界にはさまざまあるが、今回の取材を通して、すべて目的は一緒であると感じた。今後、世界で共用品がさらに普及し、障害の有無だけではなく、すべての人が使えるものであふれる世界になることを切望する。

星川氏と筆者 共用品推進機構にて

 

参考)

◼️共用品の5つの原則

共用品とは、以下5つの原則を満たし、身体的特性や障害の有無にかかわりなく、より多くの人にとって使いやすい製品、施設、サービスのこと。

①多様な人々の身体、知覚特性に対応しやすい

②視覚、聴覚、触覚など複数の方法により、分かりやすくコミュニケーションができる

③直観的で分かりやすく、心理負担が少なく操作、利用ができる

④弱い力で扱える、移動、接近が楽など身体的負担が少なく利用しやすい

⑤素材、構造、機能、手順、環境などが配慮され、安全に利用できる

 

◼️過去の星川氏に関するcococolor記事

子どもと、おもちゃとダイバーシティ その2

みんなで遊ぶためのおもちゃに施されている工夫について、子どもの安全を第一に考えつつ、制約の中でいかに楽しめるおもちゃを作るか、共遊玩具の事例について紹介。

 

みんスポ・ソーシャルドリンクス Vol.3 みんなの遊びの未来系を考える。

「みんなの遊びの未来系を考える。“おもちゃ”と”ゆる”で、スポーツはどこまで広がるか」をテーマに、星川さんがゲストスピーカーとして登壇。

 


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