メルカリの挑戦:ビジネス目標を達成するためのダイバーシティ&インクルージョン
- 副編集長 / ストラテジックプランナー
- 岸本かほり
メルカリは日本発祥のフリマアプリのスタートアップ企業で、六本木ヒルズにオフィスを構える。東京オフィスには、約40か国から集まるメンバーが働いており、エンジニアの30%以上が海外からのメンバーであるという。
オフィスに足を踏み入れた瞬間、様々な国にオリジンを持つ人々が笑顔で自由に働いている様子を見て、日本企業ではなかなか考えられないような空間がここには存在していると実感した。今回は、そんな明るく可能性あふれるメルカリの職場環境の秘密に迫る。
ビジネスに直結するダイバーシティ&インクルージョン
D&Iについて様々な取組をしているメルカリ。彼らはダイバーシティをCSR文脈ではなく、ビジネスと組織の成長の為に必要なものであると語っている。
世界への進出に挑み、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」ため、世界の顧客ニーズへの対応と、優秀なメンバーの確保・採用の2点を行うにあたって、多様性が必要不可欠であると考えているからだ。
メルカリの掲げるD&Iの特徴
メルカリの掲げるD&Iには、独自の特徴が大きく3点見られた。①D&I施策をボトムアップで構築し、トップダウンで支援すること、②定量的な目標を持たないこと、③少数派・多数派を区別せず、グループ化を行わないこと。これは、ダイバーシティ&インクルージョンチームのメンバーと、経営陣とが複数回の議論を重ねながら定めたものだという。
① D&I施策をボトムアップで構築し、トップダウンで支援することについて、元々はD&Iは、有志4人のクラブから始まったものが成長し、プロジェクト化、その後、D&Iチームとして部署発足をしたという。
プロジェクト発足から、部署としての成長を遂げるまで、わずか半年間というスピード感には驚かされる。様々な国籍の人々との交流促進であるChat lunchや言語交換、クラブ活動などを実施しているという。
② 定量的な目標を持たないことについては、性別による採用活動が例として挙げられていた。例えば、女性エンジニア不足、という問題に対し、多くの企業は「○年までに△%まで女性の採用率を引き上げる」等の数値目標を立てることが多いが、メルカリはあくまで、数値目標を持たない。その代わりに、“ポジティブアクション”として、IT業界で働く女性のエンパワーメントを目的とした大規模カンファレンスWoman Who Codeのスポンサーシップや勉強会、国際女性デーのランチイベント等、女性プログラマーの学習支援を行っている。D&I施策としては、企業視点で近視眼的に見るのではなく、社会視点で優秀な女性エンジニアを増える未来に必要なことを考えるのが必要だと語る。
③ 少数派・多数派を区別せず、グループ化を行わないことについて。メルカリは、わざわざ少数派・多数派の枠を作って、区別することを行わない。社内見学の中で、社内に個人が利用することができる「Wellness Room(多目的部屋)」が存在している。この部屋は特に用途が決められておらず、だれでも、どんな用途にも使用していいという。例えば、礼拝に使ってもいいし、運動やヨガに使ってもいい。用途を定めていないのは、例えば、イスラム教徒専用で、礼拝を行う人しか使えない部屋という不便さを取り除き、だれもがどんな用途にも使える部屋とすることを通して、グループ化による壁や無駄を取り払うことが目的だ。
新フロアは、D&I施策「実験」の場
今回新設のフロアでは、前述した多目的部屋や、車いすの従業員でも無理なく座ることができる昇降式の机、それぞれの目的に合わせて作られた部屋の数々を見学させてもらった。
新フロアのオフィスコンセプトは「実験」。うまくいかなければ、その形を変えられるような余白のある作りとなっている。
その他にも、現在既にあるD&I施策をいくつか見学させてもらった。
メルカリのD&I施策は、多様なメンバーが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境づくりのために進められている。ボトムアップの提案で、様々な施策が実験的にすぐに走り出す。
様々な国籍・バックグラウンドを持つ社員が存在する職場で、彼らが働きやすく、イノベーションを起こしやすい環境を作る。
CSR文脈ではなく、『新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る』というビジネス上の目的を追い求める手段としての、D&I施策はスピード感と柔軟性がある。
これらが、メルカリ社員の笑顔と、企業としての強さ・柔軟さを支えているのだと感じた。
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