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Dec.

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interview
25 Feb. 2019

障害を、身体を動かすバリアにしない。

吉澤彩香
プランナー
吉澤彩香

カラダを動かす。社会が動く。
身体性から始まる、風が吹けば的共生社会のヒント。

 

カラダを動かす。

スポーツ、ダンス、通勤、家事など、あらゆる生活の場面で、あらゆる人が意識・無意識に行っていること。

私たちの誰もが、平等にひとつずつ持っている、様々な形のカラダ。

身体を動かすことの効果は、健康増進だけではなく、それ自体が自己表現になったり、さらには、人と人との距離を近づけたり、言語を越えたコミュニケーションになったり。そして、その活動がコミュニティや社会を作ったりしていきます。

ある一人が「カラダを動かす」ことが、インクルーシブ社会実現への、大事な一歩になっているかもしれない。

そんな視点で、身体活動にまつわる、魅力的な取り組みをされている方々にお話を聞いていきます。

 

Vol.1
障害を、身体を動かすバリアにしない。
SLOW LABEL
とSOCIAL WORKEEERZの取り組み

 音に合わせて自由にカラダを揺らすと、ダンスになる。音に合わせて演ずると、パフォーマンスになる。何れも、自己表現だったり、観ることで刺激されたり、共感したり、言語を越えたコミュニケーションです。

音楽イベントにてカラダを揺らしながら音に酔いしれているときに、あることに気がつきました。

みんな笑顔で踊っている。

そして、その空間にいる人たちが、以前から友達だったかのように、笑顔で一緒に踊りだしていました。

音楽とダンスフロアさえあれば、世界中を笑顔にできるのでは。と、思える出来事。

“みんな”がダンスやステージパフォーマンスで笑顔になるといいなと思うと、“みんな”が参加できるイベントって、どんなイベントだろう?という疑問にたどり着きました。

“みんな”参加できる。それは、老若男女問わず、社会的マイノリティの人たちも楽しめる多様性への対応力が必要です。そのような活動をされている人が日本にいらっしゃいました。

 一人目は、栗栖良依さん。多様性と調和のある世界を目指してアートの力で国や分野をこえた共創をうみだすSLOW LABELのディレクターで、リオパラリンピック閉会式の「フラッグハンドオーバーセレモニー」ではステージアドバイザーを務められ、東京2020でも、開会式・閉会式4式典総合チームのクリエイティブディレクターをご担当されています。

二人目のTOMOYAさんは、『Danceで福祉をデザインする』をコンセプトとして活動されている、SOCIAL WORKEEERZの代表で、障害のある人とない人が一緒にダンスをする「チョイワルナイト」というイベントの開催や、福祉施設や学校などでのワークショップを行われています。

パフォーマンスやダンスなど、障害のあるなしに関わらず、様々な人が一緒にカラダで表現するという共通の取り組みをされているお二人に、活動に込めた思いや、近況、これからの狙いについて伺いました。 

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左:栗栖良依さん 右:TOMOYAさん

 

お二人にご対談いただいたのは、横浜市の象の鼻テラス。ここは、象の鼻パークのレストハウスであるとともにアートやクリエイターの創造拠点でもある施設です。SLOW LABEL活動拠点のひとつとして、SLOW LABELが主催するイベントやワークショップなども開催されています。

 

 体を動かすこと、自己表現することに、障害が大きなハードルになっている。

TOMOYA:僕は、年に一回、『チョイワルナイト』という障害のある人とない人が一緒にダンスをしてボーダレスに楽しめるイベントを開催しています。“障害者”ってひとくくりにはできなくて、人それぞれ違った特性があります。例えば、見た目で障害があるかわからない方もいらっしゃいますし、車いすを使用されている方もいます。さらに言えば車いすを使用されている方も個々に全然違った特性があります。お住まいにしても、福祉施設にお住まいの方もいれば、在宅にお住まいの方もいます。大々的なメディア発信や告知でイベントの参加を呼び掛けるよりも、障害のある方からのリアルな口コミが強いです。同じニーズを持つ当事者の方の「自分にもできたよ」「楽しかった」という体験談のほうが、共感を持てたり、安心・安全を感じてもらえます。

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TOMOYAさんが開催されたイベント「チョイワルナイト」

栗栖:障害のある人たちが舞台に上がることに心理的バリアを持っているならば、それを取り除く仕組みが必要だと思いました。そこでSLOW LABELでは現在、“アクセスコーディネーター”という、障害のある人が舞台に上がるまでのサポートができるプロフェッショナルや “アカンパニスト”という舞台の上で障害のある人が最大限の表現ができるようさりげなくサポートするパフォーマーを育成してアサインしています。何かあったときの緊急対応やアンテナを張りながら対等な立場でパフォーマンスできる人です。また、コスチュームデザイナーやメイクアップアーティストには、パフォーマーの精神的なバリアを取り除くために、衣装を着せてメイクをしたりする際に彼らのメンタルコンディションもチェックして、リラックスさせる役を担ってもらっています。最終的に衣装を着せメイクをし、舞台に送り出すタイミングでパフォーマーに触るポジションだからこそできることがあるんです。

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栗栖さんディレクションの舞台「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017」

TOMOYA:配慮がないままイベントを開催しても、障害のある参加者へ詳細なところまで手が届かず参加しずらかったり、十分に楽しんでもらえない部分はたくさん出てくるかと思います。

いきなり私も網羅できたわけではありませんが積んだ経験がノウハウになっているので、開示していきたいです。

 

キーワードは“余白”“揺らぎ”。プロのダンサーにとっても刺激になるプロセス。

栗栖:ダンスやパフォーマンスの目的によってアプローチが違うけれども、共通してるのは、“余白”をもたせて柔軟に対することです。思い通りにならないことだらけなので、計画通りにいかないことを前提で計画しています。バックアッププランの準備は常に必要です。

TOMOYA:僕も、個々の身体的な配慮も考えて、ダンスでも揺らぎを持たせるようにしています。その揺らぎが相互にクリエーションの幅を拡げると感じました。

栗栖:その時のレスポンスに合わせて、自分も柔軟に対応できるような余白や揺らぎが必要なので、わたし自身、予測不可能な動きに対しての臨機応変なリアクション力が鍛えられます。プロのダンサーにとっても想定されたレスポンスの形よりも、予測不能な動きは刺激になり、自分も磨かれて楽しいそうです(笑)。

 

初対面のコミュニケーションへの配慮

TOMOYA:「チョイワルナイト」では、ダンサーのスタッフが参加者をサポートながら、輪に入ることが苦手な人や障害のある方が、自由に踊ったり、ダンサーとのセッションにスムーズに交われる場面を、音楽の盛り上がるタイミングにフロアーダンサーを導入したり、会場を構造化して、参加者同士が自然にコミュニケーションが生まれる演出をし、積極的に機会を作ります。

 栗栖:SLOW LABELの場合は作品作りをする前に、必ず、金井ケイスケさんのサーカスワークショップに参加してもらい、みんなのコミュニケーションの土台作りとして、ウォーミングアップをしてもらっています。

TOMOYA:僕もSLOW LABEL のワークショップに参加させていただき、徐々にサーカスのレベルを上げていくやり方とか、とても勉強になりました!

 栗栖:私もSLOW LABELのスタッフも、実際に自分たちでソーシャルサーカスを体験し、何度も試行錯誤を繰り返しながら、限られた時間の中で、その場ではじめて会った人たちでも豊かなコミュニケーションをとれよう、プログラムを培ってきました。

金井ケイスケさんのソーシャルサーカスは、Vol.2で取材させていただきました。ご期待ください!

 

障害があってもなくても、自分で決められる「選択肢」がある世の中を目指す

TOMOYA:みんなの意識を急に変えることは難しいけれども、エンターテイメントの力を活かしていけばいいと思います。

栗栖:例えばイギリスでは、障害者が日常生活において意識的に自立している率が高く、成熟していますし、移民などが多く多様性もあります。2021年以降の日本が、多様な社会になるいいと思うんです。多様性のある社会のひとつの側面として、障害者も健常者と同様にもっと選択肢が増えることが大切だと感じます。スポーツ面でいうと、障害者の場合は、全くスポーツをしないか、プロ(パラリンピアン)になるかという極端な選択肢しかみあたらないのが現実です。健常者ですと、趣味としてスポーツを楽しんだりダンスを習ったりと、余暇活動のグラデーションが幅広いんです。

 

Cococolor読者へのメッセージ

栗栖:イベントは作り上げる過程で様々なフェーズがあり、たくさんの人が関り、巻き込まれるものだと思っています。オリンピックは世界最大のイベントであるので、最大の規模の人が巻き込まれます。そのプロセスにおいて技術や関係性、個々人の経験が生み出される中に、障害のある人との関りもたくさん生まれるといいなと思います。ボランティア活動や、観戦などを通して2020年は、日本全国の人に非日常が起こると思うので、2020年にたくさんのことを体験してもらい、その体験を糧として、2020以降もみんなにとって明るい未来にしていきましょう。

TOMOYA:2020年のオリンピック・パラリンピックの式典に出演、若しくは出場する当事者の方々のエンパワーメントされた力が、2020年以降も残るといいなと思います。海外の人にとって、日本のインクルーシブってすごい、と思ってもらえたり、コミュニケーションそのものがフラットで多様であることが当たり前になったりしていって欲しいです。僕自身は2021年以降の文化形成と持続にコミットすることが本番だと思って、活動して行きたいと思います!

 

SLOW LABELは、東京2020オリンピック・パラリンピックでの開閉会式のプランニングメンバーとして活動される栗栖さんを中心に、2020年に向けて非常に精力的に活動されています。しかし、 2020年はゴールではなく、ここがきっかけとなり50年後100年後により良い社会になっていくために、2021年からが、本番だという思いを、栗栖さんとTOMOYAさんはお話しされていました。

お二人のお話で特に印象的だったのは、“余白”や“ゆらぎ”を持つことの大切さです。障害のある方々に対してだけでなく、誰に対しても、余白をもって接することは、コミュニケーションをよりスムーズにするでしょうし、これからの仕事の進め方にもヒントがある、と感じました。

一人一人の意志があれば、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会をきっかけに、より社会やコミュニケーションがボーダレスとなります。また、障害のある方が社会に参加するためには、これまで触れ合う機会の少なかった人達が、。自分には何ができるんだろうか、と考えることが第一歩になると感じました。長年の活動を通して豊富な知見があり、インスピレーションをもらえる、SLOW LABELさんやSOCIAL WORKEEERZさんの活動に、ぜひ、参加してみてください!

 

********イベント等告知**********

【Slow Label】
公式WEBサイト https://www.slowlabel.info/

イベント情報
SLOW CIRCUS SCHOOL (スローサーカススクール)
日時:4月6日(土)10:00-12:30
場所:新豊洲Brilliaランニングスタジアム
定員:20名
事前申し込みが必要です。
https://www.slowlabel.info/1758/

 

********イベント等告知**********

【SOCIAL WORKEEERZ】
公式WEBサイト
http://social-workeeerz.com/

イベント情報
3月2日神奈川県社会福祉協議会主催[福祉×〇〇‼]
3月13日「Para gara」総合司会(TOMOYA/大前光一)
3月16日横浜国大特別支援学校OB会ダンスワークショップ
4月2日自閉症啓発デー ブルーイベント(東京タワー)
5月12日UNIFES(千葉県松戸 森のホール)
8月17日「ゲキワルナイト(チョイワルナイトvol.10)DANCEと福祉をつなぐ」(NOCTYホール)OPEN12:00 START13:00 CLOSE16:00

取材・文: 吉澤彩香
Reporting and Statement: ayaka

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