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28

Sep.

2022

event
22 Apr. 2022

【後編】再犯防止とソーシャル・イノベーション

増山晶
副編集長 / クリエーティブディレクター/DENTSU TOPPA!代表
増山晶

【レポート】「刑務所と協働するソーシャル・イノベーション」後編

*期間限定でアーカイブ動画配信中。
【公開期間】2022年4月5日~2022年5月5日

■インスピレーション・トーク MC:MASHING UP編集長 遠藤祐子氏

1 再犯防止を目指してわたしたちにできること

受刑者専用求人誌『Chance!!』創刊者 三宅晶子氏

認定NPO法人育て上げネット理事長 工藤啓氏

(写真左より 遠藤氏、三宅氏、工藤氏)

(MC)三宅さんは受刑者対象の求人誌の発行人・編集長だが出所者の就業について

 

三宅氏「出所者が求めているのはアットホームさ。母性のようなものが社長のメッセージに感じられる会社、福利厚生の範疇を超えてよりそう会社に応募が集まり、定着率も高い。

応募率も再犯率が高い会社もあるが、それは社長が何度も受け入れるから。見捨てないということ。前科前歴の有無にかかわらず寄り添って人を受け入れる会社は、社会的に生き残る会社ではないか。悪いことをしたから悪い人、ではない。」

 

(MC)工藤さんは少年院在院・退院少年の自立支援をされているが、大切なことは

 

工藤氏「ひとつは、24時間365間彼らと寝食を共にしている刑務官と法務教官の土台を前提に物事を考えること。もうひとつは、子どもたちは大人を信頼できず、常に大人を試していることを理解するということ。知ったふりをしたり、タブーを作ったりせず、オープンに正直に話すことが大切。」

 

(MC)就労支援をしていて、やり直せる人とそうでない人との違いはどこにあるか

 

三宅氏「きっかけとタイミングかと思う。きっかけには出会いも含み、当社は求人というきっかけを多く作ろうとしているが、本人のタイミングでないと、逮捕前と同じことになったりする。」

 

(MC)更生支援の課題とは

 

工藤氏「少年院や刑務所の中と外で担当する部局や担当者が違う。両方を知っている人がいない弊害がある。出院者や出所者は会社でなく個人を信頼する傾向があり、あの人が外で待っているという形をつくりたかった。外の人として、今年度から、学習・キャリア支援を今4つの少年院で出院後の支援と合わせて実施しているが、彼ら彼女らは出院後も支援してくれる人が少年院と同じなので安心できる」

 

(MC)再犯防止と社会包摂にとって大切なことは

 

三宅氏「知らないから怖いので、まず自分で知ること。また、気づくこと、感謝すること。自分が今犯罪をせずに生活できているのは、自分だけの努力で成しえたことかどうかを考えること。罪を犯す人の中には生育環境が劣悪なケースがすごく多い。そういうことを想像してみることから始めるとよいのでは。」

 

工藤氏「まだ取り組みが5年なので、20年後に再犯する可能性はもちろんある。事業でも個人でも、一定程度つながっておくことが必要。また、こういうイベントに参加したことを拡散してほしい。関心、興味を開示することができるところに包摂性がある。」

 

2 サーキュラーエコノミーが刑務所のあり方を変える?

サーキュラーエコノミーの研究家 安居昭博氏

コンポストアドバイザー 鴨志田純氏

(写真中 安居氏 右 鴨志田氏)

(MC)受刑者や刑罰とヒューマンウェルビーイングの課題について

 

安居氏「刑務所や受刑者との接点がこれまで多くなかった。その分野に精通しているわけでないが、ヨーロッパだと資源が今まで廃棄処分されていたのを、設計デザインの段階から廃棄を生み出さない資源循環の仕組み作りが、サーキュラーエコノミーという形で進められている。興味深いのは、修理、リペアメンテナンスが進んでいる点。市場から生産地点等のメンテナンス拠点に戻り、そこから再出荷が行われる。リペアでの雇用創出が見込まれる。基調講演でのイギリスのジャクソンさんのテレビの修理や食材のロスの話のように、サーキュラーエコノミーでは悩みを資源に、課題を可能性に変えることができる。モノだけでなく人も同様で、受刑者がサーキュラーエコノミーの分野で担える取り組みも多様化し、社会全体の資源循環の仕組みづくりの質も高まると思う。」

 

(MC)コンポストのプロジェクトについて

 

鴨志田氏「2020年から安居と取り組んでいる黒川温泉の完全堆肥化は、30軒ある旅館のうちまず7軒から出てくる食品残渣を一か所に集約、落ち葉や牛糞、籾殻など地域の悩みの種になっているものを技術によって堆肥という価値に転換する。そういうものをペアリングし、最終的にそれを農産物に使うことによって、また黒川温泉一帯でおもてなしの食材として還元する。地産地消地潤の流れをつくり、地方創生の中で地益が出てくると思う。」

 

(MC)このプロジェクトで得た発見は

 

鴨志田氏「人間関係が広がっていくこと。堆肥作りは大量に材料を集める必要があるが、人間関係がないと集まらない。人と人がつながり寄り添うことで新たなイノベーションが生まれてくる。」

 

安居氏「サーキュラーエコノミー、資源循環の仕組みづくりは、いい意味で他の人に頼らないとできない。ありのままの現状を受け入れるところから。廃棄物などは恥の文化もありなかなか表に出てこなかった。今は世界的に、廃棄物が出ていることを他企業や他分野に共有したときに新しいビジネスモデルが生まれている。悩みの種が他分野と掛け合わされると資源になる。その時に、これまでになかったような関わり方で人手が必要になってくる。刑務所のソーシャル・イノベーションのトピックとも今後どんどん掛け合わせていける可能性がある。」

 

「従来の大量生産大量消費や買い替え需要促進モデルだと、分断を生みだす方が経済合理性が取れると言われるが、サーキュラーエコノミーが目指すのはみんなでシェア、共有すること。人とのつながりも新しく生まれていくので、受刑者と一般社会とのつながりという視点も大切になる。私たち一人一人が幸せになる、ウェルビーイングが目的になる。」

 

鴨志田氏「関係性ができることで自己肯定感が高まる。堆肥は公共インフラだと意識していっている。平常時には堆肥として、緊急時にはコンポストトイレとして活用できる。ソーシャルデザインとして、防災の観点からも受容性の高い社会になっていくのでは。」

 

安居氏「黒川温泉の完全堆肥など、地域の人が主体になってできるのが最大の特色。ネパール、京都それぞれで配合割合も異なる。堆肥技術者の育成が日本全体で生ごみを資源として使い続けるために欠かせない。刑務所と連携してコンポストプロジェクトを進めることは、堆肥技術者の育成にもつながる。」

 

3 ソーシャル・イノベーションとお金の新しい流れ

株式会社ゼブラ・アンド・カンパニー共同代表 田淵良敬氏

(MC)ユニコーンに対しソーシャルに軸足を置いたゼブラ投資とは

 

田淵氏「社会起業家と呼ばれる人たちは必ずしも数年で成功したわけではなく、色んな成長のあり方がある。そういうところの提供資金と起業家が求めている資金の性質にギャップがあり、それを埋める投資や枠組みを作りたいと思った。

投資は、経済的なリターンだけでなく社会に与えるインパクトを考慮する。環境も考慮したESG投資や私がやってきた社会にポジティブなインパクトをつくるインパクト投資などの事業、投資もある中で、私自身が問題意識を感じてやっているのがゼブラ投資。」

 

(MC)ソーシャルインパクトボンドについては、海外で再犯防止利用の事例もあるようだが

 

田淵氏「イギリス発のインパクト投資の一種であり、最初に始められたのが受刑者の再犯防止プロジェクトだった。これは、社会的インパクトをプロジェクトの成果として評価し、それが達成状況に応じお金が支払われるという成果支払い。出所者の再犯率の削減率を社会への成果として評価し、達成されたら政府から事業者にお金が支払われる。ワンサービスという事業者が出所者の心のケアや就労・教育支援のサービスを提供する。成果を上げるほど支払額が増えるので、インセンティブが付けられ、そこに投資家が入るのも特徴。成果が達成できない場合のリスクを分散する。」

 

(MC)投資企業や投資家が再犯防止にどんな貢献ができるか

 

田淵氏「もちろんまずお金の面。行政は潤沢にお金を使えないのでそこに入ってくるのは分かりやすいメリット。もうひとつは、成果報酬等仕組みの導入によって投資家、事業者、行政等関係者がみな同じ方向を向ける。最後に、成功事例を世の中に出しやすくするのも投資家の役割。海外でもゴールドマンサックスやロックフェラー財団の投資により注目が高まっている。海外投資は何かしらESG投資が前提。」

 

「過去に再犯防止プロジェクトにかかわったが、刑務所内で教育やトレーニングを受けるフェーズと、出所後に教育や雇用のサポートを受けるフェーズがある。後者では、居場所が一番のニーズ。出所時に迎えに来てくれる人が何人いるかは重要。それから就職、教育。それだけでもニーズとしてはコミュニティ、就職斡旋、教育事業などがある。また、人手不足の業界、たとえば森林事業など可能性はたくさんある。」

 

(MC)社会包摂、再犯防止にとって最も大切なことは

 

田淵氏「居場所づくりと、長期的には固定観念を変えていくこと。受刑者のイメージを変えていけると、接点やあり方が変わってくる。ジェンダーレンズ等と同様の文脈で変えていきたい。」

 

■PFI刑務所事例紹介

・小学館集英社プロダクション 塙智行氏

「官民協働刑務所での取組~地域社会と連携した矯正教育~」

初のPFI刑務所である美祢社会復帰促進センターをはじめ、全国5施設を運営。来年から喜連川社会復帰促進センターでサスティナブルプリズン構想を実現予定。

・エームサービス 小平みず穂氏

「喜連川センターにおけるパンの外部販売・プラントベースフードの取組について」

喜連川社会復帰促進センターにてSPC(特別目的会社)の中で収容関連サービス業務を担当。

給食・洗濯業務で受刑者に職業訓練を実施。施設内でパンやプラントベースフードを製造。美祢社会復帰促進センターでは一般の方が来訪できる外来食堂を運営、地域とつながり、共生を促進。

・SSJ(大林組PPP事業部) 植木努氏

「地域との連携を再犯防止につなげる取組」

島根あさひ社会復帰促進センターでの地域住民との交流として、訓練生と地域の方との文通プログラム、コミュニティサークル、交流イベント、受刑者の作ったパンの提供を実施。地域産業への貢献として、援農の取組、伝統芸能の承継。産官学との連携として、島根センター・島根県立大学および浜田市との連携など。パピー育成プログラムでは再犯防止につながる力、認識を身につける。

・昭島国際法務PFI/国際法務総合センター 増田拓哉氏

 栄久/国際法務総合センター 中村一男氏

「国際法務総合センターの取組について」

昨年2月から医療少年院の少年少女に対する院外実習としての刑務所内洗濯業務を実施。

従来から従業員の1/3が障害者で、今回少年院から話があった際もうちの工場ならできるのではと考えた。成人の対応実績はまだなく、出所後の再就職の手助けができれば幸いだ。

(写真左より 中村氏、増田氏)

■ワークショップ

「社会と地域・企業のアップサイクルにつながる<刑務所×ビジネスアイデア>を起案する」というテーマに基づくアイデアを5チームに分かれて議論。NECの名執氏、セイタロウデザインの山崎氏、法務省矯正局の小山氏より講評があった。

最後に法務省矯正局の森田裕一郎氏より閉会の挨拶があり、盛会のうちに終了した。

 

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「誰も置いていかない社会」とは?刑務所と社会・企業との垣根を取り払い、包摂を進める動きが、SDGsでも注目される持続的な循環型社会へとつながっている。受刑者支援に共存・共生の理念が深まれば、誰もが生きやすい、犯罪を減らしていける社会へ具体的な一歩となる。今後も継続した開催が期待される。

©「刑務所と協働するソーシャル・イノベーション」実行委員会

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取材・文: 増山晶
Reporting and Statement: akimasuyama

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